「鬼滅の刃」「はたらく細胞」という作品をご存知でしょうか?

片や王道少年ジャンプの看板となったダークファンタジー、もう一方は体の中で起こっている出来事を面白おかしく紹介する擬人化コメディです。

 一見するとなんの接点もない2つの作品ですが、これらの作品のメディア展開と人気を博したのには現代ならではの共通点が見て取れるのです。

 

 まずはそれぞれの作品について軽く説明しましょう。

「鬼滅の刃」

 時は大正、山奥に暮らす少年竈門炭治郎は家を開けている間に鬼に家族を惨殺され、唯一生き残った妹禰󠄀豆子も鬼に変えられてしまうという悲劇に見舞われます。

 

 炭治郎は辛くも生き残り、人知れず闇夜を跋扈する鬼を狩る組織「鬼殺隊」に保護されます。炭治郎は妹禰豆子を人間に戻すため、自分たちと同じような悲劇を引き起こす全ての元凶を打ち倒すために刀を取り、鬼たちとの戦いに身を投じます。

 

 この作品の魅力は敵味方問わず一人一人に戦う理由、鬼に堕ちた理由があり人間味(鬼に堕ちたものですら)を感じることが出来る所だと考えています。キャラクターに感情移入をさせつつ、間延びしない絶妙な早さで展開で進行していくストーリーは読者の心を掴んで離しません。

 

 続いて「はたらく細胞」です。

 舞台はとある「人」の中、酸素を運ぶのが仕事の赤血球はひょんなことから体に侵入を試みる細菌に襲われてしまいます。しかしそこを白血球の一種である好中球に助けられ、激闘の末に侵略は食い止められます。また再会出来ることを願いながら二人はそれぞれの仕事に戻る…というのが第一話。その後は体の中の様々な細胞や器官にクローズアップしながらその一つ一つの悲喜こもごもが描かれています。

 

 この作品の魅力は擬人化された細胞達によるドタバタ感、普段目に見えなくてイメージがわかないが最も身近な事である生命の営みに愛らしいキャラクターによって親近感が湧くところだと思っています。

 

 興味が湧いてきましたか?もし湧いてきたのなら是非とも読んでみることをオススメします。

 

 

 さて簡単に2つの作品の説明をしましたがこれだけ読んでも共通点が分かる人はいないと思います。まぁあくまで私が定義した共通項なので理解できたらその方はエスパーだと思います。

 

 私がこの2つの作品から見出す共通項は

 「誰もが主人公となり得る可能性」

 です。

 

 「鬼滅の刃」はつい先日本編の連載が最終回を迎え、今後はしばらくの間人気キャラのスピンオフ作品を展開していくそうです。

 「はたらく細胞」はより顕著で別の身体を舞台にした本編のスピンオフが既に8種類も展開され、スピンオフ作品もアニメ化するという快挙を成し遂げています。

 

 スピンオフ作品は何もここ最近できたものではないのですが、私はこのように作品が注目されるには「作品にまつわる要因」「読者にまつわる要因」があると考えます。

 「作品にまつわる要因」「登場人物一人一人に同等の魅力がある」事が挙げられます。「鬼滅の刃」で言えば主人公の炭治郎だけでなく仲間、先達、裏方、敵まで全てにその瞬間に至る因果があり炭治郎一人「だけ」何かを背負っている訳では無いことが伝わってきます。ということはそれぞれの視点でまたそれぞれの深いストーリーを描く事が出来るのです。

 「はたらく細胞」も同じく、本編中でもよく出てくるキャラクターは居てもそれぞれの話の中での主人公が居る形式でしたし、舞台が誰かの人体であればまた別の人体では同じようで違う事件が起こっていると想像を膨らますことができます。

 

 また作品を見る視点の多様性が出来やすい作品であれば「自分自身がその世界に居たら…」の様にさらに臨場感を感じてその作品に接する事もできます。

 

 「読者にまつわる要因」は読者が「自分の視点を大切にする」ようになってきているのだと考えています。

 それは先に示した要因によって読者が重きを置く視点が増える様になったと同時にSNS等を通してそれを発信することも同好の士を探すことも容易になったことから育った要因です。

  それは例えば二次創作として発露されることもあれば、「ここが良い」と思ったことを呟くだけでも反応が得られる環境があるということです。コンテンツを通して得たものをどんなに小さくても苦もなく発信できる時代です。

 

これはつまり

「誰もが主人公になれる可能性」

読者が主体的な発信者になれる可能性」

 

でもあるわけです。テクノロジーの発展は一人一人がコンテンツを消費するだけでなく小さくともコンテンツを創造し発信できる場を作り上げました。

 

 今私がここのブログに日々書き起こしている事も一種のコンテンツとなりそれは自分の為にも、時には人の為にもなり得ることです。

 皆さんも自分の中に生まれた閃きや発想は形に残るようにしましょう。