誰もいない部屋で、ウォークマンで音楽を聴くこと自体、
病んでいる。


電話もマナーモードのままだ。
そのくせ、気にしている。


さっきから、どの本を読もうか、本箱の前で、じっとしていた。

10分ぐらい。

独りで、10分も部屋も隅で、じっとしているのも、
病んでる。


結局どれも読む気になれないくて、そんな自分が病んでいると
思うことしか、できなかった。

本を読もうと思ったのも、病んでいることを、紛らわすためだったのだが。


音楽だけが、忠実に、私を包んでくれる。


これ以上私の頭の中で、ごちゃごちゃ言うのは、やめてくれ。

どこにいても、追ってくる。

「仕事どうするの?」友達の声。
「お金どうするの?」母の声。
「生活どうするの?」父の声。
「これからどうするの?」友達の声。

「今の気分は、どうですか?」誰か聞いてる。


こういう時は、無視しよう。

音楽に集中する。


そのうち、また、声が追ってくる。今度は、さっきの手紙だ。
「解雇ではなく、退職になります。」

開けっ放ししたドアから、ひやっとした空気が入ってきた。


もう10時15分だ。さっき9時になったから、テレビ消したのに。

お風呂入ろう。全部流してしまおう。