実はプログレが大変に好きなもので、特にKANSASの『Carry on my Wayward son』をよく聴きますが、プログレといえば、キング・クリムゾンやピンクフロイド、EL&Pに代表されるように、60年代後半から発祥の地イギリスで隆盛を極めていきましたが、パンクの隆盛の時期と重なるように縮小していくこととなります。
70年代前半にクリティカルマスを迎え、プログレこそがポピュラーであった時期があります。

難解、敷居が高いと捉われがちなプログレですが、仕組みを理解すれば、いたってシンプルな音楽構造をしています。



プログレと言えば、変拍子やクラシック音楽、その他のジャンル、奏法などを音楽に対して様々なアプローチをして、いわゆる前衛的なという意味でプログレが誕生しました。音の創りは決してポピュラーに拘らず、先駆者達はただの前衛的、実験的とだけ形容されないような、圧倒的に高品質の音楽性を創り出しました。



例えば、プログレに代表されるキング・クリムゾンの1stアルバムから“21st Century Schizoid Man”はジャズやクラシックをアートカッターで綺麗に切り抜き、切り取ったものを繋ぎ合わせるのではなく、秀逸に埋め込み、さらに金属的でヘヴィなギターサウンドや、予定不調和なリズムセクションやメロディーラインを非常に上手くロックにアプローチして、音楽に相当な厚みや深みを持たせることに成功しています。


余談ですが、一時、この曲を私の入場曲にしようかと考えた時もありましたが、入場したいポイントまでが長すぎるのと、変拍子があるので、これはダメだなと一瞬で諦めました(笑)



しかし、音楽は複雑にしなければディープにならないかといえば、それは否で、中身はいたって単純でもアプローチや手法、思想やコンセプトなどあらゆる要素で深みを増していきます。

単純な解釈で言えば、ロジャー・ウォーターズのソロや、彼がリーディングしていた頃のピンク・フロイドは歌詞(コンセプト)や歌唱法、創りをオペラ的に誇張したり、EL&Pならば、完全クラシック音楽傾倒方で、ロックにクラシックを取り込むのではなく、クラシックにロックを吸収させるような手法で、一つ一つの階層は単純ながらも、それらを重ね合わせることによって、ディープ感を創り出していました。



そして、ピンク・フロイドの『狂気』に代表されるような音楽界でも圧倒的な成功を収めますが、なぜ世界的な売り上げと比べると、日本ではヒットしないのかと考えると、音楽の要素にクラッシック音楽が多分に含まれるためではないのかと思うのです。

ヨーロッパはクラシック音楽の土壌がありますから、クラシック的構成や手法、変拍子など拍子の音遊びにおいて馴染みやすく、日本人にはあまり馴染みがない事もひとつの要因かもしれません。



ここから、U.W.F.に入りますが、このUこそが格闘技でのプログレという私の解釈なのです。

私の手元には、第二次U.W.F.の全興行のVTR、すなわち全試合がありまして、他にも初期U.W.F.やU.W.F.参戦時の佐山さん(スーパータイガー)などもありますが、プロレスのリズムと比べれば、あきらかに変拍子で、しかも、武士道から流れを汲んだ様式美(クラシック)、他ジャンルからのアプローチと、まさにプログレッシブ・ロック(プロレス)なのです。



これまた、各要素は単純なのですが、ルールなどが新機軸だったり、打極投をコンセプトとした土壌も当時は無かったため、決してポピュラーではなく、馴染まなかった人がいたことも自然だったわけです。


だがしかし、プログレ市場ではYesやジェネシス、エイジアなど、ポピュラーに歩み寄りをみせて、一気に市民権を得ることに成功するビッグバンドも誕生しました。

これが、まさに新日本プロレス対U.W.F.の対抗戦で、それを境に頑なに新日スタイルを嫌っていたU戦士達が、ポピュラーの土壌に一歩踏み出し、長州対安生戦に見られるような、見事な試合を創生し、その後も高田対橋本など同一スタイル同士では生み出せないような名勝負が生まれることになります。






そのように大きく動き始めた格闘技マーケットのなかにあっても、さらにストイック性を強めていったのは、佐山さんと舟木さん達で両者は修斗とパンクラスを立ち上げるに到るのですが、これはまさに頑なに思想軸を枉げないキング・クリムゾンのようではないですか!



私は、女子プロを主戦場にしていますが、面白くするにはスタイル間の摩擦抵抗を大きく生み出したいと思い、Uの流れを汲むイデオロギーを装備して、リングに上がってますが、普段は少しでもベーシックと融和させるため、変拍子やクラシックを取り入れつつも分厚いコーラスなどポップ寄りの KANSAS 『Carry on my Wayward son』などをイメージした試合を、そして、女王バチではキング・キリムゾン『21st Century Schizoid Man』などのような試合を心がけています。




音楽に対するイデオロギー、プロレスに対するイデオロギーの摩擦係数の幅こそがプログレッシブであり、5月のゴールデンウィークはNEO後楽園、パッション・レッド興行、女王バチと同時期にプログレッシブ・プロレス(ロック)を目にするまたとないチャンスです。