マイ・スイート・ロード

 ビートルズのジョージ・ハリスンが「マイ・スイート・ロード」のEPレコードを出した時に私はヨガについて知識も関心も有りませんで、この旋律(メロディー)は盗作だと訴えられたジョージ・ハリスンがその権利をお金で買った、つまりお金で解決したと言うニュースを読んだくらいの僅かな記憶しか有りません。が、

 最近私はYouTubeでビリー・プレストンの「マイ・スイート・ロード」がお気に入りです。エリック・クラプトンによるジョージ・ハリスンの追悼コンサートのようで画面にはポール・マッカートニーやリンゴ・スターの姿も見えますが、ここでの圧巻はゴスペル風の女性コーラスです。

 ところでカントリー&ウエスタンやリズム&ブルース、そしてロックンロールの曲の展開はA(主旋律)→A(主旋律)→B(サビ)→A(主旋律)となっていて、ビートルズの曲も大体はこの展開ですね。ところが「マイ・スイート・ロード」はこのAABAの展開では無く、ABABが延々と続きます。歌詞で言いますと「マイ スイート ロード」がA、そして「アイ リリウォナ スィーユウ」がBで、少しずつ歌詞も変わって行きます。そしてこのAとBに対応するのが女性コーラスのC、ゴスペルではAまたはBの(呼びかけ)とC(応答)の対応が有りますから「マイ・スイート・ロード」もゴスペルの様式を取っていて、この女性コーラスの応答が大変な魅力になっています。

 ビリー・プレストンのボーカルに女性コーラスが対応するのですが曲の終盤には全体にドライブが掛かり、女性コーラスのハレラーマ、ハレクリシュナ、マヘイシュワーラ、パラブラフマで最高潮に盛り上がります。そしてこれ等の言葉の意味を歌っている人達が分かっているのかどうか分かりませんが、間にはハレルヤと言う言葉が沢山入りますから、ジョージ・ハリスンはこの曲を欧米人にも親しみやすく作りましたね。

 ところで何故「マイ・スイート・ロード」はABABの展開なのか。

 インドのマントラにはチャンティングと言ってマントラに旋律(メロディー)を付けて歌う様式が有ります。例えば「オーム ナマ シヴァーヤ」の主旋律Aに対してBの対応旋律が応答し、このABABが永遠に続くのです。「マイ・スイート・ロード」は3分程の曲ですがインドのチャンティングは軽く1時間は続きます。

 ジョージ・ハリスンの「マイ・スイート・ロード」はゴスペルの形を借りた、マントラなんですね。

 文章ではなかなか伝わりませんので、良ろしかったらYouTubeでBilly Preston My sweet Lord を聞いて見て下さい。面白いですよ。