● 無意識と身体の使い方
今回の記事は空手や武術に役立つ「無意識の身体の制御」についてのお話です。
「思ったよりも身体は無意識に動いている」これを理解する事で身体使いや、感覚を鋭くすることに役立ちます。
まず初めの前提知識として、人間は日頃自分自身のバランスを感じ取る、細かく身体を動かして重心をコントロールする、全体のバランスを崩さないように動くというような事を無意識で行なっています。
こういった体性感覚の探知と姿勢制御は基本的に意識を失わない限りは眠っているときでも働くものです。
睡眠中も寝返りをうつというような事ですね。
眠りにも浅い深い等色々あるので一概には言えませんが、脳のバランスや体勢を維持する部分が起きているくらいの状態なら、そこから抱き上げようとすると、身体が自発的に体勢を維持しようとするので意外と持ち上げられたりします。
これが失神や気絶という体勢維持の部分までOFFになっている状態だと本当に身体の力が全部抜けてしまうので体重が同じ人でも、気絶した状態の方がはるかに重く感じます。
私は大学時代に酔いつぶれた後輩を家に送り届けた事が何度かありましたが、酔いが浅い人は何とか肩を貸すなりおんぶするなり運びやすいのですが、ある時一人完全に脱力してしまって送るのにとても苦労した経験があります。
その後輩はまた変わった酔い方をしていて、物凄い笑い上戸になっていて呼吸などには問題なく笑っているんですが、ただただ身体に力が入らないようで 運ぶのが凄く大変だったんですよね。
「本当に脱力した人間は重い」という事をまざまざと思い知らされました。
このように、人は無意識にうちに微妙な傾きやバランスの崩れを感知し、無意識に全身の筋肉の出力を調整しています。
実はこれが空手含め、武術における身体操作の難しいポイントなのです。
例えば私が所属する空手においては「重心の移動」は非常に大事な意味を持ちます。
しかし、重心の移動は普通は無意識下に行われるものなのでコントロールが非常に難しいです。
その無意識下でのコントロールを実感できる話をしましょう。
まず初めに普通に気を付けの姿勢で立ってみてください。
その後両手を伸ばして前に出してみてください。
普通の人はその状態で問題なく真っ直ぐ立っていられるはずです。
しかし、物理的に考えたときには腕の重心が前に出る分前に倒れ込むか、歩き始めても良いのです。
そういった事が起こらないという時点で、無意識に重心が変わった事を脳が察知して身体の力の入れ具合を変えてバランスを保ったことが分かります。
この時に自分の意思で「重心がズレたな、身体をコントロールしよう」とバランスを取る人は普通は居ないはずです。
そもそも重心を感覚として捉えることが出来るかすら怪しいものがあります。
まず体性感覚を鋭敏にして重心の位置を感じ取れるようになるまでがなかなか大変です。
そのためには日頃全身の感覚を感じるように意識を向けることが大事です。
今自分は真っ直ぐ立てているか、どこかに力が入っていないか、足の裏のどこに重心が乗っているか。
こういった事を出来る限り意識するような癖が付けば、身体操作の探求の第一歩が歩み出せます。
まずは気付いた時に体性感覚を研ぎ澄ますようにして、無意識の身体操作を意識できるようにしましょう。