イングランドプレミアリーグ第3節。注目の判定・注目の試合をピックアップし、簡単に講評する。

 

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Referee topics

 

ライスのイエロー2枚は
いずれも妥当。

 

 アーセナル vs ブライトン
(Referee: クリス・カヴァナー VAR: アンディ・マドレー)

 

42分、スライディングを試みたライスとフェルトマンが接触。バレバに絡まれてボールが流れた中で、五分五分のボールにチャレンジする中での接触となった。

 

カヴァナー主審の判断はイエローカードで、VARもその判定をフォローした。かなりの勢いをもって突っ込んだ形ではあるが、足裏はクリティカルヒットしてはおらず、足裏の上がり方もそこまで高くはない。フェルトマン側がうまく避けたのもあるが、ラフプレーによる警告ということで問題ないだろう。

 

スロー映像で見ると足裏が足首あたりに当たっているようには見えるが、ノーマルスピードで見れば深く入っているわけではない。映像を繰り返し見れば退場にも思えてくるが、今回はイエローカードで妥当だろう。

 

そして48分には、ライスが2枚目の警告を受けて退場に。ファウルを採られ相手のフリーキックの場面で、フィールド上に残ったボールを蹴って再開を妨げてしまった。ボールが静止していたかどうかは微妙なところだが、ブライトン側のクイックリスタートの阻止をする意図がある行為であり、遅延行為に該当する。警告は不当なものではない。

 

初見だとフェルトマンにライスが蹴り飛ばされたようには思えるが、フェルトマンは正当にボールを蹴ろうとしており、そのボールに対してライスが足を出したことで、不可抗力としてライスの足を蹴ってしまう形になっている。これはいわゆる「事故」であり、罰せられるべきではない。

 

 レスター vs アストンヴィラ
(Referee: デーヴィッド・クーテ VAR: アレックス・チロヴィチ)

 

後半、レスターのヴァーディーがゴールネットを揺らすも、その前にレスターの選手のパスがクーテ主審に当たってコースが変わっていたため、クーテ主審が試合を止めており、ゴールは認められなかった。

 

現行の競技規則では、第9条の1項にて以下の記載がある。

 

ボールは、次のときにアウトオブプレーとなる。

(中略)

・ボールが審判員に触れ、競技のフィールド内にあり、次のようになった場合、
 ・チームが大きなチャンスとなる攻撃を始める。または、
 ・ボールが直接ゴールに入る。または、
 ・ボールを保持するチームが替わる。

 

今回の場合は、レスターが中盤でボールを保持しており、レスターの縦パスがクーテ主審に当たってコースが変わり、そのままレスターのチャンスにつながった形だ。つまり、該当しうるのは1つ目となる。

 

確かに、クーテ主審に当たったことでヴィラ側が意表を突かれた…という見方はできなくはないので、競技規則の適用ミスではないものの、レスターとしては受け入れがたいだろう。そもそも縦パスのコースに立っていること自体が主審としては致命的に近いポジショニングミスでもあるし…。

 

なお、VARを務めたチロヴィチ(Alex Chilowicz)は元MLS(アメリカメジャーリーグサッカー)の審判員であり、昨季からイングランドに「移籍」している異例の経歴の持ち主だ。もちろんアメリカ国籍保持者であり、昨季はEFLで活動し、今季はさっそくプレミアリーグでのVAR担当を得た。MLSや北中米の国際舞台での経験があるため、即戦力として今後の活躍が期待される。

 

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各試合の講評

 

今季のサウサンプトンに重なる
昨季のバーンリー(降格)。

 

 ブレントフォード vs サウサンプトン

 
サウサンプトンは開幕3連敗となったものの、菅原がプレミア初ゴールを記録。得点シーンは見事なボレーだったが、ウィングバックながらゴール前まで侵入するシーンはこれ以外にも多く、攻撃面での可能性は感じるパフォーマンスであった。ゴール前でのフリーキックを任せられるなど、チーム内での地位もある程度確立しつつあり、ゴールとアシストという目に見える結果で評価を高めたいところだ。
 
一方でチームとしては苦しい戦いが続く。ハーゼンヒュットル監督時代はポゼッションとは無縁のアグレッシブスタイルだったが、ドンズやスウォンジーでの指導経験をもつ新鋭ラッセル・マーティンを招聘してからはポゼッションスタイルに取り組み、EFLではまずまずの完成度を見せてきた。
 
が、そのポゼッションスタイルがプレミアの舞台で通用していない。後ろから繋ごうとはしているが、自陣でのボールロストでカウンターの餌食になるパターンも多く、特にプレッシングとショートカウンターを得意とするブレントフォードとの対戦では弱点を如実に露呈する形となった。
 
ララーナやウゴチュクウなどテクニカルなタイプもいる中盤はさておき、ベドナレクを軸とする最終ラインのビルドアップスキルは心もとなく、1部で通用するレベルではない。重なるのは昨季のバーンリーであり、このままポゼッションにこだわっても明るい未来は見えにくい。マーティン監督の決断やいかに。