(2012/05/12 追記:5以下のプロセスは正しくない事に気づきました。このブログは残しますが、正しいアプローチは以下のブログを参照ください。)
ハイパスフィルターでセルフフラット処理できる事に気づきました。
寡聞にして無知なので既知の方法かも知れませんがご紹介します。
1 考え方
天体写真の背景に広がる非一様なカブリは悩ましいです。
特に都市部の光害下での天体写真は常にカブリ・・・光害カブリに悩まされます。
こうしたカブリは画面全体に及びますがパターンとして見ると一種のとても大きなパターン、つまり空間周波数として捉えると非常に低周波のパターンになります。
一方、星雲や恒星など主対象はカブリに比べると細かなパターンであり、その細かなディテールの抽出表現が主題です。
という事は、
・ 表現したい主題は高周波成分
・ 消したいカブリは低周波成分
したがって元の画像から低周波成分だけ引いてやれば欲しい高周波成分の主題がばっちり見える・・・というのが基本的な考え方です。
消去対象である背景カブリを画像から選択したいので、ローパスフィルターがあればストレートに利用できるのですが、現実には逆のハイパスフィルターしかありません。
そこで、
(A)元画像ー(B)高周波成分画像=(C)カブリ補正用画像
(A)元画像ー(C)カブリ補正用画像 =(D)カブリ修正済画像
という2段階の手順を踏みます。
あれ?最初のステップですでに欲しい高周波成分画像は得られているのでは?と疑問に思われると思います。
はい、ハイパスフィルター適用された画像はすでに望むところの画像です。
ただし、ハイパスフィルターが適用された画像は選択されたパターンを強調するため輝度レベルが上の方にシフトしています。
明るいところはすでに最大輝度に達しています。
一方で下は50%輝度になっているためダイナミックレンジが半分しかありません。
かくなる事情から上記の手順になった次第です。
以下、その実際です。
2 作例:NGC7331
右下にかけて盛大な光害カブリがあります。これはフラット補正してなおかつ残った光害カブリです。
3 レイヤー複製
ハイパスフィルターを適用するレイヤーを元絵から複製します。
3 ハイパスフィルター適用(1)
ハイパスフィルターをメニューから開きます。
4 ハイパスフィルター適用(2)
作例では半径300ピクセルとしました。対象天体の構造よりも大きなピクセル半径を設定する事が必要です。またピクセル半径が大きすぎるとカブリの中のムラが残ります。なおフォトショップで設定できる最大のピクセル半径は1000です。
5 レイヤーのブレンディングモードを減算に変更
元絵からハイパスフィルターを適用したレイヤーを減算するためにレイヤーのブレンディングモードを減算に変更します。一気に真っ暗になります。ハイパスフィルターを適用したレイヤーは元絵に対してすべてのピクセルで輝度が上がっているためです。他の一般写真ではわかりませんが、天体写真の場合、背景は主体よりも暗いので必ずこうなります。
6 レイヤーの輝度調整
ハイパスフィルターで選択されなかった低周波成分の画像部分、すなわち背景の輝度は50%になっています。この部分の輝度下げてやります。例ではトーンカーブを使っていますが、もっといい方法がありそうな気がします。
7 トーンカーブ調整(1)
トーンカーブの立ち上がりをずらします。50%輝度は数値的には諧調127です。しかしやってみるとそこまで行くと星雲の暗い部分も持っていかれるのがわかりました。このあたりの境目は画像を見ながら調整です。対象天体が黒いままである事が大事です。そうでないと対象天体まで減算の対象になって暗くなってしまいます。
7 トーンカーブ調整(2)
これが元画像から減算する画像ですが、見えているのは二つのレイヤーのブレンド結果なので、同じものをレイヤーとして生成します。
8 レイヤー生成(1)
レイヤーから表示レイヤを結合を選び、Optionキーを押しながらクリックすると既存のレイヤーはそのままで結合した画像が新しいレイヤーとして生成されます。
これが新規に生成されたレイヤーであり、カブリ画像です。元絵からこのレイヤーを減算します。その前にハイパスフィルターを適用したレイヤーが邪魔なので目玉アイコンをクリックして不可視にしておきます。
9 元絵からカブリ画像を減算
レイヤーのブレンディングモードを減算に変更。
10 結果
カブリが減算補正された画像ができあがりました。
いかがでしょうか?
・・・アップ後の追加。
11 レベル修正(1)
トーンカーブよりもレベル調整が良さそうです。
11 レベル修正(2)
ハイパスフィルターが適用されている範囲の諧調の下限までスライダーを移動しました。
12 比較暗によるカブリ補正の場合
以前に紹介した比較暗で作成したカブリ修正画像を適用した場合。
13 ハイパスフィルターによるカブリ補正の場合
対象天体の有無にかかわらず、画像全体を一様に減算するカブリ補正に対し、ハイパスフィルターで作成したカブリ補正画面を適用した場合、背景部分のみに補正が適用されるので対象天体の輝度が下がらず、コントラストを維持する事ができているのを確認できました。
2021/05/04 追記
ハイパスフィルターは指定した周波数成分以上のパターンは輝度強調し、非選択のパターンは50%グレイになります。
天体画像と背景はこの50%を境に接しているはずですが・・・微妙です。
詳しい説明は省略しますが、何らかの方法で作ったカブリ補正用画像で引き算する際のマスクとしてハイパスフィルターを使うという折衷案が現実的かも。
様々な方法で作ったカブリ補正用画像をそのまま元画像から減算すると天体画像もある程度は輝度が削られます。
それを防止するためにハイパスフィルターで作った画像をマスクに使った天体画像を保護するというアプローチです。
通常、マスク作成する場合は、輝度や色味で特定のエリアにマスクをかけますが空間周波数でマスクするという考え方です。