今回の記事は前回の記事の補足事項と言いますか、ちょっとマニアックトークになるかもしれません。
テーマは空手の武器事情です。
前回の記事で、打ち合う稽古に適した釵は流通していないという風に書きました。
まあそれも当たり前の事で普通の方なら「誰が買うんだ?」という方が疑問に上がると思います。
中国武術に筆架叉という物があったり、その他別の国や地域の武術にも似たような形状の武器はあるようですが、「釵」というと基本は空手の武器です。
しかし、この空手の武器というのも中々にややこしい位置づけで、空手の歴史で考えると、「空手」という名称自体が沖縄から本州に入った後に着けられたという事、そしてその由来の中には徒手空拳という意味も入っているというやや込み入った事情があります。
今や日本だけでなく世界にも広がるカラテで考えるとその中のごく一部でしか使われないのが「釵」という武器なのです。
そう考えると演武用の釵がネットショップで買えるだけでも相当恵まれていると考えた方が良いのは確かですね。
この演武用と打ち込みにも耐えられる稽古用の差がどこで出てくるかと言うと、製法によって丈夫さが違ってくるのです。
演武用で使われるものは鋳造という製法で作られます。
ざっくり言うと鉄を溶かして型に流し込んで固める製法ですね。
成形が容易である為低コストで大量生産にも向きますし、液体の状態で型に流す為複雑な形にも対応できるというような点がメリットとして挙げられます。
デメリットとしては強度に問題があるという事です。
熔けた鉄を型に流し込んで冷ます際に中に気泡が生じてしまう事があるのですが、その気泡が残ってしまう部分が原因で強度が落ちてしまうのです。
強度が低いと言っても、車の部品などで使われる鋳造品等はそこも計算して肉厚な作りにしたり、工業レベルでは鋳鉄でもある程度は強度が向上する製法があるらしいので全く問題ないのですが、釵の様な細めの物だとその製法による強度は結構問題になってくるみたいなんですよね。
工業レベルになってくるとコストは鋳造よりも上がり、細かい加工には向かないという条件は付きますが鍛造と呼ばれる製法があります。
熱して柔らかくなった鉄を叩くまたはプレス機で圧力をかけて成型する方法です。
まだプレス式ならば型に押し込む方法になるので大量生産も可能ですが、それでも鋳造よりはコストがかなり上がるようです。
そして、一般的に刀の製法で知られる鍛冶は鍛造の一種と言えます。
刀剣類で言えば、工業用に型を使うのではなく手作業で鉄を叩いて行うわけで、当然めちゃめちゃ大変なんですよね。
しかし、その分強度などに関しては最も手を加えられるとも言えるのです。
で、前回の記事、師範が京都の刀鍛冶の元で指南を受けながら制作する釵
高そうだなあと思いますよね。
私の所属する空手の弟子が百余名、全員に行きわたらせるなら2本で1セットなので200本以上…作るにしても大変な労力になりそうです。
前回の記事では私は20万くらいはするんじゃないかと書きましたがその理由も分かったのではないのでしょうか。
もっと高くても驚きませんし、それでも欲しい。
この記事を書いてなんだかんだ私もかなり空手マニアだなと再認識しましたね。
まあ今は世に出ていないので好き勝手言えるので、実際に値段がついてもここで公表はしないし出来ないでしょうが、手に入ったらレビューしてみたいと思います(笑)