私は大学1年生の頃から3年半、スーパーのカート・カゴ回収のアルバイトをしている。

 

 

カート回収といえば、シルバーの仕事のイメージがあると思う。実際その通りで同僚のほとんどは60代のおじいちゃんおばあちゃんである。

 

20代前半の私は当然最若手、その次に若手なのが私が採用される半年前に採用されていた30代前半のMさん(男性)だ。コロナウイルスがキッカケで勤めていた会社が倒産してしまい、アルバイトを始めたそう。

 

4月から社会人になるにあたってこのバイト先を今月末で辞めることになっているのだが、今回そのMさんと一緒の最後のシフトだったのだ。

 

私は高校生の頃はバイトをしていなかったため、このバイトが初めての社会経験だった。どんな怖い人がいるのか、上手くやっていけるのか、不安でたまらなかったのだが、全身から優しさが溢れ出ているMさんが私を出迎えてくれた。

 

私の教育係がMさんだったのだ。

 

仕事を覚えるまでアタフタしていて長年働いているおじ様から嫌味を言われたり大変だったが、Mさんはいつも私を励ましてくれた。

 

私が仕事を覚えて一人前になった後も、なにかと気にかけてくれて嬉しかった。

 

そしてMさん、仕事がデキる人。

Mさんが一緒のシフトだと冗談抜きでやることがなくなるから困ることもあるくらい笑

 

そんなMさんと最終日。

 

バイト終わりに仕事が早く終わったのでゆっくりお喋りする時間ができた。

 

私は根っからの照れ屋で、普段は思ったことを口に出さない・出せないタイプの人間なんだが、今日は「悔いを残したくない」という想いが勝って、意を決してMさんに思っていることを全て伝えてみた。

 

「今までありがとうございました。Mさんが最初に仕事を教えてくれたからここまで働けたんです。Mさんがいつも気にかけてくれるのが支えで、嬉しくて、今日でお別れなんて泣きそうです。」

 

的な感じだったと思う。

文字に起こすと気恥ずかしいね笑

 

Mさんは笑ってくれた。

そして握手をしようと手を差し出してくれた。

久々うるうるしてしまった...。

 

「新社会人にこんなこというのはあれかもしれないけど、無理しすぎずに頑張ってね。」

 

Mさんはそう励ましてくれた。

 

私が女性だったらこの人に間違いなく恋をしただろう。

 

私は、基本的に人の成功や幸せは心から祝福できないし、それどころか妬んでその人の没落を願うようなクズみたいな人間なんだけど、Mさんに可愛い彼女ができたら、Mさんが幸せを掴んだら、心から祝福できると思う。

 

「この人には本当に幸せになって欲しい。」

 

心の底からそう思った。

 

悔いのない別れ。