とことことことこ

カツカツカツカツ

とことことことこ

カツカツカツカツ

音が付いてきている気がして
振り向いてみた

…なんだ
誰もいないじゃん

おれはあんまり外に出ないんだけど…
たまには何か足りないなって思って、近くのコンビニに来たりもする

最近そのたまに…で、出かける時
誰かについてこられている気がするんだ

とことことことこ

とことことことこ

とことこ…

カツカツカツカツ

また振り向いて見るけど
やっぱり気のせいかなぁ

そう思って歩き出すと

カッカッカッカッ!!

走り出す音が聴こえて
振り向いた時には手を掴まれていた

「…!!!」
恐怖で声も出なくて
思い切り振り払う

離れたと思った瞬間
肩を思い切り掴まれて壁に押し付けられた

突然の衝撃で声も出ない
胸が苦しくて
「っつ!」
相手の顔を見ようと見上げたけど、
帽子を深くかぶっていて見えない
恐怖でなにをしてるかも覚えてないくらい暴れて隙を見て車道に飛び出す

間一髪車が来たから追いかけてこない

おれは思いっきり走った

はぁはぁはぁはぁっっ

恐怖で後ろを振り返るとこもできなくて

ただひたすらに走った

マンションのエントランスでロックを解除するのもうまくできなくて、

焦って焦って…

すると肩を叩かれた

「!!!

いや!!」

振り返らずにしゃがみこむ

「ニノ?」

聞き覚えのある声…

腕で顔を隠した隙間から見ると

そこには訝しげに覗き込む
相葉さんが立っていた…

「あいばさ…ん?」

「ん?そーだよ?
大丈夫?すごい慌ててたけど…」

おれはもう立ち上がることもできなくて
ふらふらと両手をついた

「ニノ!
ちょっと、大丈夫??」

ほらっと体を立たせて支えてくれる

「顔が真っ青だ。
とにかく家に入ろ。」
と、手に持っていた鍵でオートロックをくぐり抜け、家まで連れて行ってくれる




「大丈夫?」

おれの家のソファに座らせてくれて、
お水を持って来てくれた

「ん、ごめん。

…でも、相葉さんなんで…。」

今日は約束してなかったはずなのに
「実家帰ってさ、餃子とかたくさんもらってきたから、一緒に食おうかと思って…」
ごめんね、いきなりで…って笑ってる

本当ミラクル…
あのままもたもたしてたらまた捕まえられたかもしれないし

「はぁぁー。
来てくれてありがとう。」

「珍しい、ニノがそんなこと言うなんて…

で、なにがあったの??」

「何でも無いですよ…」
相葉さんを巻き込んじゃいけない…

「その割には慌ててだよね?」

「…トイレに行きたくて…」

ふーん
と言いながら
おれの顔を覗き込んでくる

「そっか、我慢してたの??
行って来ていいよー。おれ夕食準備してるから。」

「う、うん。」
と言いながら立ち上がろうとするもの
足に力が入らなくて…

「本当大丈夫??」

「ちょっとベットで休んでくる。
具合悪いかも…」

「あちゃー、風邪かなぁ。」
相葉さんの大きな手が額に伸びる

「!!!」
さっきの感覚が戻り体が竦む

「ごめん、相葉さん…」
と言いながらおれは這うようにして寝室に入った

こんなんじゃだめだ
相葉さんに気づかれちゃう…

ベッドには上がらずにベッドに体を預けていると、極度の恐怖からか眠ってしまった