イングランドプレミアリーグ第24節。注目の判定・注目の試合をピックアップし、簡単に講評する。

 

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Referee topics

 

堂々たる振る舞い。
サム・バーロット主審は
来季の昇格確実。

 

 トッテナム vs ブライトン
(Referee: サム・バーロット VAR: ジャレット・ジレット)

 

16分、ペナルティエリア内の混戦の中でウェルベックが倒されてPK。ウェルベックが切り返した際の残り足にファン・デ・フェンの足が接触。ファン・デ・フェンはボールに触れることができておらず、ファウルでPKとなるのは当然の判定だろう。

 

現在はEFLを中心に活動する「Select Group 2」に所属しているバーロット主審だが、昨年10月にプレミアデビューを果たして以来、既に11試合を担当している。走力が高く、ポジショニングのセンスもよく、若いながらも振る舞いが堂々としているのも好印象だ。ここまで目立った誤審もなく、来季の「Select Group 1」への昇格は既定路線だと言えよう。

 

 ルートン・タウン vs シェフィールド・ユナイテッド
(Referee: クリス・カヴァナー VAR: ポール・ティアニー)

 

33分、シェフィールドのコーナーキックの場面。いったんは笛は吹かれず、選手からも特にアピールがないまま試合が進んだが、約30秒後にVARが介入し、OFR(オン・フィールド・レビュー)に。結果的にハンドを採ってPK判定となった。

 

リプレイ映像で見ると、シェフィールド㉑(ソウザ)がヘディングしたボールが、ルートン⑰(バーク)の左腕に当たっていることが確認できる。バークは競り合いの中ではあったが、左腕が大きく広がっており、不自然ではないもののシュートコースを腕で塞ぐ形になっている。かわいそうな部分はあるが、あの状況で手にボールが当たるとハンドを採らざるを得ないだろう。

 

49分には、今度はルートンのコーナーキックの場面でVARが介入。本日2度目のOFRの末、こちらもハンドで

 

リプレイ映像で見ると、ルートンの⑪(アデバヨ)がヘディングしたボールがシェフィールド㉑(ソウザ)の手に当たっていることが確認できる。こちらは大きく広がっているわけではないが、ソウザがヘディングを諦め、顔を守るかのように手をあげているため、腕の位置の正当性という点で疑問符がつく。こちらも映像で見た以上は、ハンドを採らざるを得ない。

 

カヴァナー主審としては、33分のほうはVARなしで見極めうるレベルであり、ポジショニングの工夫でよい角度を作れていれば見極めのチャンスはあった。一方、49分のシーンは選手が入り乱れる中で僅かに手に当たった程度であり、現実的に見極めは困難だったという印象だ。

 

 ウェストハム vs アーセナル
(Referee: クレイグ・ポーソン A2: スティーヴ・メレディス VAR: デーヴィッド・クーテ)

 

38分、裏に抜け出したサカをアレオラが倒してPK。アレオラ自身が抗議しなかったことからわかるように、サカが先にボールに触り、遅れてアレオラが突っ込んだ形で、ファウルであることは明白だ。

 

サカのボールタッチはやや外向きとはいえ、GK不在でアゲルドが守るだけのゴールにシュートを流し込むことはできる範囲であり、状況としてはDOGSO(決定機阻止)と捉えるのが妥当だろう。ボールに対するプレーではあるので懲戒罰は一段階下がってイエローカード。ファウル判定からカード提示までポーソン主審の判定プロセスは非常にスムーズであった。

 

また、サカの飛び出しはオフサイドぎりぎりだったが、オンサイドであると見極めたA2のスティーヴ・メレディス副審のラインジャッジも称賛に値する。

 

 

 TODAY'S
 
各試合の講評

 

内容は良くないが、個の力で
結果だけ付いてくるユナイテッド。

 

 リヴァプール vs バーンリー

 

前節、首位決戦を落としたリヴァプール。退場処分となったコナテが出場停止で、守護神アリソンも離脱と苦しい懐事情の中で、クアンザーやアジアカップ帰りの遠藤航が先発出場となった。
 
結果的にはリーグワースト2位の47失点を喫しているバーンリー守備陣に対し、リーグ2位の得点力を誇る攻撃陣が地力の差を見せつけて勝利。動きにキレが漲るジョタに加え、ダルウィン・ヌニェスとルイス・ディアスにもゴールが生まれた。アレキサンダー・アーノルドのキック精度はまだ本調子ではないようだが、一方で途中投入が多いエリオットのチャンスメイクが光る。サラー不在の中で、チームとしての層の厚さを示している。
 
やや気になるのはバーンリーに幾度となくラインブレイクを許した守備陣だ。クアンザーとファン・ダイクは距離感が空いてしまいギャップが生まれることが多く、ケレハーのセーブがなければ前半に失点を重ねてもおかしくはなかった。センターバックとしては規格外の機動力を誇るコナテとマティプありきの戦術・ポジショニングになっている部分は否めず、身体能力で劣る(と言っても水準以上だが)クアンザーを起用する場合はラインを少し下げるなど、戦術の微調整が必要になりそうだ。
 
久々のリーグ戦出場となった遠藤航については、センターバックとの連携構築に苦労していた印象だ。ロングボールの競り合いが中途半端になったり、マークの受け渡しがうまくいかずにズルズル後退したりと、特にクアンザーとの連携には課題を抱えていたように見えた。
 
遠藤不在時にアンカーを務めたマクアリスターはやはりインサイドハーフが適性ポジションであり、本職アンカーとして遠藤に懸かる期待は大きい。ただ、1アンカーの4-3-3だけではなく、マクアリスターとダブルボランチ気味にして状況に応じて一方が前に出ていく…という形も一考の余地はあるだろう。
 
リヴァプールの1アンカーは守備範囲の広さが求められ、中央の球際で勝負するタイプの遠藤だと機動力がやや足りないように思える(前任がファビーニョ…という点でそもそも高水準なのだが)。個人的には、ダブルボランチでバランスをとっていくほうが、遠藤としても前向きの守備がしやすく、特長を出しやすいように思える。4-2-3-1気味の布陣も見てみたいところだ。
 

 アストンヴィラ vs マンチェスター・U

 

チームとして成熟度を増し結果もついてきているアストンヴィラ。対して、負傷者発生もあってチーム戦術はいまいち浸透しないものの、ホイルンドが覚醒の予兆を見せ、ガルナチョやメイヌーなどヤングタレントの爆発力で勝ち点を拾っているユナイテッド。状況は違えど、お互いに是が非でも勝ち点を積み上げたい一戦となった。
 
試合はアストンヴィラペースで進んだものの、最終的には途中出場のマクトミネイのゴールでユナイテッドが劇的な勝利を飾った。枠内シュートはヴィラの半分しか打てず、後半はチャンスらしいチャンスもほぼなかったが、効率的に2点を取って勝ち切った。ホイルンドは公式戦5試合連発で、チームとしても4連勝。自陣でのビルドアップは心許なく、守備もオナナ頼み感はあるが、苦しい内容でも粘って勝ち切るあたりはチームとして上り調子…と言えなくもない。
 
ヴィラとしてはサイドアタックと縦に速い攻撃を使い分けながら、特に後半はユナイテッドを押し込み主導権を握っていた。23本のシュートを打ち、枠内シュート10本は悪くない数字だが、シュートがことごとくオナナの正面に飛んでしまい、セットプレー崩れの1点のみ。内容は悪くなかっただけに、2列目の攻撃陣のシュート精度を磨くほかない。