銀座線神田駅を6番で降りる。
妙に寒い。急に季節が巡った気がする。
靖国通りと中央通りが交差する大きな交差点を渡る。
この書き出しも3日連続だ。ひとつ違うことは雨。冷たい雨である。
「雨」といえば小泉今日子の「優しい雨」だ。
こんなに普通の毎日の中で
出会ってしまった二人
雨が止む前に抱きしめ合えたら
あなたについてゆく
はじまってしまったから……
この雨が何かの始まりだったら良いのに。
蕎麦屋名店巡り#43
「かんだやぶそば」(東京・神田)
神田の老舗、まつやに続く第二弾である。
靖国通りに面した雑居ビルからひとつ通りを入ると急に
歴史を感じる敷居の高い昔ながらの建物が並ぶ。
その中でも銀座線神田駅6番出口から行くと一番奥にある建物が
かんだやぶそば。風情ある立派な建物である。
純和風な庭を設えた小洒落たアプローチを歩き入り口へ。
大きなガラスで中が見える。雨のせいか客も疎ら。
傘の管理が厳格だ。スポーツクラブとかにある鍵をつけるタイプだ。
いろいろ揉めるんだろう。
鍵をつけ入場。それほど騒がしくない店内。引き戸の音で客が来たことが
気づかないのか。仕方ないので女将のほうへ自分で行く。
後ろまで来てようやく気づいてくれた。何だ一見はお断りなのか。
雰囲気ある座敷がよかったのだが、残念なことに雨のせいで軽量革靴が
ずぶ濡れで靴下まで浸水中の為遠慮しテーブル席へ。
頼むものは決まっている。「天たね」だ。
あとはせいろでいいかと思ったが、やはりせっかくまつやで鴨せいろうだったので
鴨せいろう…はないのか、じゃ、丁度寒いし鴨南ばんでお願いする。
すぐに異変に気づく。なんだあの百人一首大会のような読み手のヒトは。
カウンターの中でオーダーを復唱するお嬢さんがいるのだが、上記の通り。
これがかんだやぶそばクオリティー。一見に対する洗礼なのか。
さらに衝撃は続く。帰る客に対する言葉だ。「ありがとう存じます」
もはやここまでくるとメイド喫茶の走りだ。アクの強い店だ。
恐るべし、かんだやぶそば。
寒いし、周りの客につられ、熱燗をお願いしようか負けそうなタイミングで
天たね、鴨南ばん登場。
天たねは、メニューに「芝海老を高温の濃口胡麻油で掻揚に」とある。
仕事の丁寧さが伝わってくる上品な仕上がりだ。サイズも上品だ。
鴨南ばん。こちらも上品なサイズ。食べログなどでは量が少ないとのことだが
確かにここまで少ないとは。過去いろいろな店で鴨南蛮を食べたが一番高額で
一番量が少ない。恐るべし、かんだやぶそば。
フェイントで、まずは天たねから。さすがに揚げたて、サクサクで
油の重さも残らず美味である。しかしこの大きさ、小ぶりな芝海老四尾で
1,400円。素敵。
鴨をいただく。これは!ミディアムレアで仕上げられた臭みのない鴨。
これはすばらしい。確かに今までで一番おいしいかもしれない。
しかもそばはのど越しもよく食べやすい。故にあっという間になくなる。
少ないのだ。
鴨3枚とネギが大量に残った状態であっさりそばは終了したのだ。
翻って天たねだが、周りの客がほぼ頼むので恐らく看板なんだろうが
その後も感動はなく、まあこんなものかと楽しみにしていただけ失望は
大きかった。
結果論だとせいろと鴨抜きが最強ペアだったと思う。
しかし、まつやもそうだったが、そんな評価に反発するように蕎麦湯がおいしい。
とにかくおいしい。蕎麦茶のような甘く風味堪らない。
ラストオーダーの時間になりお金を払った後も2杯飲んでしまった。
で、まつやの相席した通風な客が言っていた、
「やぶそばと船場の間」ってなんだったんだったのだろう。
場所か?
とにかく多分お酒も飲まずに史上最高額を払った
かんだやぶそば。「ありがとう存じます」の一言に尽きる。
帰り道、道を間違えまつやの前に出る。
ごませいろ、行っておくか。
今日の一句:
ちはやぶる
神代も聞かず
龍田川
からくれなゐに
水くくるとは
ちょうどアニメ「ちはやふる」が今日からTBSでやってるんだよね。