いわゆる「教科書贈収賄事件」について(平成28年第2回定例会・一般質問2/3)
6月8日に一般質問を行いました。今回は、
①生活保護費のギャンブル浪費について、②いわゆる「教科書贈収賄事件」について、③大規模災害に備えた防災・減災対策について、質問いたしました。ご報告いたします。
②いわゆる「教科書贈収賄事件」について
1.実態について
質問1-1(穴田貴洋)
昨年末以来、教科書会社が、検定中の教科書を教員らに見せ、それに対する対価として謝礼を支払っていたことが発覚し、両者の根深い「慣れあい体質・癒着構造」を露呈し、公正性・透明性が求められる教科書採択の信頼を大きく損ねる事態となった。
まず、国と道の調査結果について示せ。また、何が問題なのか。背景についても示せ。
答弁1-1(学校教育部長)
本年、3月に文部科学省が公表した、「教科書発行者による自己点検・検証結果の報告を受けた各教育委員会等における調査結果」によると、発行者から謝礼等を受領した公立小中学校の教員等は3,367人、このうち25%にあたる839人が「調査員」などとして、今回の事案にかかわっていた。
また、北海道教育委員会によると、このうち道内における調査対象者は529人、発行者が謝礼等を支払ったとする者が500人、このうち受領した者が380人、このうち90人が調査員等であり、謝礼等を受領した調査員等が閲覧した教科書が採択されたのは55件となっている。
今回の事案では、検定期間中であるにもかかわらず、発行者が会議を開催し、教員に申請本を閲覧させ、謝礼等を支払う行為は、申請本を流出させないよう規定されている文部科学省の教科用図書検定規則実施細則に抵触し、また、一般社団法人教科書協会が業界団体として自主的に定めた「教科書宣伝行動基準」を逸脱した行為であると捉えている。
こうした背景については、報道によると、発行者からは教科書を良くしたいとの思いから現場の教員の意見を聞きたいと釈明があったが、一方で、宣伝行為等が過熱したことなど様々な要因があったものと考えている。
質問1-2(穴田貴洋)
今回の事件は、教科書採択をめぐる規則やルールが形骸化していたことを示した。文科省幹部も「想定以上の規模」と驚くように、教育界における「戦後最大の不祥事」となった。露見したケースは「氷山の一角」との声もある。
これだけの大事件でありながら、本市においては、市教委から議会側への報告がない。何故なのか。
質問1-2(学校教育部長)
今回の調査は、都道府県教育委員会等の協力の下、文科省が実施したものであり、既に、3月31日付けで文科省のホームページに調査結果が公表されていることや本市独自の調査でないことから、議会には報告していないが、この調査結果に基づく教員への服務指導上の措置については、道教委の統一的見解に基づき、教育委員会会議での手続を経て決定した。
質問1-3(穴田貴洋)
「文科省HPで公開し、独自調査ではないので報告しなかった」との理由だが、市教委は、採択権限を有し、教員を指導し、採択の公正性・透明性を確保する立場であり、本市で起きた事件との自覚に欠いているといわざるをえない。
そこで、本市における「教科書会社」の自己点検結果及び「道教委」の調査結果による今回の、いわゆる「教科書贈収賄事件」に関与した、旭川市教育委員会関係者及び教員の人数、教科、役職、受領した金額、現金以外の報酬について、それぞれ示せ。
答弁1-3(学校教育部長)
教科書発行者による自己点検・検証結果の報告では、旭川市立小中学校の教員は47人が申請本を閲覧し、謝礼等を受領したとされ、担当教科は国語、算数、数学、理科、社会、生活、英語、音楽及び美術の9教科、役職は校長2人、教頭4人、一般職41人、受領した金額は5千円から2万円となっている。
これに対し、文科省から情報提供された調査対象者に、市教委が事実確認を行った結果では37人が服務指導上の措置の対象となっている。このうち、申請本を閲覧したが、謝礼等は受領していない者が2人、申請本を閲覧し、かつ、謝礼等を受領した者が3人、申請本を閲覧していないが、謝礼等を受領した者が32人となっており、担当教科は9教科、役職は校長2人、教頭4人、一般職31人である。また、謝礼等を受領した者は35人で、金額は5千円から2万円、受領した場所は会議を開催した会場か振込みによるものとなっている。
服務指導上の措置の対象となった37人のうち、弁当・食事の提供を受けた者が15人、航空券及び宿泊券の提供を受けた者が2人、駐車券の提供を受けた者が2人となっている。
質問1-4(穴田貴洋)
