「キモンちゃん、大丈夫?」

見たところ目立つようなアザはできていないけど、頭の中とか内出血しているかもしれない。

かなり頭を蹴られてたから、私はそれが一番心配だった。

「殴られたことが悔しくて、体の痛みは感じない」

と、キモンちゃんは言った。


二人の親子喧嘩の発端は、お父さんの浮気が原因だった。


キモンちゃんは、ここから車で20分程の距離にある家にお父さん、お母さん、他の兄弟達と住んでいるのだけれど、

今は短大の夏休みが始まったので、おばあちゃんの面倒を見るためにここに住み込んでいる。リハビリのお手伝いをしたり、お風呂に入れてあげたり、若いのに偉いなあと私はいつも関心していた。


そんなキモンちゃんとおばあちゃん二人暮しのこの家に、お父さんは自分の浮気相手を連れてきて、

「今夜、彼女はここに泊まるから」

と言ったそうだ。


キモンちゃんは最近、お父さんが浮気しているという噂を耳にしていたけれど、お父さんがそんな事するはずないと信じていた。

なのに今日家に連れてきた女は、噂に聞いた浮気相手の情報とぴったり一致したそうだ。


「アナベル、相手の女は私と同い年なの」


キモンちゃんと同い年っていうことは、18歳。

キモンちゃんのお父さんは52歳。


これって娘目線で見たら、すごく不潔な関係ですよ。

そのうえ娘と同じ家に泊めようなんて、反則技。

ホテルとかに連れてけよ!


聞けば、お父さんは片道3時間もドライブして女を迎えにいったらしい。

この国に出会い系サイトとかあるのか知らないけど、普通に出会う関係じゃない気がします。

キモンちゃんが出かけるときは車で送ってくれたためしがないのに、女のためなら3時間のドライブもOKですか。


「でもなにがひどいってね、お父さんはあかの他人を泊めたいがために、家族の私を殴ったの。それが一番許せない」


切ないです。

私は元気付ける言葉も見つからず、ただ黙って話を聞いてることしかできませんでした。


浮気するにしても、最低限のルールは守れ!

家族にばれないようにするっていうのは、絶対厳守のはず。

家族第一ってそんなに難しいことなのかなあ。


なんかもう会うの嫌だなあ、キモンちゃんのお父さんと。

普通に挨拶できないかも。


結局、お父さんと女はまた戻ってきて、隣の家に泊まってました。

正義派執行されませんでした。




















夜の8時頃、キッチンで夕食の後片付けをしていると

近所の家からなにやら怒鳴り声が聞こえた。


こんな事はいつもの事なので、始めは気に止めなかったのだけど

声のトーンが怒鳴り声から金切り声に変ったところで

ヤジウマ馬出動!


表に出ると、隣の家を遠巻きに囲むように

他のヤジウマ達が集まっていた。

今夜の主役は、お隣の親子みたいです。


娘 「お母さんを侮辱してると思わないの、くそったれ!!」


父 「俺に向かって、なんて口のききかたをするんだ!」

   バシッと娘を平手打ち。


娘 「もう、あんたなんて父親だとは思わない!!」

   

父 「なんだと~!!」

   娘の頭とお腹をサッカーボールみたいにキック


  って光景が繰り広げられていました。


家族同士の喧嘩って、止めたいと思っても中々とめられないものです。

他人が軽々しく入っていけない領域です。

ヤジウマ達も、ただ傍観しているのみで役立たず。


しばらくして、騒ぎを聞きつけたキモンちゃんのおばさんがやって来てキモンちゃんの援護をしたので、

お父さんは悪態をつきながら車でどこかへ行ってしまいました。


私的には、敬虔なキリスト教徒のキモンちゃんが、くそったれなんて言葉を使った事にびっくり。

毎日、寝たきりのおばあさんの面倒を見てあげてる良い娘なんです。

キモンちゃんのお父さんもいつもは温厚な紳士で、暴力を振るう姿に唖然としてしまいました。


興味を無くしたヤジウマ達が帰った後、私はキモンちゃんの様子を見に行こうか迷いました。

気持ちをぶちまけたいと思っているか、そっとしておいて欲しいと思っているか、判断できなかったからです。


私もそろそろ家の中に入ろうとした時、キモンちゃんがベランダから私を呼びました。

「アナベル、聞いてくれる?お父さん、最低なの」


私は、半開きの玄関のドアをロックして、キモンちゃんの家に向かいました。


つづく














カリブ海に浮かぶ小さな島で暮らしています。


暖かい国に住む人たちは、みんな陽気でのんきだなあ

なんて思った第一印象は表の顔。

住んでみると、出て来る出て来る裏の顔。


この楽園のダークサイドを、ヤジウマ精神旺盛な私が

レポートしていこうと思います馬