プレミアリーグ第30節。注目の判定・注目の試合をピックアップし、簡単に講評する。

Referee topics
ジャッジまわりではほぼ無風の第30節。
アストンヴィラ vs アーセナル
(Referee: アンディ・マドレー VAR: ジョナサン・モス)
33分、サカへのタックルでミングスに警告。ボールに対するプレーではありボールに触れているものの、そのままの勢いで足裏がサカの足に入っており、警告はやむを得ない。とはいえ、足裏がフルでヒットしたわけではなかったことも考慮すると、一発レッドまではいかないか。(判定とは関係ないが、ミングスはこの類の足裏タックルが多いので厳に慎んでほしいところだ)
なお、小競り合いの中でラカゼットを突き飛ばしたマッギンへの警告も妥当だ。マドレー主審は状況を冷静に見極めつつ、キャプテンと該当の選手のみを残してコミュニケーション。やや時間はかかったものの、他の選手を「人払い」したうえでの対応は適切だった。

各試合の講評
システム上のミスマッチが悪い方向に。ジェラード監督に求められる柔軟性。
アストンヴィラ vs アーセナル
指揮官交代とコウチーニョをはじめとする冬の補強で上昇気流に乗ったヴィラと、メンバー固定で安定軌道に乗ったアーセナルの対戦は、サカのゴールでアーセナルが勝利。スタメンを引っ張る(=控え組に信頼が置けないのもある)がゆえに後半に主導権を明け渡すのは「いつもどおり」だが、レノがラムズデール不在の穴を埋め、なんとか逃げ切った形だ。
アーセナルとしては、前線の躍動に目を奪われがちだが、ジャカとトーマスの補完性が如実に高まっている点も見逃せない。トーマスは基本的にアンカーポジションだが、縦パスの流れやカウンター時には前線に関与するシーンも見られ、一方のジャカも基本的には高めのポジションで組み立て&崩しに関与しつつ、トーマスが攻め上がったシーンではアンカーポジションをカバー。自陣で守備ブロックを敷く場面では2ボランチ気味になってバランスをとるなど、非常にソリッドな関係を築き、チームの安定に寄与している。
アストンヴィラとしては、攻守ともにシステム上のミスマッチが負の方向に出た印象だ。攻撃面では、Wトップ下の4-3-2-1を採用しているため、サイドに幅をとる選手がいない。対アーセナルでは、サイドバックとウィングの間にポジションをとるのが得策だが、そこに選手を配置できず、プレッシングにハマる場面が目立った。例えば、マッギンやラムジーがアーセナルの両ウィング(サカ&スミス・ロウ)により近いポジションを取れば、アーセナルの守備時の「迷い」が生じたかもしれない。
また、守備面でもワトキンスをトーマスに当てたことでアーセナルの両センターバックがほぼノープレッシャーに。ビルドアップに優れたガブリエウ&ベン・ホワイトの球出しでプレス回避され、サイドに押し広げられて前進を許す展開が多かった。両トップ下とインサイドハーフがスライドして懸命に対応していたが、前半から消耗は激しく、攻撃に割く余力がなかったか。
ジェラード監督のもとで発展途上のヴィラだが、まだ相手に合わせた柔軟な戦い方(もしくは、相手に左右されない確固たる戦術)には至れていない。選手自体の質・量は中堅クラブとしては充実の域にあるだけに、対戦相手に合わせた戦術変更や試合の中での修正力が上位進出の鍵になりそうだ。
トッテナム vs ウェストハム
スタメン固定の3-4-3で成熟を図るコンテのトッテナムが3-1で快勝。スパーズとしては、早めの時間帯に先制できたのが大きかった。引いて守ると強いウェストハムが前がかかりにならざるを得ない状況を作ったことで、得意のカウンターが次々と炸裂。セットプレーからの失点は余計だったが、理想通りの試合運びで勝利を収めた。気になるのは主力の勤続疲労で、リザーブメンバーの奮起が求められる。
一方のウェストハムは、足元の技術が高いとは言いがたい最終ラインが狙われてボールロストし先制されたのがすべて。そこからはラインを押し上げて戦わねばならなくなり、アジリティーに問題を抱える最終ラインが崩壊した。エリア内での肉弾戦には強いドーソン&ズマのコンビだが、ハイラインになると脆い。3バックも視野に入れつつ、前掛かりに戦うオプションをチームとして身につけないと厳しいか。