J1リーグ第7節。注目の判定をピックアップ。

 

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Referee Topics

 

「明白な間違い」ではない場合、
VAR介入は難しい。

 

 東京V vs 柏
(主審:木村博之 VAR:上原直人)

 

51分、ボールをカットした細谷がドリブルを開始。まずはハーフウェーライン付近でボールに対して遅れてタックルを受けるも、ものともせずに突き進むと、エリア内に入ったところで相手DFと交錯して転倒。いずれもノーファウルというジャッジになり、VAR介入もなく判定そのままとなった。

 

まず最初の接触については明らかなファウルに思える。細谷がプレーを続けたためアドバンテージ適用が妥当に思えたが、木村主審はシグナルを見せておらず、このジャッジは疑問が残る。

 

そしてエリア内での接触については、最初に手がかかりそうになったものの、細谷がはねのけたこともあり影響はほとんどない。ホールディングの反則を採るのは厳しい。議論の対象になるのは足の接触だが、DFが細谷に「追突」したようにも見えるし、細谷が相手をブロックするために体を入れたことが原因で接触…という見方もできる。木村主審はおそらく後者の判断を下したと思われ、その判断は「明白な間違い」とは言えないので、VAR介入は難しい。

 

個人的には、直前に手をかけて止めようとするなどファウル覚悟で止めに行く意思が感じられることもふまえ、ファウルでPKという判断が妥当と感じた。したがってレイソル側の抗議には共感するものの、主観の領域なのでVARが介入できなかったことは現行の運用ではやむを得ない…とも考える。

 

 神戸 vs 横浜FM
(主審:池内明彦 VAR:吉田哲朗)

 

75分、裏に抜け出したヤン・マテウスと前川が交錯。先にボールに触ったヤン・マテウスに対し、遅れて突っ込む形になった前川にはレッドカードが提示され、一発退場となった。

 

ヤン・マテウスはDFを置き去りにして抜け出しており、ラストタッチはやや外に向いたものの、無人のゴールに決めるのは難しいことではない。したがって状況としてはDOGSO(決定機阻止)に当たり、退場処分が妥当だ。また強度としてもかなりの勢いで突っ込んでおり、ラフプレーとして一発退場でもおかしくない接触であった。

 

なお、ペナルティエリアの中か外か…のVARチェックが入ったものの、結果としては「外」という当初判定そのままとなった。エリア内でボールに対するチャレンジの場合、懲戒罰は一段階下がるので、もしエリア内であれば軽減されてイエローカードとなった可能性が高い。

 

 京都 vs 磐田
(主審:先立圭吾 VAR:飯田淳平)

 

この試合がJ1主審デビュー戦となった先立主審。40分、クロスからペイショットのヘディングシュートを放つと、ペイショットと競り合った麻田の右手にボールが当たる。当初はノーファウルだったが、VARレコメンドによるOFR(オン・フィールド・レビュー)の末にハンドでPKというジャッジになった。

 

麻田としてはヘディングでの競り合いをする中で「自然な」手の広がりではあったが、結果的に体の面積が広がったところにシュートが当たった…となると、ハンドになるのはやむを得ない。かわいそうな部分はあるが、PK+SPA(チャンス阻止)による警告というジャッジは妥当なところだ。

 

先立主審としては、J1デビュー戦という重圧のかかる試合だったが、VARチェック中は落ち着いて選手とのコミュニケーションをとるなど、若さに見合わぬ落ち着きが目立っていた。今回のハンドのジャッジは選手が重なっている状況であり、「見逃し」と断じるのは酷だろう。上々のデビュー戦だと言える。

 

 広島 vs 湘南
(主審:上田益也 VAR:西村雄一)

 

14分、ルキアンが中野と接触して倒れるもノーファウル。上記の細谷の事例と同じような接触であり、接触を招いたのがどちらと捉えるか…という主観の判断が重要になるシーンだ。個人的には細谷の事例と同じくファウルに思えるが、上田主審のノーファウル判定も許容の範囲内なので、VAR介入は難しい事例だと言える。

 

一方、48分のソム・ボムグンの一発退場の判定は、上田主審の判断に異論なし。ボールをキャッチし損ねたところで大橋に食いつかれ、咄嗟に大橋を抱え込んでしまった。あとはゴールに流し込むのみ…という状況であり、DOGSOであることは火を見るよりも明らかだ。

 

 川崎F vs 町田
(主審:山本雄大 VAR:榎本一慶)

 

71分、最終ラインの裏に抜け出した小林悠が飛び出してきたGK谷と接触して転倒。接触から少し間があって小林が転倒すると笛が鳴り、谷は一発退場となった。

 

リプレイ映像で見ると、谷が振った右足が小林の右足首あたりに確実にヒットしており、ファウルであることは明白だ。小林は決定機ゆえになんとかプレーを続けようと踏ん張ったものの、結果的にバランスがとりきれずに転倒している。接触からすぐの転倒ではなかったのでシミュレーションっぽくも見えたが、しっかりと接触を見極めた山本主審の判定は正しい。