久方ぶりに抽象化に関するお話です。今回はふと気付いた抽象化が生かされている場面についてです。
皆さんは学ぶの語源が真似ると同じだという話を聞いたことがありますか?大辞林によると「まねぶ」という最近では殆ど使われない表現があって、そちらは語感の通り真似をするという意味だそうです。
真似と言われるとTV等でよく見るモノマネが連想されますし、学習と言われると机に向かって考えるという様なイメージになりがちで一見遠い話に感じますが、最近空手を再開したこともあって両者の関係に気付きました。
空手に限った話では無いですが、特に身体を動かすスポーツや武道といったものは最初は指導者の動きを見て真似る所から始まります。
初期段階では目立った動きから始め、段々と洗練されてくると細かい所に目が行ってより高度な習得に進みます。この流れが真似=学ぶと繋がるわけです。
さて真似=学ぶのイメージが掴めた所で、その真似に生かされる抽象化とは何かを説明していきます。
よくテレビ番組等で目にするモノマネ芸人さんのネタに注目してみましょう。歌唱のソックリ度を魅せる場合も同様では有るのですが分かりやすくお笑いのネタを例に考えてみます。
想像しやすい方で言えばコロッケさんのネタが一番わかり易いと思います。もしピンとこなければYou Tubeで調べてみればすぐ出てくるので見てみて下さい。
モノマネで笑いを取るために必要な技法が抽象化なのです。真似をしたい対象をよく観察し、特徴的な仕草や癖を取り出せるかが鍵になります。
特徴的な癖を見つけ出すことが出来れば、その要素を取り出して過剰に演出することでそれは既に1つのネタになり得ます。
そこからさらに視点を変える事によってもしもシリーズの様に普通はその対象と繋がらない物を、取り出した癖を強調したことで出てくる新たな共通点によって繋げてしまうというネタにもする事が出来るのです。
基本的にモノマネのネタは特徴的な癖が出やすい場面を切り出す、またはもしも〇〇だったらといった様に一種の具体的な状況を限定することで成立します。真似とはいっても完全な抽象化というよりはまだ粗い物を取り出した段階です。
しかし、モノマネから始まって抽象化から最終的に本物に至った顕著な例があります。それはルパン三世でおなじみ栗田貫一さんです。
実を言うと私は世代的にはほぼ栗田さんに交代後のルパンしか知りませんでした。金曜ロードショー等でカリオストロの城等は見ていたのですが、声優が交代していたことを知った時は驚いたものです。
元々栗田さんはモノマネのレパートリーとしてルパン三世を使っていたものの、紆余曲折を経て代役として声を当てたのが始まりだそうです。
最初の頃は特徴的な明るい話し方をしている部分は比較的問題なくこなせたものの、シリアスなシーン等の声色を掴むのには相当苦労されたらしく、研究と試行錯誤を積み重ねたそうです。
このエピソードは真似と学び、そして抽象化がとても良く示されているものだと考えています。
栗田さんは最初モノマネのネタとして特徴的な要素の拾い出しをしていた訳です。
その後代役として本当にルパン三世を演じるにあたり研究を重ね、モノマネには必要とされない小さな要素も細かく取り出す抽象化をして自らに落とし込んでいきました。
その小さな要素がより集まりルパン三世という1つの形が完成したのです。
これはそのまま学習でも例えることが出来ます。
分かりやすい例が数学です。公式が与えられていたとしてそれだけで完璧に理解できる訳ではありません。
練習問題を解くのも数が少なければ、その一つ一つに対する具体的な攻略法が分かるだけですが、数多くこなすことにより要点が何であるかの認識が自分の中で磨かれ、それが応用も効く自力に繋がるのです。
このように、真似ることは学ぶことに対して非常に重要な関わりがあり両者には抽象化の技術が非常に役立ちます。
皆さんも抽象化を常に心がけ学びに役立てましょう。