鈴木大拙2話 補足

 ブッダがこの世に誕生したその瞬間に「天上天下唯我独尊」と言ったというお話があります。「唯我独尊」といえば一般的に、我が道を行く、自分は偉くてあとはバカ、といった鼻持ちならない人のことを指して言うようですが、もちろんそんな小さなことではありません。「唯我独尊」とは「絶対主観」のことです。「絶対主観」とはアートマン(真我)のことです。

 おもしろいのはこのお話が「つくり話」だということです。後世の誰かが、ブッダは偉い人だからこういう事も言っただろうと、お話を作ったのです。でも、つくり話にしては見事に真実を突いています。普通の人なら「絶対主観」など思いうかべる訳もありません。後世の名もない誰かがブッダの真実を語っているのです。ブッダの真実を語っているのですからその人はブッダのレベルに達しているのです。あるいはブッダ(悟りを得た者)になっていたのかもしれません。

 インドでは名もない多くの人達がブッダの位に達しています。「般若心経」を書いた人もたいしたものです。またカルカッタにはラーマクリシュナという人も現れています。ですから、修行をすれば誰にでもブッダになれる可能性があるのです。

 お話がつくり話であるがゆえに、そのお話を作った人もたいしたもので、ブッダになっていたのかもしれないという可能性が見えてきて、そうすると、誰もがブッダになれる可能性があるということが見えてくるのです。どうです、おもしろいでしょう。