サマー・サンバのポルトガル語歌詞を和訳 | ウクレレのちギター、ときどき旅

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ウクレレ弾きがギターに挑戦〜練習の記録


ブラジルの歌を日本語に訳してみる。だいぶ前に、デザフィナードを訳していたので第2回になりますが、今回はマルコス・ヴァーリのサマー・サンバです。



Samba de verão

サマー・サンバ

Marcos Valle / Paulo Sérgio Valle
マルコス・ヴァーリ、パウロ・セルジオ・ヴァーリ

Você viu só que amor
その時愛を見たよね
Nunca vi coisa assim
あんな素敵な娘を見たことなかった
E passou nem parou
立ち止まらずに通り過ぎた
Mas olhou só pra mim
でも僕だけを見ていた
Se voltar vou atrás
戻ってきたら追いかけよう
Vou pedir, vou falar
お願いしよう、話しかけよう
Vou dizer que o amor
こう言おう、愛を
Foi feitinho pra dar
伝えたかったのにって
Olha, é como o verão
ほら、夏のように
Quente o coração
胸が熱い
Salta de repente
急に高鳴る
Para ver a menina que vem
あの娘がやって来るのが見えると

Ela vem sempre tem
彼女が来る、いつも
Esse mar no olhar
この海を眺めてる
E vai ver tem que ser
また見るだろう、きっとそうだ
Nunca tem quem amar
まだ恋人はいない
Hoje sim, diz que sim
今日こそ、彼女はイエスと言ってくれる
Já cansei de esperar
もう待ってなんかいられない
Nem parei nem dormi
抑えられないし眠れもしない
Só pensando em me dar
ただ彼女に想いを伝えることだけ考えている
Peço, mas você não vem, bem
お願いだ、でもあなたは来ない、 いいさ
Deixo, então, falo só
それなら、ひとりで話すさ
digo ao céu, mas você vem
空に向かって言う、でもあなたが来る


【説明・感想】


1964年作。浜辺で女の子に一目惚れした男の子の想いを歌ったかわいい曲です。シンプルだけど表現はけっこう凝っていて文学的。出会いから数日の男の子の気持ちの揺れが生き生きと表現されている。

訳すのが難しかったところは、


最初の"Você viu só que amor" の一行。どう意味を取ったらいいのか。直訳で「あなたはその時愛を見た」は、「すごく可愛い子がいたよね」という意味でしょうか。でも通り過ぎてしまった、その後の"Vou dizer que o amor / Foi feitinho pra dar"「愛は与えるためのものだったと言うつもりだ」というところにつながってるのだと解釈しました。きみが立ち止まってくれたらぼくの気持ちを伝えられたのにということだろうと。


"coisa"は事や物という意味だけど、すっごいいい女なんかを"coisa"って言ったりするのでその意味で取りました。"Que coisa!" 「なんてこと」、という表現がありますが、"coisa"には驚きの意味含まれている。


詩とメロディがリンクしているところがいいです。


キーFの場合、3行目までは軽快にA音で始まって1、2行目のメロディが3、4行目にそのまま繰り返されるのかと思うとそ4行目は、半音低くG#で始まるの。「でも、ぼくのことを見ていた」の"mas"「でも」のところが低くなることで、あっちも気があるんじゃないのって期待感が感じられる。


また、"o coração / Salta de repente para a menina que vem" のところも「やって来る彼女を見て胸がどきどきする」のメロディはファ・レ・ファ・レ・ファ・レ・ファと繰り返して胸の鼓動を表しているのではないでしょうか。


終わり方がまたいい。「僕」が諦めようとしたら、彼女がやって来る。"vem"「来る」で主音のF音の決定的な響き、さあ、運命の時だ、どうなる??


有名なヴァージョンは、カエタノ・ベローゾやアストリッド・ジルベルトの歌なのかな。英語版はSummer SambaにSo Niceという副題がついています。ウォルター・ワンダレー・トリオのオルガンのインストゥルメント、そしてセルジオ・メンデスとワンダー・サーの歌で売れたそうです。私が最初に聴いたのは小野リサでした。


今回、本家マルコス・ヴァーリの歌を改めて聴いたら色っぽくて素敵でした。同時代の大御所が次々と亡くなっているのに、今も現役で全然歳を取らないところがすごい。永遠の青年という感じ。ちょっと見はアメリカのヒッピーみたいだけど、この歌の繊細な造りからすると教養もあってたぶん良い家柄なんだろうな。

(2024.5.3)