今回はアマチュアオーケストラをテーマにした主観と客観の認識の難しさのお話です。 

 

 まず最初の基礎知識として首都圏のオーケストラ事情を説明しておきましょう。コロナ以前の話にはなりますが首都圏のオーケストラは約600団体に及ぶそうです。 

 

 常設ではなく一発で終わっている団体も確かにありますが、常設に絞っても数百居るのは間違いないかと思います。 

 

 なぜそんなにも数が多いのかには諸説あります。吹奏楽人口が多いためであるとか、練習会場や楽器店の多さ等の環境が整っている等様々ですが。いずれにせよ数が多いのは事実です。 

 

 勿論中には「とりあえず好きな曲が弾ければ良い」という団体もありますが、基本的にはその団ごとのコンセプトがあるものです。 

 

 群雄割拠の首都圏アマオケ界隈では、このコンセプトは他の団体と差別化を図る、集客面においても奏者の確保においても重要な要素となるものなのです。 

 

とはいえオーケストラも数十人から百数十人の集団になるわけですし、立ち上げ当初のコンセプトを維持し続けるのはかなり難しいと言えます。 

 

ここまでが前置きです。 

 

 私は大学の卒業の年から立ち上げと共に所属しているオーケストラがあります。運営に深く関わっているわけでは無いのですが、中心メンバーとはそのオーケストラが立ち上がる前からの仲間ですし、色々とメンバーが入れ替わった現在私は、立ち上げ時のコンセプトを理解する数少ない一人となっています。 

 

 先日そのオーケストラの練習の後に少人数で呑み会がありました。私含め古参の面子と昨年から参加の人、今年初参加の人という顔ぶれでした。 

 

 酒が進んでくると過去の振り返りから今後どうしていくかの話になりました。その時にコンサートマスターを務める立ち上げメンバーの友人がポツリとつぶやいたんです。 

 

最近入ってきてくれる人たちがどうして乗ってくれているかが分からない 

 

と。 

 

 酒が回っている事もあってちょっと弱気な部分が出てきたのだと思います。 

 

 そもそもそのオケのコンセプトは他にホームの団体に所属している奏者が、それぞれの団体で得たノウハウを出し合って実験するオーケストラを作るです。 

 

 パッと理解し辛いかもしれないので簡単に言うと色々な団体のスタープレイヤーを集めてやりたいようにやるという事です。有体に言うとトガっている。 

 

 最初の方はコンマスや団長自ら色々なアマオケを回り光っている人をスカウトしていました。 

 

 スカウトは今でも勿論続いているのですが、最近は一般団員からの紹介もだいぶ増えました。それ自体は良い事だと思います。横の繋がりというか仲間としての意識が強くなったと思います。 

 

 ただ、元々のコンセプトからすると本来はまず実力と主張の強さありきのはずが、そこの優先順位が下がってきているような感は正直あるというのがコンマスの認識であり、私もそこには同意する所でした。 

 

 本来なら団の音楽性に共感してから参加してもらいたいのです。しかし、最近はそうではなく「友達が乗っているから乗るというモチベーションの人が増えているのではないか?」という疑念が生まれてしまっていたわけです。 

 

 立ち上げ当初は20代前半だった我々ももう30代に差し掛かるという中で、初期の熱量を維持してコンセプトを感じられる環境を作れていたかという事に自信が無くなりつつあったんですね。これが古参側の主観です。 

 

 そんな感じで弱音を吐いたコンマスに昨年から参加の仲間からはこんな返しがありました。 

 

 確かに知り合いは読んだが自分に集まってくるような人には声をかけていない。元々この団を知って乗りたいと思って乗っている。真意を聞かずに分からないというのは勝手に距離を置いているだけではないか。 

 

 との事でした。呑みの席なのもありますし、発破をかける意図もある様なので中々きつめな返しでしたがハッとさせられました。 

 

 自分たちで作り上げた団体が変化していくことは感じられても、それがどう見えているか客観的に見えてはいなかったという事です。 

 

 自分たちを客観的に省みようとしても他者からのフィードバックを取らなければそれはどう評価しても主観から抜け出せていません。 

 

 強気なら強気、弱気なら弱気のフィルターがかかっているだけなのです。今回出てきた弱音は正しくそれでした。 

 

これが難しい所で、きちんと客観性を維持しようと意識しなければなりません。弱気なときはどんどん悪い事ばかり偏って見えますし、強気すぎるとそもそも客観視して反省しようという発想が無くなります。 

 

 今回の例は弱気パターンですね。少なからず、自分たちの演奏やあり方に賛同してくれている人はいるという事は素直に受け止めなくてはいけません。狙ってもあるのでしょうが、強めに返してくれたのはかえって良かったと思います。 

 

 オーケストラは特に人の集まりですし、自分、団員、観客というように主観と客観の線引きが難しい所はありますが、客観性を維持するという意識はどういった場面でも役立つはずです。

 

 日頃からフラットに自分や周りを観るように心がけましょう。そうすることで良い時はより良く、悪い時は深く囚われずに切り替えができるようになるはずです。