営業少林寺 第七房
「考えるな、 感じろ」・・・
それは、営業少林寺が、修行僧にたたき込む言葉の一つである。
・
・
・
・
この日、男は面談のため、ある会社に向かっていた。
男の表情は、若干強張っており、不安を抱えているようである。
この日の面談への道のりは、
決して順調に話しが進んだ訳ではなかった。
アポイント架電において、
無理やりねじ込んだ形に近かったのである。
恐らく相手は、このねじ込まれた面談を、
相当なお荷物であると、考えているだろう。
それ以上に、相手の男に対する不信感は、
通常の面談の倍以上であろう。
何を売られるのか??相手は、戦々恐々としながら、
待ち構えているに違いない。
そうした想定が、男をいつもの面談よりもナーバスにさせていたのだ。
会社の前まで着くと、一つ大きな深呼吸をして、
男は中へと入っていった。
受付に名を名乗り、すんなりと奥へと通される。
そのスムースさ加減が、何かの前触れのようで、
男の緊張感がまたうずき始める。
そして、通された面談用の小部屋では、
殺伐とした雰囲気が漂っていた。
ここが、決戦の場か・・・・
男がそう思っている間に、面談相手がドアを開けて入ってきた。
ガチャ・・・
相手の表情は、一見何の変哲もないように見えるが、
瞳の奥では、明らかに男を疑っていた。
それと同時に、
面談用の小部屋は、男に対する不信感で
埋め尽くされていった。
男にとっては、
まるで空気までもが、不信感という物質に変わったような感覚である。
「考えるな、感じろ」・・・・
男の頭の中で、営業少林寺の教えが男の頭をよぎった。
この決戦は、まず第一に相手の不信感をいかに解除するか。
つまり、いかに自分を信用してもらうか。それが、最大の山である。
登頂ルートは、相手の気持ちを感じ取りながら、
話を進めていくというルートしかない。
現段階で男が進むべきルートは、論理性や理屈ではないのである。
「考えるな、感じろ」・・・・
この言葉を胸に、男は面談へと臨んでいった・・・・
続く(たぶん)
※この物語はフィクションです
営業少林寺・・・テクニックの前に、気持ちを育てる
作田中