ユーゴスラビア 1980
監督:スロボダン・シヤン
ドイツ軍がユーゴスラビアへ進撃を開始する前日1941年4月5日。セルビアの田舎から1台のバスが首都ベオグラードに向けて出発した。小太りの紳士・気障な駆け出しの歌手・元軍人のプライドだけは高い老人。咳き込む病人。銃を持った狩り好きの男。ヴェールをつけたまま来た新婚夫婦。ジプシー二人。バスの運転手の親子。
小さなトラブルに会って廻り道をしながらも、のんびりとバスは行く。しかし、少しずつ少しずつ戦争の影が彼らの旅を歪ませていく・・
『だから俺はうたうのさ。
みじめなことは忘れようと。
みじめなのが夢だったらいい』
何度も何度もくりかえし歌われるジプシーの音楽が、頭から離れそうにない。
陽気に歌いあげた後のうつむく表情も。
田舎から首都へバスに乗っていく。たったそれだけのことなんだけれど、
道がおじいさんに耕されて通れなくなってたり
橋がぼろぼろになって渡れなくなってたり
普通の状態でなくなった理由をたどると、みんな「戦争」につながっていく。
爆弾ひとつで戦争のむごさを伝えるのは簡単なこと。
でも、急にそうすることなく、少しずつ生活が変な方向へ傾く様子をゆっくりと追っていく。
嘆きの言葉は泣き声ではなく歌声で。
涙をぬぐうハンカチの代わりにアコーディオンを手に。
