今回は何かを学ぶ上で陥りがちな落とし穴と、その対策についてのお話です。 

 

 学ぶ上での落とし穴、それは「人は既知の知識と思った物を認識しようとしない」という性質です。 

 

 題材は何でも良いですが、例えば定説が覆りやすい恐竜等の話で考えてみましょうか。 

 

 興味が無い人でも誰でも知っている恐竜と言えばティラノサウルスですが、化石からの復元図や、推測される生態はかなり頻繁にアップデートされています。 

 

 私が子供の頃は恐竜図鑑にはゴジラの様な上に真っ直ぐ立つ姿勢から、前傾姿勢に変わった事が「新説」とされていました。 

 

 この定説の変化もかなりセンセーショナルな印象で頭に残っていますが、その後も「模様がカラフルだったかもしれない」とか「腐肉を食べる食性だったかもしれない」とか、「羽毛が生えていたらし」という様に「ティラノサウルスの新説」はたくさんあるのです。 

 

 この前提条件を基に前述の「人は既知の知識と思った物を認識しようとしない」を説明してみましょう。 

 

 例えば手元に二冊の本があって、どちらも恐竜の事について書いてある物だとしましょう。 

 

 片方を読んだ段階で「ティラノサウルスは前傾姿勢だという新説が発表された」という事を学んだ後に、もう一冊を読んだ時「ティラノサウルスに定説を覆す発見が」等と書いてあると、「ああ、前傾姿勢の話でしょ」と思い込んでしまい、その先を読み飛ばすか、読んでも流し読みになってしまいやすいという事です。 

 

 ところがもう一方の本の読み飛ばした部分が、実は先に読んだ方とは違う発見を指していたとすれば、大事な情報を読み飛ばしてしまっている訳で、後に読んだ本の理解度は下がっているという事態になるのです。 

 

 これが、前傾姿勢の方の新説か、羽毛が生えている方の新説かくらい違いが大きければまだ気づきやすいかもしれませんが、片方が前傾姿勢という体勢から導き出される当時の生態、もう片方が前傾姿勢だと結論付けるに至った最新の分析方法というような、入りが同じだけで全く違う話などだと、かなり注意していないとスルッと情報が抜け落ちてしまいます。 

 

 こういった事が何故起こるか、というと脳が楽をするためなんですよね。 

 

 普段、人の行動は殆どが無意識によって処理されているため意識する事はほぼ不可能ですが、脳が処理する情報量は莫大です。 

 

 目に映ったもの全てを事細かに把握していたらあまりにも負荷がかかるため、余分な物は省いてオーバーヒートしない様にしているんです。 

 

 今回のテーマである「人は既知の知識と思った物を認識しようとしない」という性質も、余計なメモリーを喰わない為の安全策だと思えば納得できるのではないでしょうか。 

 

 しかし、こういった性質が学習の妨げに働く可能性があるのは事実です。 

 

 しかも、前述に挙げた分かりやすい例だけでなく、同じ本を読む中でもこの読み落としは起きやすい事を理解しなくてはいけません。 

 

 好きで何度も読んでいる筈の小説に、見落としていた描写を見つけた事があったりする経験はありませんか? 

 

 小説に限らず、学術書、漫画、なんならゲームでも、それなりにじっくり向き合ったはずの物から、完全に見落としていた一節をふとした拍子に見つける事はよくあると思います。 

 

 そもそもどういった媒体であっても一回で全ての情報を網羅しきる事は不可能なのです。 

 

 よくテレビで見かける、写真や絵を見て覚えて何が映っていたかを当てるというクイズが難しいのと一緒です。 

 

 あれも何を思い出せば良いか指定するから何とか答える余地が生まれるわけで、右上から左下まで映っていたもの全てを答えろと言われたらまず不可能ですよね。 

 

 情報は一度に全て受け止めきる事は出来ない、しかし脳は既知の知識と思った物を認識しようとしない 

 

 

 

 この認識を持つ事が、楽をしたがる脳との上手い付き合い方の第一歩です。 

 

 発想自体は簡単なんです。 

 

 本でもなんでも、一度で理解したと思わず何度も読み込むこと 

 

 これに尽きます。 

 

 ただ、同じ本を何度も読み込むのって疲れますよね。 

 

 モチベーションを保つのも大変でしょう。 

 

 そんな時の対策がいくつかあります。 

 

  例えば注目するポイントを変える。 

 

  小説なら主人公視点で読み終わった後は他の登場人物に感情移入しながら読んでみたり、主人公目線でも事件にフォーカスしたり情景にフォーカスしてみるのです。 

 

 意図的に視点を変える事でフレームが切り替わり、見落としを見つけやすくもなります。 

 

 また、時間をおいてから読み直すだけでも効果はあります。 

 

 最初読んだ時ほどの新しい情報の流入も無いかもしれませんが、適度に忘れてたりもして、自然とフレームがずれて違う取っ掛かりから情報を読み取るようになりやすいのです。 

 

 後は、二回目以降はじっくり読まずに流し読みでも良いので回数を重ねるというのもありです。 

 

 発想は先程の例と近いですが、とりあえず試行回数を増やすことで新しい取っ掛かりを見つけるという考え方ですね。 

 

 これはじっくり読まなくても良いというのがミソです。 

 

 頭が疲れないレベルで無理なく行なうのが大切です。 

 

 最初に述べた対策が比較的興味が向いてる時におススメで、後の二つは、すぐにモチベーションが上がらない時に使うのがおススメです。 

 

 いずれにせよすぐに大きな効果を狙わずに、道中楽しむ感覚で積み重ねて行きましょう。