チリでは、2年に一度大規模なフェスティバルが行われる。
南部にあるVINA DEL MAR (ビーニャ・デル・マール)というリゾート地で、南米各国からゲストを招いて開催される。(世界デビューする前のリッキー・マーティンも普通に1ゲストとして参加していた)

 そこでは、音楽あり、ダンスあり、笑いありとまさに祭典なのである。
私は96年のフェスティバルを、現地でテレビを通して楽しませてもらった。
そこで日本では考えられないことが起こったのである。
今でも、そのときの記憶は鮮明に残っている。

 芸人がコントを繰り広げるステージでのことだった。
2人組のお笑いコンビ(名前は忘れてしまった)が壇上でパフォーマンスを行っていた。
南米でのコントはジョークがメインで、裏に隠された真相を笑うものだ。
まだ片言のスペイン語しか話せなかった私は、必死に裏を考えながらこの二人組みのコメディアンのステージに魅入っていた。

 このコントがスンゲー面白いのだ。
何とか理解して、腹を抱えて笑い転げた。
尋常ではない、センスのよいコントだった。

ところが舞台の途中で司会者が乱入。
一旦劇が中止される。
どうしたのだろうと画面を見ていると、司会者が不意にマイクを持って何かを話し出した。
内容は、現在の視聴率が50%を越えたということだった。
50%!?
日本では、24時間テレビですらありえない数字をたたき出している。
2人のコメディアンは抱き合って喜んでいる。
片方はなんと、泣いているではないか。
突然の出来事にこっちがびっくりである。
しかも、最終的には70%を超えたのだ。
視聴率70%なんて想像できますか?

途中で司会者乱入にも驚いたが、視聴率には度肝を抜かれた。
チリ全土の家庭のほとんどが同じ番組を見ているのだ。
想像したらちょっと笑えた。
同時になんだか心が暖かくもなってきた。
こんな不思議な一体感は日本では体験できないだろう。
そんなことを考えながら、時代の寵児となった2人組に感謝の念を抱いていた。
御多分に漏れず、我が家もそのとき一体となっていたからだ。
それまでは、ブラックジョークによい印象を抱いていなかった私だったが、これもこれで悪くないな、と思ったお祭り騒ぎの夜だった。