香港「テレビの乱」 | Amy~音楽の夢~

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最近、香港「テレビの乱」です。

香港の現在のテレビ体制は

(1)無料テレビ局(いわゆる地上波)
TVB(無線電視)、ATV(亞洲電視)の2社sdfsdfsdf

(2)有料テレビ局(契約チャンネル)
TVB系列の有料チャンネル
ケーブルテレビ(有線電視)
大手インターネット会社PCCW系now tvの3社

です。

たとえばNHKを見たかったらケーブルTVのNHKを契約、
映画を見たかったらnowの映画専門チャンネルを契約など
もちろん有料チャンネルにも需要はありますが、
日本と同様で「選んで契約するテレビチャンネル」よりも
テレビをつければ見られる無料テレビ局の視聴が一般的な香港。
「無料テレビ局が増えること」は市民の希望でした。

無料テレビ局が増える。
この話は2009年に遡ります。

長年の2局体制により競争の必要がない香港のテレビ業界は
番組のマンネリ化、クオリティの低下、画一的な視点などが
市民から問題視されてきていました。
そこで、政府が市民の声を聞き入れる形で
無料テレビ局を増やし、テレビ業界を活性化しようと
踏み出したのが、2009年夏のことです。

2009年、案が出た当初、
新たに開放する放送ライセンスに上限は設けない
と発表され、10社が申込みました。

その中、書類審査に通ったのが

ケーブルテレビ系の「奇妙電視」
PCCW(now tv)系の「香港電視娯楽」
独立系の「香港電視(HKTV)」

の3社です。

その後、ライセンス新規発行に関して
既存の地上波テレビ局(TVBとATV)が大抗議したり
大きな波乱もあり、何一つ自体が動かないまま時が経過。
その間に香港政府は【新政権に代わり】、
香港はなんとなく不穏な時代へと突入していきます。

政府は全く動かず、テレビ局新設の話はなかったことに
されてしまうのではないかとさえ思われる中、
大きく動きを見せたのが香港電視(HKTV)でした。

香港電視(HKTV)を立ち上げた王維基氏は、
認可が下りる目処が全く立っていないにも関わらず、
香港電視への投資をどんどん増やし、
多額を投じて製作スタッフを他メディアから
続々とヘッドハンティング。
そして、ドラマの製作をスタートします。
もちろんテレビ局としての認可は下りていないので
放送する場所がありません。

王維基氏が選んだ「無料で誰でも視聴できる」舞台は、
Youtubeでした。

その結果、「番組」は大成功でした。
まるで映画のようにクオリティの高いドラマは、
既存テレビ局制作番組に不満が多い若者層を中心に
爆発的にヒット。
香港電視は、一気に支持率と知名度を上げます。

王維基氏が自らの理想のテレビ局を作るためのステップとして
まずは市民からの支持を得ることが目的だったのだろうと
思います。

市民は、クオリティが高く創作意欲に満ち溢れた香港電視が
テレビ局として認可されることに大きな期待を寄せるようになり、
その声は次第に大きくなっていきました。

それまでの王維基氏の功績は長くなるので割愛しますが
2008年、短い期間ですが
ATVの社長の座についていたこともあります。
その当時、「CCTVの第十番目のチャンネルみたいには
なりたくない」(CCTV第十番目のチャンネルとは、香港で
中国寄りメディアという批判によく使われる表現です)
「中国企業のスポンサーは要らない」などと発言したことがあり
そういった過去も、香港市民の「新しいテレビ局」への期待を
さらに大きくさせた理由のひとつかもしれません。

ちなみにこの王維基(Ricky Wong)氏、
ネット上でのニックネームは、Wiki。

香港で、ウィキペディアは「維基」と書くからw

では、ここからはわたしもWikiと呼ばせていただきます。

テレビ局新設を巡って、
既存テレビ局による既得権益者の阻止工作が表面化し、
市民の反発が大きくなっていく中で
2013年秋、ついに政府は新しいテレビ局申請を
認可することを決定。
ここで、同時に政府側から
「申請を許可するのは2社までとする」
という発表がされました。

