微小残存病変(MRD:minimal residual disease)とは、抗がん剤や手術である一定の効果が確認された後に、まだ体内に残っているであろうと想定されるがん細胞のことです。

 ALアミロイドーシスは、がんではないのですが、多発性骨髄腫と同じ形質細胞の異常でおきる病気で、骨髄腫に併発することもある、非常に近い関係にある病気であるということから、ALアミロイドーシスにおいてもMDRに関する研究がなされています。

 

 MRDについては、今まで患者の会としても情報を出していませんでした(特にまだ出す必要がないと思っていたからなのですが)が、今年のALアミロイドーシス患者の会オンラインセミナーの際に寄せられた質問の中に、MRDについて質問があり、セミナーを視聴された患者さんの中で、MRDって何?と戸惑う方がいらっしゃるかもしれないと思い、先生の回答の補足として、ちょっとだけ書いておこうと思いました。

 

この内容は、血液がんジャーナル(V11)に掲載された記事に由来しています。

 

 ALアミロイドーシスの深い意味での血液学的反応の最適な目標というのは、まだ明確ではないのですが、遊離軽鎖のカッパとラムダの差が10ミリグラム/L未満の達成、20ミリ以下の遊離軽鎖レベルに加えて、最小残存病変(MRD)の陰性が含まれる場合があります。

 

 多発性骨髄腫では、MRD陰性を達成することで、患者の転帰を改善できることが知られていますが、ALアミロイドーシスではまだ検証がされていません。

 

 多発性骨髄腫においては、次世代シーケンシング(NGS)という検出方法でMRDを調べ、重要な要素として注目され始めていますが、腫瘍の要素が大幅に少ないALアミロイドーシスにおいては、骨髄腫と同じNGSで有効かどうか分かっていないということで、その方法の模索も含めて、海外で調査が行われました。

 

 サンプル(参加した患者数)が少ないので、最終的に結論を出すには限界がありますが、この調査の結論として、次のように報告されています。

 

『MRD陰性の達成は、無増悪期間の改善と臓器機能の改善傾向に関連しています。

 

それにもかかわらず、私たちの研究の多くの患者は、MRD陽性であるにもかかわらず、臓器反応(臓器的寛解)を達成したことに注意することが重要です。

 

MRDが存在下での臓器改善の可能性は、治療毒性のリスクが高い集団では、注意されなければなりません。

 

MRD陰性を達成することのみを目的とした追加の治療は、すでに脆弱化した患者に過剰な毒性をもたらす可能性があります。

 

臓器機能が悪化している患者では、MRD検査が追加の治療方を導く可能性がありますが、臓器の改善している患者、特に治療耐性が低い状況では、治療なしの念密なモニタリングが検討されます。』

 

(「ALアミロイドーシスにおける次世代シーケンシングによるMDRの検出」より)

 

 

・・・ということで、AL患者では、悪い細胞の増殖が少ないこともあり、臓器障害で弱っているところに過度な治療はかえって仇になることもあるので、MRDが陰性になっているかどうかは、あまり気にしなくていいよ、というのがセミナーでの先生たちの答えでした。アミロイドーシスの難しいところですね。これからさらなる解明が期待されます。