借りている駐車場の道を挟んだ敷地で建築工事をしている。
マンションが建つそうだ。
昼間多少騒音はあるが、まあ特に関係なく生活している。
ただ住宅街の細い道に大型車が行き来するので
交通誘導のおっさんが常に立っている。
いやたぶんじいさんだな。じいさんが立っている。
俺が駐車場に向かおうと歩いているとそのじいさんが
「ご迷惑おかけします」と頭を下げてくる。
横柄な態度はとりたくないのでこちらも頭を下げるが
毎度毎度通るたびに言ってくるので恐縮してしまう。
そんな日が続いていた。
先日駐車場に向かっているとじいさんが
「いってらっしゃい」と声をかけてきた。
そして帰ってきたときに「おかえりなさい」と言ってきた。
これはもう完全に顔と車を覚えられた。
いや、覚えられたからといって困ることはない。
こちらは公正明大に堂々と人目につかずに生きている。
じいさんも良かれと思って言ってくれている。
わかる。わかっている。
でも覚えられた。
あいつ車で出ていったと思ったらすぐ帰ってきたな。
なにをしにいったんだろかとか思われてないだろうか。
見るたびラフな格好だがちゃんと仕事してるんだろうかとか
思われてないだろうか。
たぶんじいさんはそんなこと思ってない。気にもしていない。
でも駐車場に向かうたび、じいさんを見かけるたび
俺にはそう思われない態度と心構えが必要だ。
こんなことがマンションが建つまで続くのだろうか。
これはなかなか大変だ。