あなたはこの世はオンラインゲームと変わらないと言ったらどのように思いますか?

 ゲームのやりすぎ?ヒーロー願望?それとも生き方の例えと受け取るでしょうか?

 今回はこの間読んだ本に面白い考え方があったのでそれをご紹介します。

 

 水槽の脳という思考実験をご存知でしょうか?概要としては、人間から脳を取り出して培養液に浸し、電極をつなげて脳波をコントロールして擬似的な感覚や刺激を与えた場合を仮定するものです。 

 高度に再現された仮想現実を見抜くことはできず、そして今私達が見ている世界もその様に作られた仮想現実であるかどうかを確認する術はない…というお話です。

 

 このテーマを使ってに大ヒットを飛ばしたのが映画マトリックスシリーズです。最近の若い方にはソードアートオンラインの方が馴染み深いかもしれないですね。どちらも人間が脳をコンピューターにつなぎ仮想空間にダイブするという点が共通しています。

 

 皆さんはこの思考実験に関して深く考えたことがあるでしょうか?バカバカしいと感じて最初から取り合わなかったり、そこはかとない恐怖を感じて目をそらしたりしたりしているのではないでしょうか。

 おそらくそこそこの認知度を持ちながらも考察されないこの思考実験も見方を変えると面白くなるのです。

 

 この思考実験の注目すべき点は人は物理的な現実を認識していないという点です。よく「自分の目に写ったことしか信用しない」という人がいます。しかしその目に映るものも現実にある物を直接見ている訳ではありません。物体に反射した光が目の中に入って像を結び、その刺激を視神経で感知して、脳で処理してようやく見たという情報に変わるのです。

 上下すら目の中では反転して像を結んでいるものを処理してから認識しているので、私達の心や自意識というものが外部を理解するのにかなりのフィルターがかかっている事がわかります。

 

 他の五感に関しても全てが物理的にあるものを直接認識しているのではなくそれぞれの刺激に対する受容器を通して変換された情報を脳で処理しているだけなのです。

 

 ここに、この思考実験と現実の捉え方の面白みがあります。

 

 

 認知科学という情報処理の観点から知的システムと知能の性質を理解しようとする研究があります。言語学や心理学、人工知能等の様々なジャンルをまたぐ分野です。

 

 今回私が読んだ本の面白い考え方とはこの認知科学から派生した「情報が先、物理が後」というものです。物理的な現実を認識してそこから人間の心理などの情報空間が生まれるのではなく、最もリアリティを感じた、脳が作り上げた心理的な現実を通して物理的な世界を認識している。ということです。

 例えば夜寝ている時、身体は動いていないのに落ちた感覚で目が覚める…そんな経験をしたことがある方は比較的多いのではないでしょうか。物理的な運動エネルギーは発生していないのに脳が勘違いしているとそれを現実だと認識してしまうという現象です。このように人間視点で言えば現実は情報>物理であるというふうに考えれば理解しやすいかと思います。

 

 この考えを元に現実は物理的な事実よりも観測者の捉え方でいくらでも変えることが出来るという方向性でその本は世界との向き合い方、自分の変え方について記されています。興味がある方は読んでみてください。

 

 

 話を戻しますが「情報が先、物理が後」という考え方を知った時に自分の頭によぎったのが現実とオンラインゲームの類似性です。

 

 現在オンラインゲームはその発展により離れた所にいてもゲーム内の同じ場所で出会うことが出来ます。協力プレイや対戦のように双方向でお互いに対して影響を与えることが出来ます。

 ただこれを視点を変えると見え方が変わってきます。

 確かにオンラインでの繋がりには相手が居ますが、私達はその相手本人ではなく、情報化された相手の行動を自分のゲーム機を通して見ているのです

 ゲーム機の中に相手がいるわけではなく、しかしそれでも相手の存在は臨場感を持って認識できるので、実際に会っているのとほぼ変わらずにやり取りが出来るのです。

 

 そして水槽の脳の思考実験に立ち返ってみましょう。私達は物理的にある世界を直接認識しているのではなく、感覚器が受容した刺激を脳が処理したものを認識しているのです。先程のオンラインゲームの例に当てはめるなら

 ゲーム機=脳

 ゲームをしている自分=脳の処理した情報を受取る心や自意識といったもの

 という構図になるのです。 

 

 一昔前ならいざ知らず、ゲームは人間の気付かれて居なかった本質にかなり近づいていたのです。

 

 よく自己啓発などで「自分が変われば相手も変わる」といった文言を耳にしますが、それは自分が変わることで相手に影響を与えるということだけでなく、認識の仕方を変える事で自分の中に映る相手を変えるということにも繋がるのです。

 

 上の方で述べたこの考えのきっかけになった本もそうですが、この観点を利用すると、文字通り世界を変える事ができます…というと大きく聞こえますが、少なからず自己啓発系の方々の言葉(まともな人に限ります)が思っているよりも、ぶっ飛んでいて認識不能なものではない、ということが理解できると思います。

 

 この考え方だけではあまり役に立ちませんが念頭に置くことで見え方が変わることも多くあるので今後事例を挙げながら紹介していく予定です。

 

 今回は以上です。ありがとうございました。