監督 : ジャン=リュック・ゴダール
出演 : ナード・リュー サラ・アドラー
配給 : プレノンアッシュ
この映画は、3つの物語で構成されている。
痛々しい戦争映像のモンタージュの連続の「地獄編」と
大学の講義に招かれたゴダールと、女学生のオルガとの交流を描いた「煉獄編」とオルガのその後を描いた「天国編」である。
ゴダールはゴダール自身が演じている。
ゴダールの講義を聴いていた女子学生のオルガは、ある一大決心をする。
あたたかい。
こんなゴダールはじめてだ。
75歳を迎えたゴダールは、集大成のようにまるくまとめるどころか、今までにない新たな世界をつくりあげた。
巨匠ゴダールを自分が語るのはなんだか恐れ多いけれど、
今までのとはちがう。それだけは、はっきりと言える。
まず、タイトルの「わたしたち」。
この映画は、映画館で、わたしたちが観ることによって、初めて「かたち」になる。今までひとり歩きしてきたゴダールがふと立ち止まって、ゴダールと、わたしたちみんなのための映画をつくってくれた。
相変わらず引用は多い。
全てを理解するのは困難だ。
でも頭をからっぽにして、眼を見開き、耳をすまし、ゴダールの世界に身を預けてみたら、きっとなにか発見があるはず。
「むずかしそう。」「意味わかんない。」
長いとこゴダール食わず嫌いだった人。
そんな人にこそ見てほしい。
「地獄編」は、まるで肌に容赦なく突き刺さる真冬の突風の中にいるみたいだ。
思わず眼を覆いたくなるような痛々しい映像が次々と流れ込んでくる。
でも、絶対眼をそらそうとはしなかった。
ドラマの手術映像でさえ耐えられない私が、始終眼を見開いて受け入れることができたわけは、多分音楽のおかげだと思う。
ドラマチックでいて、懐かしささえ感じられる不思議な旋律は、冷たい風から守ってくれるマフラーみたいだ。
うまく言葉で現せないけれど、この映像たちは私を怒りと疑問でいっぱいにさせた。
「火事のとき、家具を運ぶのはバカげている。
敗者としての幸運をつかむべきだ。」
この言葉が頭のすみっこにずっと残ってはなれない。
勝ちがあれば負けもある。
勝利に酔いしれる人がいれば砂をかき集める人がいる。
ひとつの事実にも2つの真実があるんだなぁと考えさせられた。
敗者の中の幸運という考え方が新鮮だった。
エンドロールが終わって、明るくなって、ゴダールから「君はどう思う?」とマイクを渡された気分。
まさに「わたしたち」の映画である!