「教科書会社」による自己点検結果と、「教育委員会」による調査結果が、不一致である理由とは何か。どちらが正しいのか。
また、これらの調査で「金品授受の実態」がつかめたのか。見解を伺う。
答弁1-4(学校教育部長)
事実確認の結果、閲覧したのは申請本ではなく、当時使用中の教科書であったという事例や、閲覧した時期が検定期間外であったという事例などにより、規定に反しないことが確認された者や閲覧したことが確認できなかった者、また、金品を受け取っていないとする者や記憶があいまいな者もあり、今回の調査結果と不一致となった。
また、金品授受の実態については、発行者の自己点検結果と事実確認結果には相違があるが、最終的に、道教委が一定の判断をし、統一的な処分等がなされたものと考えている。
2.選定委員について
質問2-1(穴田貴洋)
「教科書会社」による自己点検は、虚偽等の報告があった場合、発行者の指定取り消しも含め、文科省が厳しい方針を示した中で行われた。
一方で、「道教委」による調査は、調査期間も短く、「身内」である市教委による調査ということもあり、非協力的な回答も相次ぎ調査も難航した。実態は極めて不透明である。
更に、問題視すべきは、これら不適切な行為の対象者がその後、採択権限を持つ市教委に助言する立場になっていたことである。
教科書採択の公正確保の徹底にあたり、「選定委員」の選任方法はどのように行ってきたのか。役割についても示せ。
答弁2-1(学校教育部長)
選定委員については、旭川市教科書選定委員会条例において、小学校又は中学校の校長及び教員、学識経験を有する者及び教育委員会事務局の職員を任命することとされていて、関係機関の推薦等に基づき、教育委員会会議で審議し決定している。
また、この条例により、選定委員会の所管事項については、「教育委員会の諮問に応じて、旭川市立小中学校において使用する教科書の採択について必要な事項を調査、審議する」と定められている。
質問2-2(穴田貴洋)
今回の、不適切な行為の対象者の中で「選定委員」として、教科書採択に関与していた教員らの人数、教科、役職、受領した金額、現金以外の報酬について示せ。
答弁2-2(学校教育部長)
今回の調査では、申請本の閲覧が確認された者又は謝礼等を受領した者のうち、選定委員に就任していた者は7人、担当教科は国語1人、数学4人、社会2人、役職は校長11人、一般職6人、受領した金額は5千円から1万5千円、このうち、弁当の提供をあわせて受けた者が2人となっている。
3.謝礼について
質問3-1(穴田貴洋)
教科書の採択について必要な事項を調査・審議する「選定委員」に、採択に直接の利害関係を有する者を選任することは不適切である。明らかに採択制度を歪める不正であり、教科書採択で有利な取り計らいを受けるための「賄賂」に映る。見解を伺う。
答弁3-1(学校教育部長)
謝礼が賄賂に当たるという厳しい意見もあることは承知しているが、今回、教員が行った行為については、職務外の行為として申請本などを閲覧し、その謝礼等を受領した事例であり、この中には当該教員が、選定委員として教科書の調査研究を行った事例もあるが、職務上、発行者に便宜を図ったものではなく、賄賂には当たらないとの道教委の認識が示されている。
指摘(穴田貴洋)
仮に、申請本を見て意見を述べ、その対価で現金を受け取ったのであれば「謝礼」とも言えるが、これら「不適切な現金」を受け取った35人の教員のうち、実に11人が申請本の閲覧もせずに、業者に現金を「振込」させている。
何もせずに振り込まれたこのカネは、一体何に対する対価、「謝礼」というのか。「賄賂」ではないのか。
質問3-2(穴田貴洋)
教員が教育委員会に届出をせずに、教科書への意見聴取の対価として「謝礼」を受け取っていれば、「公務員の兼業兼職の禁止規定」に抵触する。
市教委への届出はあったのか。
答弁3-2(学校教育部長)
今回については、届出などはなかった。
4.市教委の対応について
質問4-1(穴田貴洋)
不正に関わった教員らが自ら清算することが、教育界への信頼回復の第一歩である。これらの「不適切な謝礼」はすべて返金されたのか。
また、市教委は返金するよう指導したのか。
答弁4-1(学校教育部長)
市教委としては、返金するよう強制はしていないが、道教委から示された「返金については、個人の判断となるが、道民の皆様の今回の事案に対する関心の高さなどを考えると、謝礼等については教科書発行者に返金することをお考えいただきたい」との見解に基づき、指導をした。
