海岸へ散歩に行った。

海を眺めていたら、左側の岩場の上で、私と並んで、海をジッと見つめている存在に気が付いた。
リスだ。
グッと胸を上げ、ちょっと仰け反った体勢で、潮風を受けながら、真っ直ぐ海を見つめている。
少々距離はあったが、リスと並んで、一緒に海を眺めているなんて、何だか不思議な感じがした。

リスは、何を思って海を眺めているのだろう。

驚かせないようにと、身体を動かさず横目でそっと見ると、その姿はとても凛々しく、なかなかに魅力的だ。逃げてしまわぬように、なるべく気配を消すようにして、暫くリスを眺めていた。

陽の光を浴びたそのシルエットは、『冒険者たち』の作中で、初めて海を見た時の主人公・ガンバの姿を思い起こさせた。


☆小さい頃にドキドキしながら読んだ素敵な物語を、せっかく思い出したので、作中の最後でガンバと仲間達が歌った歌を載せます。

 さあゆこう仲間たちよ
 住みなれたこの地をあとに
 曙光(しょうこう)さす地平線のかなたへ
 聞こえるだろう ほら
 梢をゆする風の中に
 流れくだる河の歌声が

 さあゆこう仲間たちよ
 ふりそそぐ日の光を背に
 若草もえる岸辺のはてへ
 聞こえるだろう ほら
 川面をわたる風の中に
 はるかとどろく潮鳴りが

 われら草の根をまくらに
 旅を住処とし
 久遠(くおん)の郷愁を追いゆくもの

 さあゆこう仲間たちよ
 うずまきさかまく大海原を
 残照輝く水平線のかなたへ
 聞こえるだろう ほら
 あれくるう風の中に
 自由と愛のほめ歌が

出典『冒険者たち』斎藤惇夫

↑大好きな物語の一つ。

『冒険者たち』表紙のガンバ、いつ見てもカッコいいです。(ガンバは、リスではなくネズミです。)