イングランドプレミアリーグ第4節。注目の判定・注目の試合をピックアップし、簡単に講評する。

 

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Referee topics

 

アカンジはオフサイド。
ワン・ビサカはノーファウル。

 

 マンチェスター・C vs フラム
(Referee: マイケル・オリヴァー Assistant1: スチュアート・バート VAR: トニー・ハリントン)

 

45+5分、コーナーキックからアケーがヘディングで決めたシーンでは、オフサイドポジションにいたアカンジが論点に。ボールには触れておらず、アケーのシュート時にキーパーの視線を遮っているわけでもないが、ボールに対して反応しているのは間違いない。

 

レノの動きからすると、アカンジの動きにより反応が遅れたり迷いが生じたりしたようには見えないので、「結果的に影響をほとんど与えていない」ようには見える。一方で、アカンジはただボールをよけるだけでなく、右足を振ってボールに触れようという意図も垣間見える動きをしており、その動きは相手競技者(GK)に十分に影響を与えうるものであったと思われる。

 

個人的にはアカンジのオフサイドを採ってゴールを取り消すべきだったと考えるし、少なくともVARが介入しOFR(オン・フィールド・レビュー)がなされるべきだったと思う。オフサイドではないという判断が「明白な間違い」か否かという点は厳密には悩ましいが、このような微妙かつ重大な事象は主審が映像を確認したうえで判定を下したほうが説得力が高い。

 

アカンジがオフサイドポジションにいて、ボールに対して動きがあったことはオリヴァー主審もバート副審も把握していたはずだ。相手競技者へのインパクトなしと判断したのはおそらくオリヴァー主審だろうが、ゴール前に多くの選手がいる状況で、レノの動きを鮮明に視認できたとは思えない。その意味でも、映像で確認して判定した方が、審判としての自信も保つことができ有効だったと思われる。

 

なお、本件については後日、PGMOLのトップを務めるハワード・ウェブが、アカンジのオフサイドを採ってゴールを取り消すべきであったとの見解を示した。

 

 

68分、シュート体勢に入ったアルヴァレスをディオプが後ろから倒してしまいPK。手で背中を小突くような形になったうえに、アルヴァレスのシュートの軸足にも接触しており、ファウルであることは比較的わかりやすい。テテのカバーが来ていたのでDOGSO(決定機阻止)ではなくSPA(チャンス阻止)であり、足の接触をファウルとするならボールに対するプレーなので三重罰軽減対象でノーカードという判定に辿り着く。オリヴァー主審のジャッジは妥当だと思う。

 

 アーセナル vs マンチェスター・U
(Referee: アンソニー・テイラー VAR: ジャレット・ジレット)

 

59分、ハヴァーツがエリア内に倒れて一旦はPK判定。ここでVARが介入し、テイラー主審がOFRを行った結果、ノーファウルでPK取り消しとなった。

 

初見の印象としては私もワン・ビサカのトリッピングでPKだと思ったが、リプレイ映像で見ると接触は僅かで、かつワン・ビサカが足を出した瞬間ではなくその暫く後。ワン・ビサカとカゼミーロの対応が後手を踏んでいるのは間違いないが、ワン・ビサカは足を引いてむしろ接触を避けようとしており、どちらかと言えばハヴァーツ側が接触を招いたようにも見える。

 

また、ハヴァーツは最終的に両足のつま先をピッチに擦るような形で倒れており、これは自然な転倒というよりは自ら倒れる際によく見られるものだ(もちろん、すべてがノーファウル妥当というわけではないが)。進路が塞がれたのをふまえてハヴァーツ側が「倒れにいった」感は否めず、接触の強度もふまえるとノーファウル判定が妥当だろう。

 

接触は非常に際どいので、最初にファウルを採ったテイラー主審の判定も致し方ないものだと感じる。そのうえで、OFRをレコメンドしたVARの判断、映像を見たうえでPKを取り消したテイラー主審の判断も妥当。VARが正しく機能して妥当性のある判定を導き出した。

 

 ルートン・タウン vs ウェストハム
(Referee: ポール・ティアニー VAR: ジョン・ブルックス)

 

94分、コーナーキックの場面でウォード・プラウズの腕にボールが当たるもノーハンドの判定。腕は広がっているが、ヘディングを試みた中で自然に広がったものであり、不当なものではない。また、目前で他選手が競り合っておりボールの軌道はほぼ見えず、避けることも困難だ。腕は自然な位置にあり、ボールの方が向かってきた(腕をあえて動かした)わけではないので、ノーハンドの判定で問題ないだろう。

 

なお、86分にはルートン⑰に対してアゲルドがスライディング。この際、ゴールキックを示すジェスチャーが、一見するとPKにも見えたことでスタジアムが騒然とする場面が見られた。確かに紛らわしい部分はあるが、ティアニー主審としてはスポットではなくゴールエリアをしっかりと指しており、スタジアムの勘違いを防ぐのはなかなか難しい。

 

 

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各試合の講評

 

乱獲に負けず、メンバーを固定。
昨季と見違えるノッティンガム。

 

 チェルシー vs ノッティンガム・フォレスト

 

フォレストがエランガの虎の子の1点を守り切って勝利。得点シーンは中盤でボールを奪っての鮮やかなショートカウンターで、スピードと推進力に長けた前線のタレントが躍動した形だ。守護神ターナーを中心に最終ラインの粘り強い守備対応も際立ち、つまらない失点を重ねた昨季とは見違える序盤戦となっている。クーパー監督は選手起用をある程度固めてチーム作りを進めており、フロント主導の乱獲に動じない術を身につけたか。
 
一方のチェルシーは再三の決定機を逸して完封負け。ゴール前にボールを運ぶまではよいが、ラストパスとシュートの精度を欠いた。また守備においてはカウンターへの耐性が低く、中盤でのビルドアップのミスをそのまま持ち込まれた失点シーンは象徴的な事例だ。カイセドがいまだコンディション発展途上の中で、中盤のフィルター機能には課題がある。
 
3-4-2-1を最適解と見込んだポチェッティーノ監督の判断に異論はないが、疑問なのはエンソ・フェルナンデスとギャラガーの立ち位置だ。現在は前者をトップ下気味に配置し後者がボランチを務めているが、本来の特長を活かすならむしろ逆の立ち位置のほうがよさそうだ。
 
エンソ・フェルナンデスはカバー範囲の広い守備と長短の正確なパスが持ち味で、ギャラガーは組み立てよりもゴール前でのフィニッシュに直結するプレーに特長がある。両者ともに器用な選手なので一定の活躍は見せているが、エンソ・フェルナンデスは初期ポジションは低めのほうが適性があるし、ギャラガーを捌き役にさせるのはもったいない。両者を入れ替えれば、ゴール前でのアイデア不足も対カウンター守備の脆さも一気に解決しそうで、一考には値するのではないか。