歌麿の覚醒

 NHKの大河ドラマ「べらぼう」は面白いですね。幕府の中での権力闘争と市井の人々の生活とがうまく絡み合っていてお話に立体的な迫力を感じさせます。武士同士の闘争だけでなく吉原などの江戸時代の風俗が描かれているのが新しく、勉強になるドラマになっていますね。また私の親友の甥にあたる木村了が出ているのも少しばかり楽しみでは有ります。

 この間の回は全体としては地味な展開でしたが歌麿のお話には心を打たれました。歌麿はたまたま洗濯物を取り込んでいた娘、きよと言う名の娘を手伝うのですが、歌麿がきよと会うのはこれが2度目でした。蔦重に枕絵を描いたらどうかと言われた歌麿が枕絵を描こうとしますが若い頃のトラウマに苦しむ歌麿は枕絵を描けず、半狂乱で画を描き捨て散らかします。そこに現れたのがきよで、捨てられた画の紙を拾い集めてくれたのでした。

 きよは耳が聞こえません。なので会話が出来ません。歌麿はきよが何を考えているのか分からず、そこで観察と想像を強く働かせます。そしてこの観察力と想像力が歌麿の絵心に火を付けます。トラウマに押しつぶされていた歌麿はこの観察力と想像力(妄想力?)とでひとつ抜けました。これを解脱体験とは言えないでしょうが、この観察力と想像力はタントラ的ハタヨガに通じますね。そして抜けた歌麿は枕絵を描けるようになりまして、歌麿は「ちゃんとしてぇ」と言い、更にきよと所帯を持ちたいと蔦重に訴えます。これまで人生になんの希望も無かった歌麿が希望を持った!ここで私は涙が出そうになりました。

 トラウマになっていた抑圧的で否定的なSEX観、これがきよによって肯定的で芸術的で明るいSEX観に変わりました。これはタントラ。

 そしてこの「抜け感」、良いですねえ。