J1リーグ第5節。注目の判定をピックアップ。

 

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Referee Topics

 

PK相次ぐも、判定は妥当。

 

 名古屋 vs 横浜FM
(主審:清水勇人 第4の審判員:岩崎創一)

 

75分、マリノスの渡辺が負傷。ここで当初は畠中のみの交代を予定していたマリノスが第4審を制止し、山根の交代を追加。しかし、この交代が認められないまま試合は再開され、数的不利のあいだに失点し、これに猛抗議したキューウェル監督にイエローカードが提示されるという事態になった。

 

状況としては、まずグランパスが2枚の交代を準備しており、それは第4審に認められていた。また、マリノスの畠中投入も認められていたが、渡辺の負傷により交代を追加したことで、その追加分の確認作業がまだできておらず、結果的に交代が認められるのが遅れたという状況だ。

 

今回の事象で考慮すべきは以下の2点だ。

 

まずは、今回のマリノスの交代は3回目であったこと。つまり、畠中のみを投入してしまった場合、渡辺に代わる選手交代は回数上限に引っかかるので認められない。つまり、マリノス側にとって畠中の交代を食い止めて山根の投入を含めるのは必須であった。

 

次に、選手交代の際には第4審の確認作業が必要ということ。選手交代は申請すれば即認められるものではなく、選手証やメンバー表との照合作業を経て、選手交代可能回数なども確認し、そのうえで投入選手の用具チェックをもって初めて認められる。急遽追加した分の交代に多少の時間がかかるのはやむを得ないのだ。

 

つまり、今回の事象としては急遽追加された交代について第4審の承認作業がまだできていなかったため、それを待たずに試合を再開する判断を主審が下した…ということになる。これは競技規則の運用ミスというわけではないが、リードした展開での終盤…という状況をふまえると、数的不利を強いるよりは、交代の承認作業が終わるまで再開を待つべきだったと思うし、後日、審判委員会からも同様の見解が出ている。

 

 

上記記事内でも触れられているが、昨今の交代枠の増加により、特に後半の終盤にかけては選手交代が重なったり相次いだりすることが多く、第4審の業務が瞬間的に急増する場面が目立っている。海外で多く導入されているように選手交代ボードの準備を各チームに委ねるなど、事務的な面での第4審の負担軽減は必須であると思う。

 

 東京V vs 京都
(主審:山本雄大 副審2:八木あかね VAR:中村太)

 

78分、エリア内に侵入した山見が福田に倒されてPK。体を預けることで入れ替わり、山見が抜け出しかけたところで福田がスライディング。それをブロックしようとした山見の足を巻き込んだ…という形だ。

 

リプレイ映像で見ると、山見があえて足を「晒して」ファウルを誘った印象は強くなるが、足だけを差し出したわけではないので、「追いすがる福田をブロックしようとした」と捉えれば不自然ではない。ファウル判定は妥当だろう。

 

なお、前半には豊川のゴールがいったん認められるも、VARチェックによりオフサイド判定となり取り消し…という事象があった。A2の八木副審としては、非常にタイトな見極めであった。

 

 町田 vs 鳥栖
(主審:飯田淳平 副審1:堀越雅弘 VAR:川俣秀)

 

85分、山崎が藤尾を倒してPK。体を預けて抜け出し、エリアに侵入したところでトリッピングを受けて転倒した。藤尾がボールを先に触り、山崎のスライディングはボールに届かず…ということで、ファウルでPKという判定は、適切な距離と角度を確保していた飯田主審にとって「Easy Decision」だった。

 

カバーはおらず、状況としてはDOGSO(決定機阻止)だが、ボールに対するチャレンジと捉えることができるので、懲戒罰は一段階軽減。イエローカードの提示についても異論は全くない。

 

なお、PK獲得に至る前の藤尾のポジションはかなり際どかったが、見事にオンサイドだと判定した堀越副審の見極めも称賛に値するだろう。

 

 鹿島 vs 磐田
(主審:小屋幸栄 副審2:西尾英朗 VAR:西村雄一)

 

30分、コーナーキックの場面、ファーサイドで折り返した関川のヘディングが松原の腕に当たりPK判定。VARチェックが行われたが判定は変わらず確定となった。腕に当たってから若干の間が空いたのちのホイッスルだったので、おそらく角度的に見えやすい西尾副審からのサポートがあったと考えられる。

 

ファーサイドへのボールに触ろうとした松原の腕は大きく広がっており、ジャンプの落下中に関川の折り返しが腕に当たった形だ。順序としては、いったん右肩あたりに当たってから広がった左腕に当たっているように見える。

 

ジャンプするために必要な動作なので不自然ではないが、結果的に関川の折り返しを腕を広げてブロック(いわゆる「バリア」)する形になっているので、腕に当たってしまえばハンドを採られるのはやむを得ないだろう。主審からは見えにくい事象なので、副審とのチームワークで妥当な判定を導いたといえる。

 

 浦和 vs 福岡
(主審:荒木友輔 VAR:中村太)

 

69分、カウンターから前田がカットインして放ったシュートをゴール寸前で井上がブロック。当初はノーファウルだったが、VARレコメンドによるOFR(オン・フィールド・レビュー)の末にハンドの判定が下り、PKが与えられた。

 

リプレイ映像で見ると、井上の右腕にシュートが当たっていることが確認できる。腕を明確に伸ばしたようには見えないが、かといって引こうとしているようにも見えず、反射的にボール方向に腕を「残した」という印象だ。ハンド判定は妥当だろう。

 

シュートはゴールからそれていたのでDOGSO(決定機阻止)には当たらず、SPA(チャンス阻止)と捉えるのが妥当。したがって懲戒罰は警告となる。

 

 川崎F vs FC東京
(主審:上田益也 VAR:榎本一慶

 

71分、裏に抜け出したエリソンに対し、エリア外に飛び出した波多野がチャレンジ。ボールに触ろうとスライディングを試みたものの、エリソンが先にボールに触れたことで、ボールには触れずエリソンに接触。DOGSO(決定機阻止)で一発退場となった。

 

波多野自身も素直に受け入れており、FC東京側もほとんど抗議はしていないことからも、ファウル判定は十分に妥当性がある。上田主審としては、早めに縦方向にスプリントをかけ、外に膨らんで角度を確保する余裕もありつつのジャッジになったので、説得力が非常に高かった。