質問4-2(穴田貴洋)
市教委に届け出もせず、不正に得た「謝礼」を返金しない者に、教師としての勤めを果たせるのか疑問である。教育倫理の観点からも、返金を「強制」すべきではないのか。
また、今回「不適切な謝礼」を受け取った者が、今後も「選定委員」に加わることはあるのか。
答弁4-2(学校教育部長)
今回の事案については、全道に共通する課題であるため、道教委の方針に基づき対応しており、返金の強制はしなかった。
また、選定委員については、これまでも、文科省の通知や採択に当たって道教委から示される採択基準に基づき選任してきたが、今回の事案を踏まえ、文科省から特定の発行者と関係を有する者が関与することのないよう留意することなどが通知されているので、今回、謝礼等を受領した者を選定委員に選任することについては、今後の通知や採択基準に基づき、適切に対応してまいりたいと考えている。
質問4-3(穴田貴洋)
文科省は毎年「通知」を出して、行き過ぎた宣伝行為を控えるよう呼びかけ、昨年の中学校教科書採択前の4月にも各社に文書で要請したほか、採択する「教育委員会側」にも注意を促したていた。
しかし、文科省は、5月以降も「複数の教育委員会」から不正行為の報告が寄せられたため、異例の口頭要請を行い、6月にも教育委員会に対し、再度「通知」を出して注意を促していた。
これら再三にわたる「通知」をもっても事件は防げなかった。市教委は教育現場などに対してどのような対応をとったのか。十分であったといえるのか。
答弁4-3(学校教育部長)
市教委としては、これまでも、文科省の通知の趣旨に基づき、採択権限のある各教育委員には情報共有を図ってきているが、学校に対しては、今回の発行者による自己点検・検証結果の報告に関する調査の結果報告も含め、文科省や道教委からの通知があったため、教科書採択の公正性・透明性の確保に万全を期すよう、文書により周知したが、結果としてこのような事態となったことは重く受け止めている。
質問4-4(穴田貴洋)
文書回覧のみというのは、問題意識の低さがうかがえる。
文科省によると、謝礼支払い等の不適切な行為は、自主点検の対象となった過去4回の検定(小学校の平成21年度と25年度、中学校の平成22年度、26年度)のすべてで行われ、不正が常態化していたことが明らかとなっている。
昨年は「複数の教育委員会」から不正行為の報告が寄せられ、複数回「通知」も出されたが、本市においては、この長年にわたる悪しき慣行を知っていたのか。
また、不正行為を発見した者などからの「通報」はなかったのか。
答弁4-4(学校教育部長)
これまで、こうした状況は把握していないし、また、通報等はなかった。
質問4-5(穴田貴洋)
本市においては、これまで透明性の高い公正な採択が行われてきたとのことであるが、実際は、検定から採択までの過程において、不正を見抜けず、社会の常識にも背くカネが動き、内部通報もなく自浄能力もないことが明らかとなった。今回の問題を軽く扱えば、更なる重大事件に発展しかねない。
市教委としてのチェック機能に問題はなかったのか。責任はどこにあるのか。
答弁4-5(学校教育部長)
今回の事案に係る責任については、一義的には発行者の法令遵守意識の欠如にあるものと考えているが、教員についても、教科書採択に係る仕組みの理解が不足しており、また、結果として、市教委においてチェックすることができなかったことは、大変遺憾だ。
指摘(穴田貴洋)
業者の遵法意識の欠如というが、教員らが「不適切な謝礼」を受け取りさえしなければ、起きなかった事件である。市教委は、教員の腐敗を糺す気はあるのか。認識が甘いと言わざるをえない。
5.採択への影響について
質問5-1(穴田貴洋)
今回の一連の事件で、教員らへの金品提供が最も多かったのは、業界最大手の「東京書籍」で2245人。次いで大手の「教育出版」が1094人であった。この大手2社が支払った人数は計3339人で全体の8割超と際立っていた。
本市及び道内における自己申告の状況について示せ。
答弁5-1(学校教育部長)
文科省から情報提供された本市の調査対象者は47人であり、教育出版が34人で各5千円、東京書籍が15人で金額は1万円から1万2千円、光村図書が3人で各2万円となっている。
道内の状況については、道教委がまとめた調査結果では対象者が529人であり、報道によると、検定中の教科書を見せていた教科書会社は、教育出版、東京書籍、光村図書、数研出版、開隆堂、啓林館の6社であり、謝礼を渡したのは教育出版が370人、東京書籍が101人、光村図書が18人、啓林館10人で、金額は5千円から2万円となっている。
