何も知らない私に、学校の友達は、自分のお気に入りを色々と紹介してくれる。

特に、食べ物のお勧めは興味深い。

「シリアルは、これが美味しいよ。」「あそこのお店は最近人気だよ。」等、教えてもらう度に、次々と試している。

最近教えてもらった、ベーグル屋さん。紹介の通り、とても美味しくて、何度も買いに行っている。朝一番に行かないと、人気のベーグルは売り切れてしまう。

お勧めの中には、私の好みに合わない物も、たまにある。

例えば、トレジョのオクラチップ。サラダのクルトンの代わりに、これを砕いて入れるらしい。健康的かもしれないが、オクラだから、噛んでいると口の中で粘りが出て来て、サラダのパリパリ感に、食感の馴染みが、いまいち。購入して試したものの、結局、「クルトンの方がいいよね。」と、家族の意見が一致した。

 食卓で、袋を手渡ししながら、家族皆でオクラチップをつまんでいた時のこと。

ふと、袋の表示に目が止まった。

「オクラって、OKRAって書くんだね。O.KU.RAだと思ってた。」

「KUって書かないってことは、日本語じゃないってこと?オクラって、何語?」

「英語だよ。」

「知らなかった!オクラって、何処の野菜?」

つかさず、父が携帯で調べる。

「原産地は、アフリカだって。明治初期に、中近東、中国を経て、日本に入って来たけれど、特有の粘りと青臭さの為に、普及しなかったらしい。第二次世界大戦後に、アメリカで品種改良されたものが再び入って来て、60年代から広く栽培されるようになったんだって。」

「へぇ〜。」

母が感心して聞いていると、父が続けて話し始めた。

「では、質問です。イクラは何語でしょうか?」

「えっ!イクラも日本語じゃないの⁈」

「魚の卵なんだから、きっと海がある場所だよね。」

「スカンジナビアの方じゃない?」

「違います。」

「シャケなんだから、寒い国だよね。」

「アイスランド語とか。」

「うーん…。」「……。」

「正解は、ロシア語でした。」

「へぇ〜。」

「ロシア語では、魚卵のことをイクラーって言うそうだよ。」

「じゃあ日本語のイクラとは、微妙に意味が違うね。」

「ロシア語では、キャビアを「黒いイクラ(チョールナヤ・イクラー)」、イクラを「赤いイクラ(クラースナヤ・イクラー)」と言うらしい。」

「へぇ〜。」

「魚卵がイクラなら、きっとタラコもイクラだろうね。」

乾燥オクラチップを皆でモグモグしながら、「オクラとイクラ」で盛り上がった食卓だった。