大量投下 | 何かを目指して、お題やバトン等に答える受け身ブログ

大量投下

【呟いた安楽死】

こめかみ押さえて
イチからトオ
吸っては吐いての繰り返し
尊いと語る
別の声

赤いエナメルの爪先を
じっと眺めたままの
見開いた眼球が
こぼれ落ちそうに血の味を思い出す

安楽死
不規則なリズムでしか刻めない
この口も
この命も
不器用さを笑って

また
刹那だと
騙り続けるのだ


【拝啓・殺人鬼様】

スコープ越しに
こんにちは
たったひとつ瞬く間に
わたしたち
奇妙な"関係"を共有した
共犯者となりましたね

殺し殺される関係は
主従に似ていて甘いけれど

切なさや苦痛を孕んだせいで
狂気が生まれたのでしょう

故にあなたは
弾痕を残したの

受け入れ
ぽっかりあいた胸から
溢れ落ちたのは
皮肉にも
あなたへの愛

どうぞ
お好きに殺して

草々


【花束の奥に】

直角に切り取られた
まちのすみっこで
大通りから逃れた猫が
一匹考えた

花束を贈られるとは
どんなきもちか
ただひとりに
あいされるのは
どんなきもちか
その奥にはどんな虚無があるのか

円形に切り取られた
まちの真ん中で
孤独から逃れた犬が
一匹考えた

花束を贈るとは
どんなきもちか
ただひとりを
あいするとは
どんなきもちか
その奥にはどんな虚無があるのか

ただひたすらの
平行線

【双面魚】

すり抜けていく時間を
指折り数えるのが好きで
どうにか掴まえようと
躍起になるあなたが
すこし微笑ましかった

わたしは子供で
とても孤独なのに
わたしは大人で
何もかも持っている
水中でもがく肺呼吸の魚

なかまに入れない
暴れ足掻き溺れても
わたしはわたし

裏と表
紙一重で変わり者
声を顰め呟いた
焦っているのはキミ
気付いていない私が
貴方には可愛いのだと云う


【水たまりの沈丁花】

雨上がりの道を
おろしたてのローファーが駆ける
こころが壊れないように
「ダフネ」とつぶやきながら

水たまりに花が咲く
いつかあなたと乗った
七色の観覧車
誓いの轍がレンズに焼き付く

かつて毒ある果実だった
いまのわたしは
なんの魔法も持たないただの少女で
窮屈な制服の中で笑って
あの観覧車で誓った
とわの証を
さがしてるんだ


【昨日、泣いた鳥】

不死鳥の涙には
癒しのちからがあると
あなたはいつも
わたしに話してた

こころがボロボロに
打ち砕かれて尚
あの子のすべてを
ひたすら求めるのに
術もなく
わたしに縋る

おれのために泣いてと
籠からだして
柔らかく撫でる
火傷しそうなほど、甘い
あのこへの嫉妬

不死鳥なんかじゃない
いじわる烏のわたしを
愛してると言うなら
泣いてあげても
いいわよ


【海に沈む】

母なる海に沈む
あなたの憎しみを抱いて


【マーブル色】

混ざりあったのは
おとこ

をんな

マーブル模様を描く
汚らわしい嫉妬は
自らも他者をも
醜曲させるもの

混ざりあったのは
只の
おとこ

をんな

【天国】

極楽浄土にいけたら素敵よね
彼女はそんな
戯言を吐いていたっけ

玄関はいってすぐの
せまい台所の床に
出来た生温いみず溜りから
閻魔さまがよんでいますよ

鼻に突く匂いが
たちこめていた