命の火
4月末で母は97才になりましたので、先月末に夫婦で熊本の高齢者施設に居る母を見舞いに行って来ました。
実家は一昨年に売却しましたのでビジネスホテルを予約、チェックインしてすぐに施設に向かいますと既に午後4時、母は個室のベッドで眠っています。起こすべきかどうか2人でしばらく迷っていますと母は目覚め、微笑みながら少し手をこちらに差し伸べます。私は両手で母の手を握りましたが、母は私の事も妻の事も分かるようです。そして話し掛けて見ますと殆ど私の声が聞こえない様子、そして妻の声は少しでは有りますが聞こえるようです。部屋のテーブルにはプラスティック製の30cm程の赤い筒が置いて有り、どうやらこれを使って介護の人は母に話し掛けているようです。私より順番を先に帰省していた姉と弟の話では集音器と言う物や筆談で母とは会話をしたそうなので探して見ますと集音器は引き出しの中に有りました。集音器を充電して使いますと母は聞こえるような聞こえないような、そして筆談にも思うように返事をしてくれません。昨年の9月に帰省しました時に母の聴力はかなり落ちていましたが、今では殆ど聞こえないようです。そして集中力が続かない。3分もしますと母は会話を諦めて目を閉じてしまいます。本能的にとでも言いましょうか、私は母の命の火が弱くなっていると直感しました。
翌日は朝の10時に補聴器屋さんが補聴器を届けに来る約束なので施設で待ちました。私より10日程早く帰省した姉が補聴器を注文していて、私が来ているこの日に届けて欲しいと頼んで有りました。
子供達(と言っても既に爺さん婆さん)の帰省時に夫々が使って母と会話をすれば良いと思って補聴器を注文したようでしたが、補聴器は小さいので母はすぐに失くしてしまいそうですし、また電池も1週間か10日毎に交換する必要が有ります。やはり施設のスタッフにも補聴器を使って貰わないと意味が無いと考え、事前に施設長さんに電話をして補聴器のお世話をお願いし、更に補聴器が届く時には一緒に補聴器屋さんの説明を聞いていただくようにお願いをしておきました。そして施設長さんはそれは丁寧に説明を聞いてくれましたし、翌日の朝にはスタッフの人達に補聴器の説明をしてくれていました。そして介護の人は補聴器を付けた母に話し掛け、「あら、聞こえるの?」と喜んでくれました。しかし補聴器はすぐに外れますので補聴器のお世話は大変なようです。
補聴器は湿気を嫌いますので小さな円形の乾燥器に保管しますがその際には電池蓋(ぶた)は開いた状態で保管し、電池は円形の乾燥器の蓋(ふた)に付いている磁石にひっつけておきます。そして補聴器屋さんはサービスとして2ヶ月分の電池を付けてくれました。
施設には内科医院が併設されています。今回も私は医院の先生にお話を聞くつもりでしたが、補聴器の件が終わりますと施設長さんは私達に先生のお話を聞いて下さいと促し、私達は施設長さんについてエレベーターで医院の待合室へ行きました。
母には数年前から胸に異常が有りましたが高齢の為に進行は遅いようです。しかし先生は血液検査の結果やレントゲン写真を見せて3点程の問題を指摘したうえで、あと半年か1年か何とも言えませんが年を越すのは難しいと思います、お子様方には頻繁に帰ってあげて下さいと言われました。先生は何人も老人を看取っておられるので、そう言う事かと受け止めました。
翌朝は飛行機の時間まで個室で過ごし、私達は補聴器を使って母と会話をしました。しかし、集中が続かない。曾孫の写真を見せますと嬉しそうに見ていますが3分もしますと目を閉じてしまいます。またしばらくして母は目覚め、妻とも会話をしましたがやはり集中は3分程しか続かずに目を閉じてしまいます。母の命の火が弱くなっている。
帰りの飛行機やリムジンバスで私はすっかり眠りこけてしまいました。
