グループA第3節。2連勝で突破を決めているイタリアに、主軸の調子が上昇傾向のウェールズが挑む。両国の一戦を講評する。

イタリア1ー0ウェールズ

<総評>
イタリアは主力の休養&陣容の底上げをしながら首位通過に成功。ウェールズはアンパドゥの退場で万事休す。

イタリアが押し気味に進めるも、ウェールズも大崩れはせず。

前節から大きくメンバーを変えたイタリア。キエーザのスピードやパストーニの強さなど随所で「らしさ」を見せたものの、全体としての機能性は流石に高いとは言えず。ウェールズのコンパクトな守備の前に、やや攻めあぐねる展開となった。

 

ウェールズで目立っていたのはアンパドゥだ。守備ではDFラインの中央を務めつつ、攻撃時には中盤のアンカー気味のポジションをとるなど、可変システムの中核を担っていた。ボールに触る機会はそれほど多くなかったが、仲間にポジションの指示を出すなど、リーダーシップも秀逸。まさに「期待の若手」だ。

 

イタリアは「個」を活かした攻撃で徐々に押し込む。

イタリアとしてはメンバー変更が多かったこともあり、とくに守備の局面でプレスがうまくハマらない場面が散見された。一方の攻撃も然りではあったが、キエーザの突破やベロッティの高さ、ヴェラッティのキック精度など、個々の能力を活かした攻撃でチャンスを作り出していった印象だ。

 

一方のウェールズ守備陣も基本的にはマンマーク戦術をとっており、1対1で対応する場面が多くなっていた。決まりごとが明確なので整備はされていたが、個々の実力差がある箇所では崩されるシーンがちらほら。キエーザがチャンスを生み出していたのは、守備が得意とは言えないN・ウィリアムズが1対1で対峙していたから…というのが一因といえよう。

 

また、もう1つ今節のイタリアの特徴として、システムがやや可変的であった点が挙げられる。守備時には従来の4-3-3だが、攻撃時にはトロイ・アチェルビ・パストーニからなる3バック気味に。左サイドのエメルソンが高い位置をとり、左CBのパストーニも前に出ることで数的優位をつくってチャンスを生み出していた。

 

イタリアの修正力の高さ。気になるのは右CBの「ぎこちなさ」。

後半からのイタリアは、前線からの守備の連動性が見違えるように高まり、ウェールズの前進を許さず。選手の対応力とともに、マンチーニ監督の修正力の高さも評価に値するだろう。

 

今後に向けて1つ気になるのは、右CBの人選か。ボヌッチ以外の3人のCBはいずれも左利き。今節で後半から右CBを務めたアチェルビは攻守でややぎこちないプレーが目立っただけに、強豪相手にはここがアキレス腱になる可能性も否めない。その意味でもボヌッチの健康体はイタリアの隠れた生命線かもしれない。

 

いぶし銀のジョルジーニョは代えの利かない存在。

そしてもう一人のキープレイヤーはジョルジーニョ。主力を休ませたウェールズ戦でも75分までプレーしたように、攻守の舵取りを担う役割は非常に大きい。ロカテッリはもともとレジスタとはいえ、彼はインサイドハーフの適性を高めており、バランサータイプは事実上ジョルジーニョのみだ。

 

また、特筆すべきは仲間を動かすリーダーシップだろう。今節で彼が下がった直後のセットプレーでベイルが完全にフリーになる場面があった。あれはおそらく偶然ではなく、「リーダー・ジョルジーニョ」の不在が響いた可能性が高い。

 

代えの利かない存在となっている彼の健康体(そしてカードでの出場停止などがないこと)は勝ち上がりの絶対条件だろう。

 

<審判評>
2試合連続のレッドカードも、落ち着き払った振る舞いが際立つ。

Referee:Ovidiu Haţegan (ROU)
Assistant referees:Radu Ghinguleac (ROU)、Sebastian Gheorghe (ROU)
Video Assistant:Pawel Gil (POL)

 

初戦ではベテランならではの安定感を見せたハツェガン主審。この試合では、よい意味で「存在感が薄め」だった印象だ。前半のアディショナルタイムがなかったように、試合が止まることが少なくスムーズに試合を進めた。

 

前節に続いて今大会2枚目のレッドカード提示となったが、おそらく反論はほとんどないであろう。遅れてのチャレンジである上に足首のあたりを完全に踏みつけており、レッドカード妥当の危険なプレーであった。主審の位置取りはバッチリで、適切な位置で適切な判断を下した。