お手軽な分、依存しやすくなるのかもね。
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激増する「スマホゲーム依存」 2018年4月28日〈スタートライン〉
現実生活の充実にもっと目を向けて
久里浜医療センター 院長 樋口進さん
近頃、電車の中は、“スマホ(スマートフォン)ゲーム”に熱中する人たちであふれている。大手ゲーム会社の調査では、スマホゲームに1日1時間以上かけるヘビーユーザーの平均年齢は32歳。フルタイム勤務者が約4割を占めるという。ゲームでの息抜きは悪いことではないが、依存のリスクはないのか。インターネット依存治療の専門家で、久里浜医療センター院長の樋口進さんに話を聞いた。
――スマホゲームで、依存症になることなんてあるの? そう高をくくっている人も多いかもしれない。アルコールを中心とした依存の研究を重ねてきた樋口進さんが、日本で初めての「インターネット依存治療専門外来」を開設したのは2011年のこと。ここ数年で、スマホゲームによる依存患者が激増しているという。
ネット依存外来の患者さんの約9割はゲーム依存です。そのうち約半数が、スマホゲームに依存しています。
働き盛りの20~40代のスマホゲーム依存者も増えています。
低年齢化も進み、小学校低学年の患者さんもいます。
依存が原因で親子関係が断絶してしまったり、家族に暴力を振るったりして措置入院するケースもあります。医療の現場は本当に深刻なんです。
――なぜ、スマホゲームによって依存が引き起こされるのか。
“終わりがない特徴”と“ガチャによる刺激”に、非常に高い依存リスクがあると考えています。
従来の家庭用テレビゲーム機は、「クリア」があり、場所を変えればゲームを止めることができました。
それに比べ、スマホゲームはどこでもでき、ゲームの種類によっては、クリアがなかったり、相手とオンラインでつながっていたりするので、終わりたくても終われない状況が生まれるのです。
また、最初は無料でも、レアアイテムやコインなどを手に入れる「ガチャ」という課金機能につながるものが多いため、課金を重ね、生活が破綻してしまう成人患者のケースも見てきました。
ガチャは、ギャンブルと同様に依存性が高いものです。
――依存になりやすい人と、なりにくい人の違いは。
診察を重ねる中で、友人が少なく、衝動性の強い人が、スマホゲーム依存になりやすいと感じています。また、男性の方がリスクが高いです。
逆に、学校や職場が楽しいと感じていたり、友人が多い人はリスクは低くなります。
依存の患者さんが共通して言うのは、ゲームの世界はオンラインでつながる仲間がいて、現実ではなかなか得られない自己肯定感を比較的容易に味わえるという点です。
“高ストレス”で“低希望”の日本社会が、若者の自己実現を難しくさせ、自己評価されやすいゲームの世界に追いやっている側面もあるでしょう。
生活の中で目標を立てて地道に努力したり、周囲と豊かな人間関係を育んだりと、“現実生活の充実に目を向けていくこと”が、依存リスクを減らす重要なポイントになります。
――本年、WHO(世界保健機関)が制定している国際疾病分類の改訂が行われ、そこに、「ゲーム障害」という病名が新たに加わる可能性が高い。
スマホゲームの依存患者は、脳の前頭前野の機能低下によって、衝動のコントロールが利きにくくなることが分かっています。
スマホゲーム依存は、医学的に証明可能な疾病として、世界で認識されつつあるということです。
“誰でもゲーム依存になる可能性があり、ゲーム依存は病である”という認識を持つことが大切でしょう。
韓国では、青少年保護を目的に、深夜から早朝にかけて、16歳未満がネットゲームに参加できない「シャットダウン制」が取られています。
同じことをしろというわけではありませんが、日本でも今後、社会を挙げて、もっと依存対策を講じていく必要があると思います。
過剰使用との境界線は?
依存は、過剰使用とそれに伴う問題が明確に生じている状態です。過剰使用でも、問題がなければ依存に当てはまりませんが、過剰使用の状態で自助努力をしないと、依存につながっていく恐れがあります。
まずは、「スマホゲーム依存のセルフチェック」で、6項目のうち、いくつ当てはまるか確認してみましょう。3項目以上当てはまる人は要注意です。
自助努力で効果的なのは、スマホを使わない時間帯を設けることです。使用時間を減らすことよりも、全く使用しない時間が大切です。
一方、「明確な体や心の健康問題」か、「明確な家族・社会問題」が起こってしまっている場合は、放置すると、どんどん悪化するので、早い段階で第三者の働き掛けを求めましょう。
スマホゲーム依存の進行は、他の依存症に比べて非常に早いことが大きな特徴なので、早急に家族に相談し、医療機関を受診することをオススメします。
周囲の支援の仕方
周囲の支援の前提として、本人を責める前に、“スマホゲームは依存リスクが高い”ということを理解してあげてください。
その上で、依存が疑われる家族がいる場合は、ぜひ家族内でのコミュニケーションを増やしましょう。懇談を重ね、使用ルールを決めるだけで、結構うまくいく場合が多いです。
反抗期の子どもの場合は、一方的にルールを決めるのではなく、“私も使わない時間をつくるから、あなたも使わないで”という姿勢が重要です。
また、よく目にするのが、母親は厳しいのに、父親がゲームに寛容であるパターンです。この場合、父親が逃げ口になってしまうので、お父さんはぜひ、お母さんに歩調を合わせていただきたいものです。
特に、発達段階にある小中高生は、依存を乗り越えるために多大な労力が伴い、親の協力が不可欠です。医療機関の家族ワークショップの活用も有効でしょう。
ひぐち・すすむ 精神科医。独立行政法人国立病院機構久里浜医療センター院長。東北大学医学部卒。インターネット依存等の行動嗜癖(しへき)、アルコール関連問題の予防・治療・研究などを専門とする。厚生労働省アルコール健康障害対策関係者会議会長、WHO専門家諮問委員などを務める。アルコール耐性を簡便に調べられる「エタノールパッチテスト」の考案者。著書に『スマホゲーム依存症』(内外出版社)など。
【編集】松崎慎一 【インタビューカット】伊藤政明 【レイアウト】若林伸吾
※2つの図表は『スマホゲーム依存症』から作成。医療機関一覧は、書籍出版時(本年1月)の情報
https://www.seikyoonline.com/article/FFE3E6E38C9EEAC9E812B54D00344276
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