歩いていると急にアイデアが湧いてくる。みなさんにもそんな経験があるのではないでしょうか。京都には「哲学の道」と呼ばれる場所があり、そこは日本を代表する哲学者・西田幾多郎が歩いていたことで有名です。難しい哲学もまた、歩くことから、生まれたのです。

歩行など一定のリズムを繰り返す運動をしていると、脳内からはセロトニンという物質が放出されます。セロトニンには、大脳を覚醒する効果がある一方、精神的に落ち着かせる効果もあり、冷静で的確な判断ができるようになります。

例えば、ぼんやりして、「頭が働いていないな」というときに脳を目覚めさせる効果があるだけでなく、ミスをして焦っているときや、ものごとがうまくいって興奮状態にあるときに、気分を落ち着かせるのにもいいのです。

実は歩き方にもコツがあります。1秒に2歩。やや早足のこの歩き方が、アイデアを出すにはいいそうです。ゆっくり歩くよりも、セロトニンが出やすいのだそう。

歩く以外にも、坐禅を行うときの呼吸でも、セロトニンが出ることが確認されています。これは丹田呼吸法と呼ばれる呼吸で、おへその下あたりがふくらむよう意識して呼吸するやり方。この呼吸をしていると、頭が冴えるだけでなく、不安や緊張といったネガティブな気分がなくなり、元気が出てくるといった効果が認められています。ただ座っているように見える坐禅ですが、思考を活性化するための工夫が隠れていたのです。

内勤の人でなかなか外出できないという人は、座りながら呼吸を整えても、効果を実感できるでしょう。

頭も体の一部。体の調子がよければ、頭も働きます。逆に言えば、頭がうまく働かないときにはまず、からだを動かしてみる。そうすれば、自然と思考力が戻ってくるのです。