抽象化に役立つ思考その3は前に紹介した2つとは打って変わってライトな方法です。

 それは創作物にのめり込むということです。二次創作的な思考を持つと言い換えても良いかもしれません。

 

 幼少期の私は比較的一般的な方だとは思いますが、戦隊ヒーローの様な特撮が大好きでした。そして振り返ると、なかなかおもしろい心境の変化を経ています。記憶にあるほぼ最古の記憶ではそのヒーローになりきっているのですが、段々と自分がそのヒーローの世界に行ったらどんな能力が欲しいかを考え、オリジナルヒーローとなって共に世界を救うというような楽しみ方に変わっていたのです。

 とはいえこちらがどんなに強いヒーローを想像した所でテレビ放映に影響が出るわけではありません。そんな時に幼少期の私は放映されていない裏の世界観まで思いを馳せ、そこで活躍する自分と仲間を想像したのです。

 

 自分で振り返っていて言うのも変ですがなかなかにアレな子供ですね(笑)

 

 歳を重ね小〜中学生頃になると流石に自分がヒーローになるような願望はなくなりましたが、漫画や小説を読んだりアニメを見たりするのにも、幼少期に培った世界観への没入はコンテンツを余すこと無く楽しむといった点において役に立ちました。

 本編では描かれていない部分でこのキャラクターたちは何を考えてどんな風に行動していたのだろう、言及されていないがこんな設定が裏にあるのではないか等ただ表現されている事を読むよりも深く、広くその世界について臨場感を感じていました。

 

 そのように深く世界観に入り込むのに役立つような物を見つけるようになったのもこの頃です。

 

 私が小学生だった頃ハリー・ポッターが大ブームを起こしていました。

 そして本編の小説だけでなく、ハリーが使っていた教科書(魔法生物の教科書、作中に登場するスポーツの歴史書)というものも同時期に発売されていて、私もそれを買って読んでいました。

 それを読む読まないは直接的に本編のストーリーを理解するのに影響を与えません。しかし「あの世界にはこんな生き物がいるのか」であったり、「今ハリーがやっているスポーツにこんな歴史が」といった事を知るとその世界をより身近に感じることが出来るのです。その教科書にはハリーやロンの落書きも書かれていて、キャラクターの性格を知るのにも役立ちました。

 

 漫画等でも長く続く作品には設定等を纏めたファンブックが発売されますが、そういう物の存在を知るようになったのもこの頃でした。とにかくその世界の知識を集めて臨場感を味わっていました。

 

 小学校高学年から中学生位の時期に創作物に深く入り込むこむ事から派生した物語の楽しみ方をするようになりました。それが二次創作的思考さらに詳しくいうと物語のクロスオーバーを考える事です。

 

 ちょうどその頃週刊少年サンデーでうえきの法則金色のガッシュという漫画が連載していました。

 ざっくりいうせあらすじを説明するとうえきの法則は神様の後任を決めるため、神候補の天界人100人がそれぞれ一人づつ中学生に能力を授け、代理戦争を繰り広げる。というものでした。

 金色のガッシュは次期魔王を決める為に100人の魔族の子供が人間の力を借りて戦う。というものです。

 

 抽象化の記事なので既に切り取りやすいように要素を並べているのですが、かなり近いテーマでかつ物語の舞台になっているのも現代日本の人間界で共通しています。そこで私はもし2つの物語が同じ世界で起きた出来事だったらというような事を考え、間の世界観を埋める設定等を空想するようになったのです。

 

 ある意味一番空想をしているであろう年頃でその様な楽しみ方を覚えた事が抽象化視点を変えるという思考の種になっていました。

 抽象化とは簡単に言うと複数の具体的事象から共通する要素を見つける事です。出来る限り細かく、たくさんの要素を挙げてそれらを組みなおす事でまた新しい発見に繋がるのです。当時の私のその概念を知らずとも上記の2作品でそれを行いここが似ている、ここが違う、ここは共通していると考えて問題ない等とifストーリーを練っていたのです。

 

 私の最初の体験は作品と作品を超える大きな抽象化を行い、纏めるというものでした。結構無茶な事をしています。しかし、それを出来る限り矛盾なく作品同士を繋げようとすることで、作品に対する理解も深めようとする自然なモチベーションになりました。そうするとそれぞれの作中の描写を細かく分析するようになり、作品を渡らなくても抽象化視点の変化を無意識に使うようになっていたのだと思います。

 

 私の体験を例に挙げてしまうと二次創作のそれもクロスオーバーというジャンルに偏っているのでいきなり共感を得るのは難しいかもしれません。それに関しては機会があれば実際こんな設定を考えていた等を具体例を挙げて記事にした方が分かりやすいと思うのでそうします。

 しかし創作物にのめり込むという事に関しては間違いなくそのコンテンツをより楽しむ事に役立つのでまずそれを念頭において実践してもらいたいです。このキャラクターにはどんな背景があるのか、その世界で共有されている常識は?等色々な疑問を持ち、要素を切り出しながら分析してみてください。