むかし、イナカムラにとても親孝行な子猫がいました。
一生懸命、勉強をして、国からお金も借りてトカイの大学に入りました。
トカイの大学を卒業した後は、イナカムラには仕事がないのでトカイのヤマネコ銀行に勤め始めました。
小さな銀行なので、給料はそれほど高くありませんが、朝から遅くまでせっせと働き、ためたお金を毎年イナカムラの両親に送ったり、寄付したりしていました。
お休みの日は、クタクタで、お洗濯をしたり、買い物をしたりした後はグーグー寝ています。
そんなあるとき、トカイではやり病が起きました。中には、亡くなってしまう動物も現れ、子猫はーもう大人でしたがー、ヤマネコ銀行から家で働いていいよ、と言われました。
支店長に聞くと、別にイナカムラから仕事をして、書類を送ってくれたらいいよ、と言われました。
イナカムラの両親にその話をすると、「本当は心配だから帰ってきてほしいけど、もし病気にかかっていたら困るからそれはやめておくれ。もし、お前が病気にかかっていて広めてしまうと、わしらはここに住めなくなるんじゃ。すまんのう。」と泣きながら言われました。
子猫は、年老いた両親のことも心配でしたが、そうなのかと少し寂しい気持ちになりながら、お家でせっせと働いています。
聴くところによると、イナカムラの村人は、トカイの人は高い給料をもらって、ぜいたくなものを食べ、着飾っていると思っているらしいのです。
子猫の給料はイナカムラの人よりは高いですが、物の値段も高く狭い家に高い家賃で暮らしています。大学に行った時のお金も国に返しています。そのため、結婚することすら難しい有様です。
着飾って、ぜいたくなものを食べている人は一部ですし、イナカムラのエライ人も、よく着飾って、ぜいたくなものを食べていたような気がします。
そのうち、はやり病はイナカムラやほかのムラにも広がっていきました。
イナカムラの人が、「みんな、トカイのやつらが悪いんじゃ」、「トカイ病だ」と怒っていると、ラジオで聞きました。
子猫は悲しい気持ちになりました。
また、「イナカはトカイと比べてお医者さんもベッドも少ないんじゃ」とも言っていました。
しかし本当のところは、イナカの方が村人一人当たりのベッドも、お医者さんの数も多いところがいっぱいです。
子猫は今日もせっせとお家で仕事をし、両親へはもちろん、イナカムラへも寄付をしています。
とても悲しい気持ちになりながら。