欧州CL準々決勝:Man. City1-3Lyon

総評:難しく考えすぎたシティ。リヨンは称賛に値するが、ベップの自滅感は否めない。

組み合わせに恵まれたはずだったシティは「いつもどおり」をすればよかったはずだ。デブライネが中盤を制圧し、スターリングとマフレズがサイドから仕掛け、そこにウォーカーとメンディ(もしくはカンセロ)が絡む。終盤にはフォーデンやB・シウバ、D・シルバが活力を生み出す。黄金パターンを変える必要はどこにもなかった。

 

ユーヴェを破ったリヨンは確かに好チームだ。全体のコンパクトネス、一人一人の献身性は特筆に値する。ただ、際立った特徴があるわけではなく、突飛な戦術を持っているわけでもない。真正面から対決したら、いわゆる地力の差でシティに軍配が上がったのではないかと思う。

 

ただ、ベップは「今日のための」アプローチを選択した。WGを1枚削り、3バックを採用。3バックに入ったのがウォーカーであれば攻めのアプローチともとれたが、入ったのはフェルナンジーニョ。右サイドに追いやられたデブライネは窮屈そうにプレーし、RWGがいれば脅威だったはずの右サイドの攻撃は停滞。左サイドでスターリングとカンセロが奮闘したが、単純に前線の枚数が1枚減っているので、相手に息つく間すら与えないいつもの迫力は鳴りを潜めた。

 

シティのCB陣は揃ってスピードに弱みを抱えている。3バック採用は、相手の2トップに対して数的優位をつくって対応するという守備への処方箋でもあったはずだった。ただ、それならなぜウォーカーではなかったのか。結局はリヨンのあまりにもシンプルな裏への飛び出しに終始困惑し、ゴールを献上。スピード不足をカバーすべく入ったはずのフェルナンジーニョは、彼自身のアジリティーの衰えを露呈。3バックは守備面でまったく機能しなかった。

 

リヨンのパフォーマンスは勝利にふさわしい。2トップも含めて守備意識が徹底されており、横へのスライドも極めて迅速。チーム全体の運動量と献身性は見事だったし、前線で強さを見せたトコ・エカンビ、中盤で攻守に奮闘したアワールとカクレの働きは際立っていた。相手の戦術変更(マフレズ投入、4バックへの変更)にもすぐさま対応できていた点は、ガルシア監督のマネジメント、選手の戦術的柔軟性の双方で称賛されて然るべきだろう。

 

ただ、「たられば」が禁物のサッカーではあれど、シティが「いつもどおり」のアプローチをしていれば…4バックを採用していれば…マフレズを最初から起用していれば…(スターリングが決定機を仕留めていれば…)と思わずにはいられないのである。