J1リーグ第1節。注目の判定・注目の試合をピックアップし、簡単に講評する。

 

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Referee Topics

 

オンリー・レビューが多発。
一方で、広島vs札幌は介入至らず。

 

 川崎F vs 横浜FM
(主審:山本雄大 VAR:中村太)

 

84分、裏に抜け出したマルコス・ジュニオールが倒され、当初はPK+イエローカードという判定。ここでVARが介入し、OR(オンリー・レビュー)によりFK+レッドカードに判定が変更された。山本主審としては、クイックスタートに対してやや出遅れてしまい、位置関係を把握しづらいポジションでの見極めになってしまった。

 

ジェジエウは結局ボールに触れることができておらず、ファウルであることにはほとんど議論の余地はない(マルコス・ジュニオールが意図的に足を「晒して」いる印象はあるものの)。また、マルコス・ジュニオールは完全に抜け出してGKと1対1の状況であり、ここで起こったファウルがDOGSO(決定機阻止)に当たることも明白だろう。

 

となると、論点はファウルが起こった場所だ。ジェジエウはボールに対してプレーしようとしているので、ファウルがエリア内であれば三重罰(PK+レッドカード+次節出場停止)軽減の対象となるため、懲戒罰は一段階下がってイエローカードになる。当初の山本主審の判定はこちらだ。

 

一方で、ファウルがエリア外であれば懲戒罰は下がることはなく、シンプルにDOGSOが適用されて一発レッドだ。VARが映像を確認し、マルコス・ジュニオールとの接触が明らかにエリア外で発生している(かつエリア内では既に接触が終わっている)と判断したため、判定が変更された。

 

一見すると主観の判断なのでOFR(オン・フィールド・レビュー)が必要にも思えるが、論点になっているのは「場所」だけなので、いわゆる「ファクト」に当たるので、ORでの判定変更が可能な事例だ。個人的にはカード変更の際にもう少し説明の時間をとってもよいかなとは思ったが、競技規則の適用としては誤りはない。

 

 広島 vs 札幌
(主審:御厨隆文 副審(A2):日比野真 VAR:柿沼亨)

 

74分、サンフレッチェのコーナーキックで川村のヘディングシュートを菅野がゴールライン付近で掻き出し、審判団(御厨主審、日比野副審)はノーゴールのジャッジ。ここで約1分ほどかけてVARチェックがなされるも、結果的には介入せずノーゴールで判定確定となった。

 

日比野副審としては、オフサイドラインが上がったことに伴いポジションを修正したところであり、ヘディングシュートはある程度予測できたとしても逆モーション気味になってやや遅れをとるのはやむを得ないところだ。そして、

御厨主審の角度からもゴールラインを割ったかどうかを見極めるのは難しい。

 

まさにVARの真骨頂が発揮されるシーンであり、映像を見る限りはゴールラインを割っているようにも見えたが、結局は介入せず…という判断になった。映像は角度が少しずれるだけで見え方が大きく変わることもあり、VAR担当としては「間違いなくゴールラインを割っている」という確信には至らなかったか。とはいえ、比較的真横に近い映像でも「明らかに入っている」ように見えるので、個人的にはOR(オンリー・レビュー)でゴールを認める判断をしてもよかったようには思う。

 

 鳥栖 vs 湘南
(主審:上田益也 副審(A1):熊谷幸剛 VAR:上村篤史)

 

13分、フリーキックの流れから長沼がゴールネットを揺らすも、VARが介入。上田主審がOFRを行い、オフサイドを採ってゴールを取り消した。

 

リプレイ映像で見ると、シュートを阻止しようとしたソン・ボングンが、すぐそばの岩崎と接触したことで十分に手を伸ばせていない。岩崎がオフサイドポジションか否かはVARのみで判断できるが、相手競技者に影響を与えたかどうかは主観の領域なので、OFRの末の判定変更となった。

 

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各試合の講評

 

クルークスはセレッソに最適。
新潟は現実策も必要か。

 

 川崎F vs 横浜FM

 

スタメンとしては、シャーレを奪還した昨季を踏襲したマリノスに対し、フロンターレは新加入の宮代を最前線にスタメン起用し、ベンチにも主力級の新戦力である大南や瀬川が控える陣容に。成熟を図る王者に対し、進化を遂げようとする前王者が挑む構図となった。

 

結果としてはマリノスが勝利。前線からのハイプレスでボールを奪っての先制点、セットプレーでの追加点と理想的にゴールを重ねたマリノスに対し、フロンターレは遠野やマルシーニョが決定機を決め切れず。最終結果ほどの差はなく、チャンスの数だけならほぼ互角かもしれない。いわゆる「決定力」の差が出た印象だ。

 

マリノスとしてはハイプレスと縦に速いサイド攻撃というアイデンティティは不変。選手層はもともと厚く、昨季の主力も軒並み健在なので、課題になりうるのは蓄積疲労が溜まる中盤戦になりそうだ。ライバルは軒並み「変革」に舵を切っている印象で、序盤はロケットスタートで独走状態になる予感もする。

 

 C大阪 vs 新潟

 

セレッソは電撃復帰の香川よりも、クルークスの新加入が大きいかもしれない。4-4-2でサイド攻撃を軸に2トップを活かした攻撃を志向するセレッソにとっては、クルークスの高精度のクロスは得点に直結する。坂元の海外移籍以降は、山中を擁する左サイドに攻撃が偏りがちだったが、今季は右サイドからのクロスも期待できそうだ。

 

一方のアルビレックスは高いインテンシティを軸とするアグレッシブなサッカーをJ1でも継続する模様。ボールホルダーをどんどん追い越していく攻撃的なスタイルがさっそく先制点を生み出すなど「らしさ」は見えたが、運動量が落ちた後半はセレッソの速攻に対応できずに一時は逆転を許した。セットプレーで1点をもぎ取ってドローに持ち込んだものの、90分間のゲームマネジメントを交代策も含めて考えないと、昨季の京都サンガのごとく厳しい戦いになるかもしれない。

 

 FC東京 vs 浦和

 

アルベル監督1年目は変革の芽が育ち、今オフは仲川や小泉などの主力級の新加入に加え、トレヴィザンなどの負傷者の復帰も相まって戦力が充実した。一方のレッズはリカルド・ロドリゲス監督と袂を分かち、スコルジャ監督を招聘。とはいえ、選手層としては興梠の新加入が最大のトピックで大きな変化は見られない。

 

結果としては2-0でFC東京が勝利を収めたが、内容に見合った「順当」な結果だと言えよう。前半はロングカウンターなどでレッズがチャンスを作る場面もあったが、後半の立ち上がりからはFC東京ペースになり、レッズはズルズルと後退。プレスの開始位置が中途半端になり、前への推進力を強めるFC東京に対して後手を踏んだ。

 

ポゼッション志向が強いアルベル監督のエッセンスを取り入れつつも、クラブのアイデンティティである堅守速攻が健在のFC東京。戦い方に幅が出てきた首都クラブには期待感が漂う。一方のレッズはひとまずACL決勝が控えており、そこに照準を合わせる形か。新監督の独自色が出てくるまでにはもう少し時間が必要になりそうだ。