映画「永遠のヨギー」のDVD

 2016年に渋谷の映画館で観た「永遠のヨギー」のDVDが有るのを知り、アマゾンで買いました。アメリカにインドヨガを広めたパラマハンサ・ヨガナンダの生涯を描いた映画です。ヨガナンダはグル(先生)スリ・ユクテスワルジの指示でアメリカへ渡り、第2次世界大戦の終戦直後までアメリカに滞在してヨガの思想を教え広め、そしてアメリカで死去します。映画はパラマハンサ・ヨガナンダ著の「ヨガ行者の一生(あるヨギの自叙伝)」のお話をなぞるようになっていて本の方がエピソードも沢山で圧倒的に面白いのですが、映画にはヴィジュアルと言う側面が有りますのでそこはまた面白く観られます。そして今回、ヨガナンダの思想はサーンキヤ哲学では無くヴェーダーンタ思想なのだとはっきり分かりました。

 日本では江戸時代の末期から明治時代の初期の頃になりますが、ラヒリ・マハサヤはヒマラヤの山中でババジに出会い、ババジからクリヤ・ヨガの技法を伝授されます。ラヒリ・マハサヤは弟子のスリ・ユクテスワルジにこれを伝授し、ユクテスワルジはその弟子のパラマハンサ・ヨガナンダ(ムクンダ・ラル・ゴーシュ)に伝授、そしてヨガナンダにアメリカへ渡ってアメリカにヨガの技術と思想を広めるよう指示しました。ヨガナンダは苦難の末に成功し、アメリカにSRF(セルフ・リアライゼーション・フェローシップ)を設立し、現在に至っています。

 ここでクリヤ・ヨガの技法はババジ→ラヒリ・マハサヤ(シャーマ・チャラン・ラヒリ)→スリ・ユクテスワルジ→パラマハンサ・ヨガナンダ(ムクンダ・ラル・ゴーシュ)へと伝授された事を押さえておきましょう。この人達の顔はビートルズのLPレコード「サージャントペッパーズ・ロンリーハーツ・クラブバンド」のアルバムに見る事が出来ます。

 パラマハンサ・ヨガナンダと私

 パラマハンサ・ヨガナンダ(ムクンダ・ラル・ゴーシュ)には弟が有り、名前をヴィシュヌ・チャラン・ゴーシュと言い「ヨガ行者の一生(あるヨギの自叙伝)」にも登場します。カルカッタにヨガ道場を開いたヴィシュヌの娘はコルナ・ゴーシュ、私のグル(先生)ジバナンダ・ゴーシュ先生の奥様です。このような次第ですので、私はパラマハンサ・ヨガナンダには間接的ながら非常に親しみを覚えています。

 ラヒリ・マハサヤと私

 1981年、34才の時に私は初めてインドへ行きましたが、ヴァラナシ(ベナレス)で私は奇跡的な偶然でラヒリ・マハサヤのお寺を訪問し、そこでラヒリ・マハサヤの孫のサットヤ・チャラン・ラヒリさんに会いました。サットヤさんは今日はシヴァ神の祭りの日だと言ったうえで、ここに来た外国人はドイツ人、アメリカ人に続いて3人目、日本人としてはあなたが初めてだと言いました。私は日本でヨガの練習をしており、パラマハンサ・ヨガナンダの「ヨガ行者の一生(あるヨギの自叙伝)」に登場するラヒリ・マハサヤの人生に感銘を受けていますとお話ししました。サットヤさんは私にここで黙想してみなさいと言い、私はパドマ・アーサナ(結跏趺坐)でしばらく黙想しました。

 サットヤさんは私の手帳にサインをしてくれ、そこにはサットヤ・チャラン・ラヒリの父はティン・カリ・ラヒリ、祖父はシャーマ・チャラン・ラヒリと書いてありました。シャーマ・チャラン・ラヒリとはラヒリ・マハサヤの事です。

 それから6年後の1987年、40才の時に私は2度目のインド訪問をしましたが、6年前にはラヒリ・マハサヤを知らなかった現地ガイドのK・K・シンさんはこの6年の間にラヒリ・マハサヤの事を勉強していて、「ラヒリ・マハサヤのお寺も大事ですがお家も大事です」と言って私をラヒリ・マハサヤのお家へ連れて行ってくれ、そこにはB・ラヒリと言う人が住んでいました。お家にはダチョウの卵のような形をしたラヒリ・マハサヤの奥様の遺灰とティン・カリ・ラヒリの遺灰が安置してありました。ティン・カリ・ラヒリはこの年の1月に亡くなっていたサットヤ・チャラン・ラヒリさんの父上ですからB・ラヒリさんはサットヤさんの甥ということになります。B・ラヒリさんは日本人としては初めて貴方はここへ来たのだと言い、本を書くのかと聞きますので私はいいえとお返事しました。

 ラヒリ・マハサヤと姿が良く似たB・ラヒリさんと私は現地ガイドのK・K・シンさんの通訳でインドの宗教哲学について話し合いましたが、話の途中でシンさんは「もう通訳が出来ません」と言ってギブアップしてしまいました。しばらくの黙想のあとに私と当時小学6年生だった息子がB・ラヒリさんのお家を去る時にB・ラヒリさんは嬉しそうに私の息子の頭を撫でてくれました。

 映画「永遠のヨギー」の始めの方に1カットだけB・ラヒリさんのお家の表札が映ります。ああ、懐かしいなあ。

 ところでこの映画では南インドの聖者ラマナ・マハリシの姿も1カットだけ出て来ますよ。