イングランドプレミアリーグ第20節。注目の判定・注目の試合をピックアップし、簡単に講評する。

 

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Referee topics

 

スピードに乗った状態だと、
僅かな接触でもバランスは崩れる。

 

 リヴァプール vs ニューカッスル
(Referee: アンソニー・テイラー VAR: スチュアート・アットウェル)

 

20分、ペナルティエリアで仕掛けたルイス・ディアスが倒れてPK。ボールに向かって足を伸ばしたボトマンだったが、ルイス・ディアスの細かいボールタッチでかわされ、ボールに触れずルイス・ディアスの足に接触してしまった。ルイス・ディアスが左足を「晒して」接触を誘発したという見方もできるが、タックルが来ている中で足でボールをブロックしようとする動きは不自然とは言えず、ファウルでPKという判定は十分に受け入れられる。

 

84分には、抜け出したジョタをドゥブラフカが倒してPK。ジョタがやや遅れて倒れたことでシミュレーションのようにも見えたが、かわしかけたところでドゥブラフカと接触しているのは映像で確認できる。スピードに乗った状態だと僅かな接触でバランスが崩れることはありうるし、踏ん張ろうとした次の一歩でバランスを失うこともありうる。事実として接触がある以上、ファウルを採るのが妥当だろう。

 

なお、あとは無人のゴールに流し込むだけ…という状況なので、本来はDOGSO(決定機阻止)で一発退場だったが、ボールに対するプレーということで懲戒罰は一段階下がりイエローカードとなった。

 

 アストンヴィラ vs バーンリー
(Referee: スチュアート・アットウェル VAR: ピーター・バンクス)

 

86分、ペナルティエリア内でデュランがラムジーに倒されてPK。こぼれ球を拾ってクリアを試みたラムジーに対し、デュランが背後からボールを突き、結果的にデュランの足を蹴る形になった。ファウルであることは明白だ。

 

アットウェル主審は至近距離かつ見やすい角度で事象を見極め、ファウルであると判断。こぼれ球をマッギンが拾ったためすぐには笛を吹かず、決定機にならないと判断したうえでPKを採った。見事なジャッジだ。

 

なお、2枚の警告で退場処分となったベルゲに関しては、いずれの警告も妥当であり議論の余地はほとんどない。アフタータックルによる1枚目の警告はラフプレー、ボールを奪われ慌てて相手を掴んでしまった2枚目の警告はSPA(チャンス阻止)で、いずれも典型的な警告パターンだ。

 

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各試合の講評

 

リヴァプールの速攻に「完敗」。
ニューカッスルの正念場。

 

 リヴァプール vs ニューカッスル

 

新年1発目の注目の一戦。ニューカッスルがCLとの二足の草鞋に苦戦しているとはいえ、インテンシティが高くアグレッシブな戦いを見せる両チームの対戦は熱戦必至の注目のカードとなった。
 
リヴァプールは主戦力の2枚が揃って離脱中の左サイドバックをゴメスが埋めており、中盤では遠藤がアンカーに定着。離脱していたマクアリスターもベンチに戻り、前節はジョタが負傷離脱からの復帰後初ゴールを決めるなど、上り調子で新年を迎えた。
 
一方のニューカッスルは、絶対的なプレースキッカーであるトリッピアーが負傷欠場。前線も負傷者が多く、ジョーカーとして攻撃を活性化していたウィルソンが不在と、スタメンはある程度揃ったもののベンチ陣容に厚みを欠く中での一戦となった。
 
ニューカッスルとしては、リヴァプールの縦に速い攻撃に手を焼き続けた印象だ。スピードに弱みを抱える最終ラインは、裏抜けの鋭さを持つリヴァプールの強力3トップとの相性は最悪に近い。かつ現在のニューカッスルは本職のアンカーを置かない攻撃的な4-3-3なので、中盤で攻撃の芽を摘むこともままならなかった。
 
PKストップも含めたドゥブラフカの好セーブ連発により後半の中盤まで同点で耐えたものの、被カウンターの機会が多く帰陣回数が増えたことで終盤はインテンシティが低下。最後はリヴァプールの仕掛けに対してズルズルと後退するしかなく、リヴァプール攻撃陣のクオリティを見せつけられ失点を重ねた。チャンスがほとんどないにもかかわらず、カウンターとセットプレーで2点をもぎ取ったことは評価できるが、内容的には完敗だったと言えよう。
 
昨季のニューカッスルはある程度メンバーを固定しつつも、試合数がそこまで多くないためパフォーマンスがキープできていた。今季はある程度の補強をしたものの、負傷離脱もあって主力は連戦を強いられており、個々のパフォーマンスの低下を補いきれていない印象だ。ハイインテンシティが求められる現行戦術を高いレベルで維持するのは難しく、場合によってはラインを下げてカウンター狙いに特化したり、守備的な中盤を置いて安定感を高めたりなどの現実的な戦術変更も必要かもしれない。
 
前職のボーンマスでは攻撃的な戦術で一定の評価を得るも、成績が振るわなくなったときに打開策がなく解任の憂き目にあったエディ・ハウ監督。守備の再構築や安定感の向上という、前回果たせなかった課題解決が今度こそできるか。解任を検討するにはあまりに早すぎるが、指揮官の戦術の幅が問われている正念場であることは確かだ。