今回もエンタメ回です。前回の記事で紹介したGhost of Tsushimaはアメリカの企業が制作を手掛けながらも、素晴らしいクオリティで日本を表現している作品でした。 

 

 この作品は日本の歴史と文化へのリスペクトと研究をストレートに出していると言って良いと思います。現実路線においてもファンタジー要素についても日本人に刺さる仕上がりを見せる、速球とキレのいい変化球を両方使いこなす王道のピッチャーの様な存在です。 

 

 今回紹介する作品はそんなGHOSTOFTHUSHIMAとは一見すると真逆、ピッチャーに例えるなら信じられないような魔球を投げる存在です。その名も 

 

ニンジャスレイヤー 

 

 皆さんは海外映画に出てくる日本の描写ってどう思いますか?正直な所、私はあまり好きな方ではありませんでした。 

 

 普通の住宅なのになんの脈絡もなく障子に囲まれた畳の部屋が有ったり、やたらとサムライ押しだったり、何か中国と混ざっていたりetc. 

 

 外国の人は感じないのかもしれない違和感なのかもしれませんが、シリアスなシーンでそういう描写があるとそちらが気になってしまって内容が入ってこなくなってしまうからです。 

 

 正直な話、今回紹介するニンジャスレイヤーも作品を実際に目にする前にCM等で見た時は「なんかエセ和風なんだろうな」という悪めの印象を持っていました。 

 

 作品の紹介に戻りましょう。この作品は元々アメリカのブラッドレー・ボンドと、フィリップ・N・モーゼズが共同で執筆した小説で、日本の翻訳チームが日本語訳をTwitterで配信するという一風変わった形式をとっています。 

 

 勿論書籍の刊行もされていますし、ラジオドラマ化・漫画化・アニメ化となかなか手広く展開しているコンテンツです。 

 

 私のファーストインプレッションはアニメでした。アニメは2015年にニコニコ動画等の動画配信サービスでの配信の後、2016年にテレビ版としての放映がされました。私が目にしたのはテレビ放映版でした。 

 

 初めて見た感想は「ぶっ飛んでるな」でしたね。少し粗目の画質に4:3の画角、その世界観におけるニンジャの簡単な解説の後に始まるのはフラッシュアニメ。 

 

 10年位前のアニメの再放送でもしてるのか?と思いました。その時はCM等で見て忌避間を覚えていた作品と紐づいておらず、その謎の世界観に引き込まれていったのでした。 

 

 この作品のジャンルはWikipediaによるとサイバーパンク・ニンジャ活劇小説という他に類を見ないものとなっています。 

 

 舞台は一応近未来の日本となっています。一応というのは実在の都市と架空の都市が混在していたり、所在地が現実と一致していなかったりするためです。日本は日本でも歴史のかなり古い部分で枝分かれしたパラレルワールドと見た方が良いかもしれません。 

 

 科学技術の高度な発展と共に環境汚染に見舞われている鎖国国家日本。その首都であるネオサイタマは日本を影から牛耳る暗黒メガコーポのお膝元にありながら治安は最悪です。

 

 主人公フジキド・ケンジは平凡で多忙なサラリマン(※誤植ではありません)ながらもようやくとれた休みを家族と外食をして過ごそうとします。

 

 しかし、そのささやかな幸せはニンジャ組織の抗争によって打ち壊されます。愛する妻と息子は抗争に巻き込まれ死亡し、フジキドも死の淵に立たされるなかニンジャへの憎しみがナラクと呼ばれる恐ろしいニンジャ殺しの魂を呼び寄せたのです。

 

 家族の仇を討ちたいフジキドとニンジャを殺したいナラクの利害は一致し、フジキドはニンジャを殺すニンジャ=ニンジャスレイヤーとなって再び立ち上がるのでした。

 

 なかなかぶっ飛んでいると思いませんか?正直現時点でもニンスレ節というかそれらしい表現はかなり抑えています。

 

 重金属酸性雨の降りしきるネオン街、空にはマグロ・ツェッペリンと呼ばれる広告飛行船が飛び交い、裏街ではクローンヤクザが幅をきかせる。そしてその世界を人知れず支配しているのがニンジャなのです。

 

 一見するとぶっ飛んでるを通り越してトンチキな世界観でどこに正しい要素があるのかという所でもあるのですが、きちんと読むと一周回って日本のことをよくわかっているのではないかと言う描写がそこかしこに出てきます。

 

 センタ試験でカチグミとマケグミが決まり、サラリマンは残業を強いていること露見させないために会社近くのマンホールから退勤し、凶悪な事件よりも街に現れたラッコのを重視するメディアの姿勢等々、妙に日本の内情に詳しくないと出てこないのではないかというような描写が大量にあるのです。

 

 その絶妙な日本の描写に、アメリカにいるという原作者はフェイクで実は日本人が作っているのではないかという噂すら流れているほどです(笑)

 

 冒頭の方でも述べましたが、私は研究不足の和風描写はあまり好きではありません。しかし、ここまで突き抜けるともはや清々しい気持ちで楽しめます。

 

 余りに長くなりすぎたので概要はこれくらいにして魅力は別記事にしてみようかと思います。

 

 とりあえずアニメの動画を載せておくので試しに鑑賞してみてください。度肝を抜かれますよ。