突発的に目を開いた。
今までの記憶は何処へ行ったのだろう。
起きたてで頭がボーッとしているからだろうか。
道理で周りがぼやけて見えるわけだ。
他にもいくつかの仮説を、自分なりに考えてみるもやはり脳が働かない。
…まあいいや。
途中面倒になって、投げ出す。
これがどうやら“僕”の性格らしい。
面倒事は後に回す、ただ放棄しているだけかもしれないが。
不意に目だけ隣に向けると、少女が座っていた。
その少女は鮮明に見えた。
無表情ながら、真っ直ぐと正面を見ている。
何故か胸が締め付けられるような思いだった。
僕は彼女の事を覚えているわけではない。
ただ、この思いからして、特別な人なんだろう。
温かくて、愛おしいこの気持ち。
しかし何処か不安も抱いていた。
理由なんて分かるはずもなく、僕の性格はまた正常通りに発動したのだった。
とにかく、僕の隣に少女が座っている。
その彼女に釣られて、僕も前を見た。
今度はしっかりと情景を捉えることができた。
僕が見たくないモノ、だったからだろうか。
「―――なっ」
思わずその場で立ち上がった。
ヒヤリとした汗が、首筋に伝う。
目を見開かずにはいられなかった。
どういう事だろうか。思わず身体が震えてしまった。
だけど僕は視線を外すことができなかった。
いつまでも捉え続けるソレ。
そんな僕を、無表情のまま少女は見た。
「現実」
小さく口を動かして、僕に聞こえる声で確かに彼女は言った。
聞きたくなかった。視たくなかった。
拒絶した、現実を。
直視した、現状を。
矛盾した二つの事実らしきものが、互いにぶつかり合い心を染めてゆく。
漆黒で、脆くて、どうしようもない心に。
同時に、フラッシュバックが起きた。
思い出したくない、真っ赤に染まった僕。
細長く銀色に光る刃物を、だらしなく持っており先端からは血が滴っていた。
ニヤリと笑って、静かに涙を零したガラスに映った人影。
あれは少女か僕か。
見分ける時間もなく、現実に戻っていた。
真っ赤にぶちまけられた、その部屋に。
いっそ泣いてしまったら楽かもしれない。
けれど肝心な時に涙は零れやしない。
高まる破壊衝動。
自らを抱いて、グッと堪える。
「それでいいの?」
冷淡な声が、僕の本能を擽る。
ジッと僕の目を見ていた。まるで、心を見透かしている様に。
静かに彼女の首元に、手を添える。
その光景を他人事のように、ツマラナイと言っているかのように彼女は見ていた。
嗚呼、彼女もまた僕と同じなんだ。
いつのまにか笑みが零れた。
それでよくて、いけないこと。
矛盾で、虚言で、妄想なこの出来事。
それでいいんだよね。
何処か悲しげな表情を含んだ目で、僕は語りかける。
少し驚いたような顔をして、彼女もまた哀しげな目で言ったんだ。
僕と違って、口を開いて。
「わるくないよ」
僕はギュッと手の力を強くした。
-end-