質問5-2(穴田貴洋)
教科書がその「内容」ではなく「謝礼」という利権の下で採択され、結果、カネ払いの良い会社の教科書が、教育の世界でのさばることは絶対にあってはならない。
本市において、「謝礼を提供した教科書会社」への採択変更はあったのか。
答弁5-2(学校教育部長)
平成27年度の採択において、中学校の数学、美術及び英語で発行者の変更があった。
質問5-3(穴田貴洋)
例えば、数学が「啓林館」から「教育出版」に変更された。「啓林館」は10名に謝礼を支払ったと自己申告しており、これは道内では一番少ない数である。
その一方で、「教育出版」は道内最多の370名に謝礼を支払ったと自己申告している。実に「啓林館」の37倍、道内2位の「東京書籍」の3倍以上である。
この変更と今回の事件との関係はないのか。
答弁5-3(学校教育部長)
平成28年度から使用する中学校の数学の教科書については、啓林館から教育出版に変更されたが、教育委員会会議において、すべての教科書について十分審議を尽くし、採択されており、今回の一連の事案との関係ない。
質問5-4(穴田貴洋)
「啓林館」は1期だけの使用となった。1期だけでの変更は現場の教師に混乱を与えるとの認識ではなかったのか。
また、「不適切な謝礼」を受け取った選定委員7名のうち、半数以上の4名が数学であった。本当に、採択への影響はなかったといい切れるのか。
答弁5-4(学校教育部長)
一般的には、同じ発行者の教科書を継続して使用するほうが現場の教員の負担は軽いものと考えられるが、今回の数学の採択に当たっては、発行者7社すべての教科書について十分審議した結果、つまずきがちな生徒への配慮がなされていること、また、学習内容の確実な定着を図ることができる内容となっていることから、啓林館から教育出版に変更となった。
また、謝礼を受領した調査員は7人中4人が数学だったが、今回の変更との関係ない。
6.処分等について
質問6-1(穴田貴洋)
採択への影響については、自己申告に頼らざるを得なく、「謝礼をくれたから某社を推薦した」などと正直に告白する者などいない。再発防止のためには、厳しい処分が求められる。
今回は、一般職のみならず管理職までもが、「不適切な謝礼」を受け取っていたことが明らかとなっているが、どのような処分が科されたのか。
その事由、人数、役職、処分内容、処分の軽重についても示せ。
答弁6-1(学校教育部長)
今回の服務指導上の措置やその軽重については、道教委において、他の都府県の教育委員会の状況等を勘案し、統一的な見解が示されており、本市においてはいずれも懲戒処分には至らない訓告、注意又は校長からの指導となった。
この内訳だが、申請本を閲覧し、謝礼等を受領した後、選定委員に就任したことから、文書による訓告となった者が1人、申請本を閲覧し、又は謝礼等を受領したことなどから、文書又は口頭による注意となった者が18人、謝礼等を受領したことから、校長からの指導となった者が18人となっている。
なお、役職については、文書又は口頭による注意となった者のうち校長が2人、教頭が4人の計6人が管理職で、その他31人は一般の教諭だ。
質問6-2 (穴田貴洋)
*総務部
教育委員会においては、今回の事件については、適切に判断されたとのことであるが、一番重い処分でも「文書訓告」という軽いものであった。
そこで、総務部にお伺いする。例えば、同じように、建設業者が市職員を招いて、規則やルール違反を犯し、現金や飲食接待、交通費及び宿泊費等の提供を行った場合、業者や市職員はどのような処分となるのか。
答弁6-2(総務部長)
本市職員が、職務上の利害関係がある建設業者から金銭を受領し、飲食の接待を受けることは、市民の疑惑を招くばかりか、全体の奉仕者としてふさわしくない行為として重く受け止め、厳正に対処することになる。
処分の軽重については、その動機、状況、頻度、金額、本人の職責、また、社会に与える影響度を踏まえ、国や他都市等の処分事例も参考にしながら、処分を決めていくことになるが、当該行為が贈収賄などの罪になる場合には、業者については「旭川市競争入札参加者資格者指名停止等措置要領」に基づく指名停止措置の要件に該当し、職員については、懲戒免職処分に該当するものと考えている。
7.今後について
質問7-1(穴田貴洋)
市教委は「採択に影響はなかった」とのことであるが、現在、公正取引委員会は、謝礼を渡すなどの行為で、公正な取引が歪められた可能性があるとして、独禁法違反容疑で、調査に乗り出している。
