さとしは、座っている間何も言わずに僕に肩を貸してくれた
温かくて、身長も変わらないから、本当に安らぐ

さとしといるために、僕は強くなりたいと思った

それからは心配するマサキさんと翔さんを説得して、お店の手伝いをしたり、買い物にも行くようにした
その間にこっそりと石を探しに行ったりするから、帰りが遅いと怒られることもあるけど、残された時間を精一杯使うために、頑張ることにした

さとしと潤くんはダンサーで同じ事務所らしい
オーディションもたくさん受けている
さとしはこの間踊っていたダンスで賞を獲ったとかで、少し有名らしい

それでも、出来上がったダンスは僕に見て欲しいって、初めに見せてくれるようになった
オーディションの前に僕の前で踊ったのが優勝に繋がったから…って
何もしてないのに、嬉しくなる
でもね、本当にそうなのかな
あれからさとしはオーディションに受かり続けていて、最近では砂浜に来ると握手を求められたりしている

そこでわかったこと

『いつも弟さんと仲良しですね』と言われる。さとしの困った顔

僕たちは男同士で。
心を通わせることは
…できないのかもしれない

あの踊りをそばで見ているだけでいいのに…
でも、さとしのそばに僕がいると、さとしが変な目で見られることも…

どうしたらいいんだろう

無意識のうちに1人で砂浜に来ていた

あの石…

突然思い出した。見つけなくちゃ

たとえ心を通わせることができなくても…さとしのそばでいられる時間は大切にしたい!

僕は時間を忘れて探し回った



気づくとあたりは暗くなり、足元もよく見えなくて
でも、僕がこの姿で居られるということは、まだ光ってるはず!

お願い、お願い!出て来て

もう、さとしと一生居たいなんて願わないから

せめて、この姿で居られる間だけで良いから



「…ず。」

「…かず!!」

「カズ!!!」

…顔を上げると、怒った顔のさとしがいた

「何やってんだよ!こんな雨の中!」

…雨?

本当だいつの間に降り出したんだろう
どうりで、視界も悪いんだね

僕は笑った

さとしと少しだけでも長く一緒に居たいだけなのに、それも叶わないのかな

「カズ、行くぞ」

僕は思いっきり首を振る
…もう、どうなってもいいんだよ

光が灯っている間に想いが通い合わないと…

僕は

海の泡となって消えるんだから

「カズ!来いって言ってんだろ。」

また首を振る。

力ずくで引っ張られるけど、
もうどうでもよかった

しばらくそうして居たが、僕が動かない事に諦めたのか、さとしはため息をついた。

やっと諦めてくれた
僕は海の方に歩き出そうどすると

スッと視界が反転した
海の中で優雅に回転するように

そんなことを思っている間に、僕はさとしに担がれていた

背中を叩く。

…下ろして!ねえ、下ろしてよ。
…僕のことを
そっとしておいて…
お願いさとし

でも、さとしは一言も発することなく知らない場所の浴室に降ろされた

さとしを見上げると…

「俺の家だから安心しろ
シャワーしてこい
店に戻るよりは近かったから
翔くんが心配してるから、連絡だけしておく」

そう言って、シャワーを出してドアを閉めた