男たちの大和



2005

監督 佐藤純彌

出演 反町隆史 中村獅童 渡哲也 鈴木京香

    仲代達矢  松山ケンイチ 蒼井優 寺島しのぶ

配給 東映


「お父さん、泣いてたのよ。」


父と一緒に観ていた母の言葉だ。


私は今まで父の泣いた姿を一度も見たことがない。


滅多にレコード店に足を運ばない父が、一枚のCDを買ってきた。

この映画のテーマソングとして使われている曲が入った長渕剛のCDである。

父は閉め切った部屋から、まるで私にも聴いて欲しいかのように大音量で流す。

同じ曲を何度も何度も。

「お父さん、大和どうだった?」と聴いても「よかったよ。」の一言だけ。


私も観てみることにした。


これほど、「多くの人に観てほしい」と素直に思える映画は珍しい。


そして、実際に、多くの人が観ている。

小さな子供ずれのお父さん、若いカップル、 高校生、 おばさん達、 団塊の世代っぽい人 年配の夫婦 ・・・

年齢層のあまりの幅広さに驚かされた。


物語は大和について語る年配の男性と、30代後半の女性、10代の若者の3人で構成される。言い換えると戦争体験者と、未経験者である子供と孫の世代の3人だ。つまり観客は、この3人のうちの誰かと照らし合わせて観ることができる。幅広い年齢層向けに、つくられているのだ。


心に残ったのは、長島一茂演じる臼淵大尉のセリフ。


「日本は今まで進歩を軽く見ていた。負けることによって得るものがある。

自分たちがここで死ぬことで、日本は進歩し、大きなものを得るのだ。」


橋の話を思い出した。私達が当たり前のように橋の上を渡れるのは、過去に崩れ落ちたいくつもの橋のおかげなのだと。 

私達は橋を渡るとき、感謝をしているだろうか。崩れて犠牲になった人たちのことを、考えたことなどあっただろうか。


エンディングテーマは父が何度も流していたあの曲。


場内が明るくなって、隣の見知らぬ人と、ふと眼があった。


知り合いのようにお互い微笑みあった。