政府発表は2013年10月15日17:20頃が予定されていました。

制作クオリティが高く
非常な熱意と創作意欲があり
市民からの支持が厚い

香港のテレビ業界に間違いなく新しい風をもたらすであろう
「香港電視」誕生の瞬間を多くの市民が見守りました。

「香港電視」公式facebookにも、こんな投稿がされました。


そして、10月15日17:20pm。
予定通り、香港の新しい無料テレビ局の申請許可が
発表されました。

ケーブルテレビ系の「奇妙電視」及び
PCCW(now tv)系の「香港電視娯楽」の
新設テレビ局申請を許可する。

ただし「香港電視(HKTV)」の申請は、却下する。


香港電視のfacebookは「落選発表」後、
数時間沈黙したままで、それが衝撃の大きさを伝えていました。


今回3社の中で、「新しい」のは香港電視だけでした。
現時点でもケーブルはケーブルテレビ、
PCCWはnow tvという有料テレビ局を持っているので
そこに奇妙電視と香港電視娯楽という無料チャンネルが
加わるだけという印象はぬぐえません。
また、この決定に至るまでの間、
ケーブルテレビとPCCWが市民に対して
「無料テレビ局を新設して何を提供したいか」などの
方針や理想を訴えたことは全くありませんでした。
「新しいテレビ局への夢」を全力で訴えてきた香港電視
とは市民に向き合う姿勢が全く異なります。

「無料のチャンネルが増えるだけで
テレビ局の構成は変わってない!」

それが現段階での市民の見解です。

ちなみに、現段階の2社に関しても、
「申請」が認可されたまでの段階。
このあと、政府に「企画書」を提出し、
正式に新しいテレビ局としての放送ライセンスが
下りるかどうかの審議が行われます。


流れてきた情報では
アドバイザーは3社とも発行すればいいのではと意見した
という話や、
データ上では新たに3社に許可を下ろし、5局体制になっても
全てのテレビ局はやっていけるという結果が出ていたという
情報が出てきています。

しかも、香港電視だけに認可を下ろさなかった理由について
記者会見に応じた香港政府は

「法律的に政府内閣審議結果については非公開とされ
今回の理由も公開する必要がない」

と発表。

そんな「黒い箱」の中での密室での結果に
誰もが納得できるわけがありません。


この翌日、記者会見を開いたWiki社長は、

「香港には、もう正義は存在していない」

と発言しました。


不許可という結果に対しての政治的な要素に関しては、
「政府がコントロールできなそうな新しいテレビ局は
認めたくないのではないか」というような風評も
出ていますが、
Wiki社長ご自身は「政治的な要素はないと思う」と
言っていました。
ある報道では、
認可前の状態にも関わらず
投資をどんどん増やし
あちこちからヘッドハンティングで社員を雇い
コンテンツ制作をはじめ、Youtubeで公開をはじめる。
そのやり方は、政府への対抗意識が表面的に出すぎていて
気に入らなかったのではないかという話も出ています。


もともと2社しかないテレビ局。
笑いのセンスもドラマの展開も歌番組も、多くが時代遅れ。
そんな今あるものへの不満をすくいあげ、
打開しようと走ってきたWikiさんに
支持の声が大きくなっています。

これは、ただのテレビ(娯楽)への怒りじゃないのです。

香港のトップ(行政長官)を直接選挙で選べない香港。
テレビさえも黒い箱の中で市民の希望を握りつぶされてしまう。
市民には、トップだけじゃなく、娯楽を選ぶ自由もないのか。

これから2017年普通選挙導入への審議が進められる予定の
香港ですが、こんなことでは選挙制度改革への期待もできません。


すでに新しいテレビ局のために5億ドルを投資し、
すばらしいコンテンツを制作している香港電視を応援してきた
市民と、報道メディアの怒りが爆発しました

結果が出た直後に作られた「香港電視を支持する」ための
Facebookページは、10月15日設置後わずか4時間で

20万人が支持(いいね!)。

「萬人齊撐!!!快發牌比香港電視!!!」
https://www.facebook.com/supporthktv



10月19日現在、支持は48万人にまで膨れ上がっています。

48万人ですよ!

香港の総人口は、約700万人です。


さらに、10月17日には、
母校である香港中文大学でWiki社長による講義が開かれ、
集まった聴衆は約3000人。
大きな政治問題や社会現象が香港で起きたとき
大学などの教育機関が中心となって活動することも
香港らしさです。


そして、10月20日(日)。
最も香港らしい「行動する民意パワー」、
真相の開示を求め、デモ行進が開催されます。
香港のデモは、「大遊行」という中文名称そのままの
「市民パレード」です。


「民間開放電視行動 / 市民へのテレビ開放運動」
集合場所:銅鑼灣東角道
(ビクトリアパークじゃないので注意してください)
集合時間:午後3時
デモ終点:政府總部
服装:できれば黒い服で。


「ブラックボックス」の中から出てきたこの不透明な話は、
今後、民主派議員さんたちにより、
立法會(いわゆる国会)でも審議されることとなりそうです。


香港電視風雲は、まだまだ始まったばかりです。