4月末で母は97才になりましたので、先月末に夫婦で熊本の高齢者施設に居る母を見舞いに行って来ました。
実家は一昨年に売却しましたのでビジネスホテルを予約、チェックインしてすぐに施設に向かいますと既に午後4時、母は個室のベッドで眠っています。起こすべきかどうか2人でしばらく迷っていますと母は目覚め、微笑みながら少し手をこちらに差し伸べます。私は両手で母の手を握りましたが、母は私の事も妻の事も分かるようです。そして話し掛けて見ますと殆ど私の声が聞こえない様子、そして妻の声は少しでは有りますが聞こえるようです。部屋のテーブルにはプラスティック製の30cm程の赤い筒が置いて有り、どうやらこれを使って介護の人は母に話し掛けているようです。私より順番を先に帰省していた姉と弟の話では集音器と言う物や筆談で母とは会話をしたそうなので探して見ますと集音器は引き出しの中に有りました。集音器を充電して使いますと母は聞こえるような聞こえないような、そして筆談にも思うように返事をしてくれません。昨年の9月に帰省しました時に母の聴力はかなり落ちていましたが、今では殆ど聞こえないようです。そして集中力が続かない。3分もしますと母は会話を諦めて目を閉じてしまいます。本能的にとでも言いましょうか、私は母の命の火が弱くなっていると直感しました。
翌日は朝の10時に補聴器屋さんが補聴器を届けに来る約束なので施設で待ちました。私より10日程早く帰省した姉が補聴器を注文していて、私が来ているこの日に届けて欲しいと頼んで有りました。
子供達(と言っても既に爺さん婆さん)の帰省時に夫々が使って母と会話をすれば良いと思って補聴器を注文したようでしたが、補聴器は小さいので母はすぐに失くしてしまいそうですし、また電池も1週間か10日毎に交換する必要が有ります。やはり施設のスタッフにも補聴器を使って貰わないと意味が無いと考え、事前に施設長さんに電話をして補聴器のお世話をお願いし、更に補聴器が届く時には一緒に補聴器屋さんの説明を聞いていただくようにお願いをしておきました。そして施設長さんはそれは丁寧に説明を聞いてくれましたし、翌日の朝にはスタッフの人達に補聴器の説明をしてくれていました。そして介護の人は補聴器を付けた母に話し掛け、「あら、聞こえるの?」と喜んでくれました。しかし補聴器はすぐに外れますので補聴器のお世話は大変なようです。
補聴器は湿気を嫌いますので小さな円形の乾燥器に保管しますがその際には電池蓋(ぶた)は開いた状態で保管し、電池は円形の乾燥器の蓋(ふた)に付いている磁石にひっつけておきます。そして補聴器屋さんはサービスとして2ヶ月分の電池を付けてくれました。
施設には内科医院が併設されています。今回も私は医院の先生にお話を聞くつもりでしたが、補聴器の件が終わりますと施設長さんは私達に先生のお話を聞いて下さいと促し、私達は施設長さんについてエレベーターで医院の待合室へ行きました。
母には数年前から胸に異常が有りましたが高齢の為に進行は遅いようです。しかし先生は血液検査の結果やレントゲン写真を見せて3点程の問題を指摘したうえで、あと半年か1年か何とも言えませんが年を越すのは難しいと思います、お子様方には頻繁に帰ってあげて下さいと言われました。先生は何人も老人を看取っておられるので、そう言う事かと受け止めました。
翌朝は飛行機の時間まで個室で過ごし、私達は補聴器を使って母と会話をしました。しかし、集中が続かない。曾孫の写真を見せますと嬉しそうに見ていますが3分もしますと目を閉じてしまいます。またしばらくして母は目覚め、妻とも会話をしましたがやはり集中は3分程しか続かずに目を閉じてしまいます。母の命の火が弱くなっている。
帰りの飛行機やリムジンバスで私はすっかり眠りこけてしまいました。