このほか、地方公務員法第29条(懲戒)の違反、刑法第197条(収賄、受託収賄及び事前収賄)及び198条(贈賄)の違反にも抵触する恐れのある重大な事案である。
あまりにも認識が甘すぎる。コンプライアンス意識を見直すべきではないのか。
答弁7-1(学校教育部長)
教員の不祥事の再発防止については、これまでもあらゆる機会を通し注意を喚起してきたが、今回の事案により、教育に対する信頼が著しく損なわれる事態となっている。
教育行政は、市民の信頼の上に成り立つものであり、教員一人ひとりが服務規律の確保や法令遵守について高い意識を持つことが必要であり、改めてその趣旨を徹底するため、 なお一層コンプライアンス意識を喚起してまいりたいと考えている。
質問7-2(穴田貴洋)
市職員の民間企業等への再就職については、退職前5年間に在籍していた所属に対し、退職後2年間は自粛しなければならない。
以前にも指摘をしたが、採択に直接の利害関係のある「教科書会社」への市教委関係者及び、教員の天下りは許されるのか。
天下りの「実態把握」すら必要がないとの見解であったが、今回の事件を受けても変わりないのか。
答弁7-2(学校教育部長)
発行者への教員の再就職については、退職した教員が持つ教科指導の知識を発行者として活用したいという思いと、これまで培った研究成果等を生かしたいという教員の思いが適合した結果であって、このことにより教科書採択に特段の影響をもたらすものではないことから、今回の事案を受けての再就職の実態把握は考えていない。
質問7-3(穴田貴洋)
今年度は小学校の「道徳」の検定が実施されるが、道徳教育が必要なのは、小中学校の児童生徒に「道徳の教科書」をつくる教科書会社と、それを教える教員そのものという結果となった。「不適切な行為」と決別できるのか。
答弁7-4(学校教育部長)
今年度は、小学校の道徳の検定が実施され、来年度は採択が行われることとなっているが、今回のような不適切な事案が起こらないよう、既に文科省や道教委からの通知により、各学校及び教員に対して、教科書採択の公正性・透明性の確保について周知している。
また、今後については、今回の事案を重く受け止め、これらの通知の趣旨を十分に踏まえ、校長会議をはじめとした各種会議や教員研修の機会なども活用し、教科書採択において制限されている事項やその仕組み等について、教員に対してさらなる周知徹底を図るとともに、教育委員会においても、選定委員会の委員の選任に当たっては、発行者との関係について聴取又は自己申告を求める等、特定の発行者と関係を有する者が関与することのないよう留意するなど、これまで以上に、教科書採択の公正性・透明性の確保に万全を期していく。
8.総括
質問8(穴田貴洋)
教育の目的は、教育基本法にも示されるとおり、人格の完成と、心身ともに健康な国民の育成にある。その根底には、道徳や倫理、遵法精神が不可欠である。
しかし、今回の不正は、働きかける教科書会社側のモラルもさることながら、金品を受け取る教員側のモラルのなさは、それ以上に問題であると言わざるをえない。本来、子供たちが模範とすべき教師への信頼、教育行政の信用を揺るがす背任行為に他ならない。
この他、学校指定の制服やジャージ、運動靴や、修学旅行等の関係業者との関係など、同様のケースは他にもあるとの疑いもある。再発防止の鍵を握るのは教育委員会と教員にある。最後、教育長の見解を伺う。
答弁8(教育長)
教科書は、すべての児童生徒の学校における授業や家庭における学習活動において重要な役割を果たしている主たる教材であり、その採択に当たっては、教育委員5人の理念と見識に基づき、十分に審議し決定しているが、今回の事案により、教科書採択の公正性・透明性に疑念を生じさせる事態に至ったことについては、誠に遺憾だ。
今回の事案は、採択勧誘のための宣伝行為等が過熱したことなど、発行者の法令遵守意識の欠如に起因するものであるが、一方で、教員の法令や制度に対する理解不足も要因のひとつであったと考えている。
教育行政は、市民の信頼の上に成り立つものであり、現場では働く教員一人ひとりが服務規律の確保や法令遵守について高い意識を持つことが何よりも重要だ。
市教委としては、今回の事案を重く受け止め、あらゆる機会を捉えて、なお一層、教員の意識改革やコンプライアンス意識の醸成を図ってまいりたいと考えている。
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