季節始めの仁義なき闘い | 固茹日記

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はーどぼいるどな俺がお届けするロマンティック活劇的日常

季節外れの仁義なき闘い・壱
季節外れの仁義なき闘い・弐

全俺を震撼させた、
あの屈辱から、十年…

新たな闘いの扉が、、、開いた、、、、。


*****************

違和感。

そう、最初の気づきは、違和感だった。

枕元にある携帯を開く。
もちろん、俺の携帯はドコモのPだ。
ギョーカイ人っぽく、ワンプッシュで
パカッと開く。

本体と同じ紅色で覆われた待受画面に
もっこりと表示された時計は、

6/3(wed) 3:08

と表示していた。

ここ最近、早寝超早起週間の俺にとって、
本来であれば、もうヒト寝入り、
いうなれば、夢の中に置き忘れてきたなにかを
再度取りに行くのに、十分な時間、、、

のはずだった。

しかし、気づいてしまったのだ。

自分の体、右半身に生じた違和感に。

俺は常に右側に寝る。
従って時折、体の右側だけが、
最近若干へたれ気味の羽毛布団からポロリする。
どうやら、そのちょっとした心の隙を狙われたようだ。

俺の体で最も魅力的ランキングの上位常連である、
血管が浮き上がっている右腕の手首付近。

幼少期の過酷なトレーニングの末、
いまだマッチョな、右脚ふくらはぎ付近。

幾度もの捻挫を経験しながらも、1m近い垂直飛びを
可能にしていた、右脚足首のくるぶし下付近。

そして、
おぱんてぃえーる将軍と、はだけたTシャツの間、
月夜に浮かぶ白銀の魔術師こと腰骨付近。

4箇所に渡って、その異変は観測された。

10年前の悪夢が蘇る。
当時まだぴちぴちの20代ギャルだった俺は、
血気も盛ん、ふれるものみな傷つけた。
そうした悪行の果てに、天から罰を下された。

体長わずか1cmにも満たない生物に、
安眠を妨害され、翻弄され、
あげく、女優の顔にまで、敗者の烙印を刻まれた。

俺はアレ以来、心を入れ替え、
本年度も既に、街中がGWで大はしゃぎしていた時から、
渦巻き型の線香に火をつけ、準備万端整えていた。

にも、かかわらず。
やられてしまったようだ。

奴はいずこからか寝室に侵入し、
んぁ~ぁ~あ~という音で俺に気づかれることなく、
神々から与えられし任務を遂行したのだ。

以前の俺であれば、ここで即座に電気をつけ、
奴を探し、ひねりつぶしていたであろう。

しかし、10年という時を経て、俺も大人になった。
まずは、冷静に、しかし、迅速に、
ウナクールを探す。
爆撃を受けた4箇所に、
優しく言葉をかけながら、ぬりぬりする。
ひんやりとした感触が、
猛烈なかゆみを、和らげてくれた…その時だった。

俺のいつまで経っても視力2.0、
ぱっちり二重のお目目さんが、
視界に黒い飛行物体を捕捉した。

ふっ、俺は思わず鼻で笑う。
無様な姿だ…、俺はそんなセリフを吐く。

神々のしもべであることに慢心し、
己の能力に溺れ、ポテンシャル以上の血液を吸い、
見事なまでにメタボになった奴は、
重そうな体をひきづるように、
ようやく低空を飛べている、
そんな状態だった。

俺は、再度つぶやく。
--天国に行ったら、神々に伝えよ。俺はまだまだ、抗ってやる。

左右に開いた俺の両腕、約120度に開いた状態から、
一気に0度の方向へ、力が解き放たれる。

次に両手を開いた時、
右手の手のひらには、おそらく俺のものであろう血液、
左手の手のひらには、昇天した奴の姿、

俺は、近くにあったティッシュ(エリエールCute)で、
両手のひらを、ごしごしする。
後処理は迅速に、これは、昔から変らぬモットーだ。
とっとと後処理→一服→腕枕、これをどう迅速に出来るかで
男の価値は変ってくる。

季節始めに突如始まった闘いは、
あまりにもあっけなく、
俺の圧勝に終わった。


そして、過去を振り返る。
あれから、10年、
いろいろなことがあった。
辛く厳しい経験を何度もした。
いまだに現実は厳しいことの連続だ。

しかし、着実に俺は、強くなっている。
10年前は苦戦した奴らにも、
今なら自信を持って挑めることもわかった。


充実した気分は、戦闘によって高揚した気分を抑えこみ、
俺は、再度、夢の世界へ戻った。



早朝6時に目が覚める。

布団から1mmも出ていないはずの、
俺の左脚内くるぶしの下付近が、



猛烈にかゆかった。



神々のニヤニヤした笑い声が聞こえた。
俺たちを本気にさせるなよ、小僧、
と、聞こえた。


まだまだ、闘いは終わりそうにない…。